女王の城 戦闘開始
もし、すでに死んでしまっていたら?
嫌な考えは断ち切れない。そんなことあってはならないのに…不安は募る。西校Sクラスはカルマの予想に反して、総出でカルマの救出にやってきた。カルマを除く8人…1番の戦力が欠けているが…やるしかない…
「行くか…」
深い深呼吸と共にフィリップが指示する。
西校のSクラスの全生徒にとって…"逃げ"の選択が出来ない戦場ははじめてだ。
東校の連中は"戦う"という選択を自らした。
西校だって…出来ないはずはない。
過信かもしれない。
でも、やるしかない。
外の見張りを女子3名が、後手で部屋の捜索などを行うのに男子3名、そして先頭で突入しカルマの救出に向かうのがフィリップとリドウィンだ。
リドウィンは不思議と落ち着き、冷静だった。が、フィリップの方は不安が拭いきれていない。
「フィル、しっかりして。」
アリスからの叱咤も余計に追い打ちをかけてくるように感じる…と、不意にリドウィンがフィリップをぎゅっと抱き寄せた。
「…リド?」
「大丈夫。俺も、みんなもついてる。」
「……‼︎」
フィリップは最後に肩をぽんぽんっと叩き離れた自分より少し小柄なクラスメイトを見た。
今まで代理戦争組織の人間だと思って軽蔑してきた。実技における優秀さに対する嫉妬もあった。
しかし今、この場の誰よりも信頼出来るのは、彼の力強い言葉と瞳だ。
「あぁ、大丈夫だ。」
"大丈夫"と口にして、大丈夫なような気がしてきた。なんとか、してみせる。
黒いパンツに、タートルネックの黒シャツ、さらにその上から黒のパーカーを羽織り、フードを目深に被る。端から見ればよほど彼等の方が怪しく映るだろう。
まぁそれも人目に映れば…だが。
昼間の間や明るい室内での行動に黒服は目立つ。が、女王邸宅には黒服が多く出入りしている、という噂を仕入れていた。その中に紛れるには黒服が1番だろう。
「Go!」
フィリップの合図でリドウィンを先頭に男子勢はするりと扉から中に侵入する。
カメラやセンサーは反応しない。Aクラスの機械好きに頼み今回ハッキングをはじめとする援護を頼んだ。
正直その彼の実力に不安はあるが、あれこれ言ってられない。
かくして、カルマの捜索は開始された。
女王の城での戦闘も開始される。