不穏、実に不穏
「女王様、奇妙なメールが敵に送られているようですが?」
「えぇ、全く…こんな時分に組織分裂なんて冗談じゃ無いわ。」
「それと…例の逃走中の人間兵器ですが、先刻入った情報によると…どうやら実験島を出たようです。」
「あぁ…本物の死神が、空気をも殺す可哀想な天使が、遂にやってくるのね…。そうなったらどんなご立派な思想も正義もあってないようなものね。全部溶けて…灰すらも残りはしないのでしょうから。」
「戦争…でしょうか?」
「え?ふふふ…何をおかしなことを言っているの?戦争でしょうかですって?いま世界中のあちらこちらが戦場よ?いまさら何をそんなに深刻に思い悩むことがあって?」
「えぇまぁ…しかし、我々の周りはいままで平和だったでしょう?」
「平和とは何かしらね。いままでが一時の夢…夢はいずれ覚めるもの。」
「メールの送り主は探しますか?」
「大体分かってるからいいわ。トラストルノは混沌のくに。…とはいえあまりに歪よね。」
カルマはしばらく虚空を苦悶の表情で見つめているエイトからセブンに視線を移し、こともなげに窓を指した。
「ところでさ、窓から見るにあっちこっちで…あまりにも広範囲で火柱が上がりまくってる気がするんだけど、女王様の城ってのはあんなに広大なの?」
セブンも窓を見て、それから首を横に振る。
「…っそもそもクイーンの家の方角からは火があがってない‼︎」
我に返ったエイトが窓に駆け寄り、驚愕の眼差しで外を見る。
何か、予期せぬことが起こっているらしい。
エイトはじっと火の手の方角を確認すると、カーテンを閉める。
「え、火の様子見なくていいの?」
「問題無い。どうせB地区はすぐに消防機関が動く。それより"関わらない"が1番だ。」
何が起こっているのか。
正しく理解できているものはいない。
ただただ事は起こり、時は進む。