悪夢に囚われ
「おい…異常はないか?」
「ありませんよ。こんな厳重なセキュリティの中で異常なんて起こりえないでしょう。」
「いや…むしろ元が異常すぎるのかもしれないがな。」
「あぁ、それは確かに。」
2人の監視員は不自然な程動かぬ画面に、さほど違和感を感じない。中にいる、たった1人の生き物である白い彼が寝てしまえば、動くものなど皆無。
上下する彼の胸部だけであろう。
しかしその胸部すら、今は動いていない。ことに2人の監視員は気がつかない。
これは上書きされた停止画像であることに、2人は微塵も気がつかないのだ。
死角を調べ尽くし、その全てを記憶に刷り込んでしまえば、実は彼を外に出すのは簡単なの。
と当たり前のように言われた時は面食らった。それは"出来れば"で成り立った話で、普通なら出来ないからこそ、ここのセキュリティは万全と言われているのだ。
それをこの超人様はいとも容易くやってのけてしまった。
このまま何事も無ければ、本当にTITUSの知らぬ間に、背に乗る少年を外へ連れ出せてしまうかもしれない。
「外はどんな感じですが?楽しいですか?」
さっきまではペラペラ質問を並べ立てていたが、"空気を読んだ"のか、今は静かに背にしがみついている。
もしかして…空気になれていない?
疲れてしまったのか?
どちらにせよ、止まってやることは出来ないから、いま俺らに唯一できることは、早く無事に外へ出ることだけだ。
あぁ、外に出てからもどうなってしまうんだろう…
不安はいつにも増して心の中に大きく巣食い、無くならなかった。