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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
139/296

誤算3


思っていたよりも早く"レベルE"を研究室外に出そうとするものが現れ、そしてその人物はあまりにも早くTITUSの要塞を破ってしまったらしい…。


「芦屋校長、生徒達が戻ってきました。」


すでに名影からの連絡で生徒の1人、伏舞人が行方不明になってしまったことは聞いている。そして察するに(むすこ)はさぞ打ちひしがれていることだろう、とも思う。

しかし、着き次第2人には話をしなければならない。

もっと最悪な事態について…


「失礼します。2人を連れてまいりました。」


「……どうぞ。」


今日も今日とて担任ではなく、副担任の神代輪廻(かみしろりんね)が名影達を連れてきた。

芦屋聖は顔色も優れず、どこか落ち着きがない。一方の名影零は何がそうさせるのか、瞳に強い光を携えていて、重く落ち着いた雰囲気を纏っている。


「…残念ながら東西協力体制でもってしても、奪還は成せず…そしてさらにもう1人生徒が行方不明になった。」


決して責めているわけでもなし、ただ事実の確認をしているだけだ。


「はい。」


「…っはい。」


それなのに、芦屋の方はなんだか追い詰められたかのように声を震わせる。


「そう…そしてさらに悪いことに、このタイミングで、研究機関TITUSの施設から"レベルE"が逃走したとの連絡が入った。いまはまだどこに居るのか、どうやって逃げ出したのか、何1つ分かっていない。」


「それは…トランプとの関連があると思われますか?」


「無い、とは言い切れない。ここに来てあちこちで派手に動いていたのも、陽動であった可能性を捨てきれないでいる。」


「彼等の目的も何も、全く分かっていないんですよね?」


名影の探るような眼に、校長も申し訳なさそうにしつつ、「そうだ」と言った。


この若い校長もまた、芦屋と同じようにいらぬ"責任"に押しつぶされそうになっている。さすが親子。


名影はこれ以上、校長に何かを言うことが躊躇われたが、一応はPEPE(ここ)の責任者だ、意見も彼を通すべきだろう。と考え直し、口を開いた。


「SOUPやPEPEは確かに最先端の軍備持ち、個人集合体であるところのトラストルノを、その体系を極力崩すことなく支える巨大組織。という役割を見事に果たしているとは思います。」


そこで名影はゆっくり息を吐く。


「しかしながら、最近は"統治"している。ともとれる状態にあると言えるのではないでしょうか?支えるのではなく、統治するようになると、統治される側の内実などがよく見えなくなりがちです。現に、SOUPは情報収集という点において、今かなり後手に回っている。」


「うん。正論すぎて何も言えないよ。」


校長も芦屋もただただ同意することしかできない。


「私は、今回目標の立て方を見誤りました。"奪還すること"ではなく"搾取すること"もしくは"排除すること"を目的にするべきだった。」


名影も少なからず今回の任に関しては責任を感じている。だからこそ、ここは大きく出るべき時かもしれない。


「トランプを潰しにかかりましょう。裏で彼等が糸を引いているにしろ、いないにしろ、トランプの起こす暴動と"レベルE"の逃走の両方を追うのは効率が悪い。だからトランプの方はPEPEで対処してしまえばいい。」


「今回だって無理だったのに…?」


芦屋が怪訝そうに言う。


「そう、だから協力を求めるのよ。」


「誰に?」


そう聞かれて名影はニヤッとしてみせた。








「そりゃ…代理戦争組織(カンパニー)でしょう。」


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