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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
128/296

退屈しのぎ


あっちこっちで火花が散り、クイーン達の方も非常に大変だろうと予想がつく。しかし自分に任されたのは"お守り"だ。

別に不満はない。ナナと離れなくて済むしな。


「君が…えーとセブン?7番目?」


「ふぐっ……うぅ……」


客人ーカルマに絡まれナナは困惑気味だ。そもそもある一定以上の距離に近づかれることをナナは嫌がる。


「ナナ、ご飯、食べる?」


ヨロヨロとカルマから離れ自分の背後に隠れたナナにそう呼びかけると、ナナは背中に頭を2度ぶつける。

「今はまだいい」の合図。


「君ら本当に仲良いんだね〜羨ましい限りだよ‼︎ところで…君随分前髪が長いけど、なんで?」


カルマは手錠をされていること以外は、まるで旧知の友のようにナナに話しかける。ただナナの方はそうは行かず、ますますエイトにきつく抱きついていった。


「ちょっと…怪我してるんだよ。」


エイトが仕方ないという風に答えると、カルマは「ふーん」と言ってから、何を思ったかシャツを脱ぎ始める。


「ん?え、は?」


あまりに唐突な行動にさすがのエイトも驚きだ。



「これ、ヤバくない?」


言葉とは裏腹な笑顔で背中をセブンとエイトの方へ向けた。


「…っっ⁉︎」


弾痕と思しき痕を、羽の刺青で隠している。

さらに首の後ろ側にはミミズ腫れのような奇妙な痕もある。


「まさしく弾痕(つみ)刺青(つみ)で隠す、さ‼︎」


「それ…自分の意思でやったのか?」


「まさか‼︎撃たれたんだ。でもってその直後に刺青の彫師がさ、モニター募集っていうの?1回ごとに3泊4日さらに3食つき‼︎ってのに惹かれて、隠すにも丁度がいいってんでね、やったのさー。」


PEPEには比較的、いい子ちゃんばっかりだと思っていたエイトはその刺青を凝視してしまう。


ひたり…


と、エイトの背後からセブンがおそるおそる手を伸ばしカルマの背に触れた。


「冷たい……」


「そう?」


カルマはシャツを着るとニコニコしながらセブンに話しかける。


「君の傷がどんな傷かは知らないが、傷ってのはさ、負ったこちらにとっても、負わせたあちらにとっても枷になる。だから俺はあえて隠さない。見せしめにしてやるのさ。……まぁいかんせん背中だから年中見せるわけにはいかないんだけどね‼︎裸で歩いてたらさすがに注意されてしまう。」


セブンはそっとエイトの後ろから出てくると、うんしょと椅子を引っ張ってくる。そして椅子の対面にエイトの分の椅子を置き、その横に折りたたんで持ってきた車椅子を置いてそこに座る。


「…話…する?」


セブンの申し出にカルマは笑顔で「もちろん」と答えると、対面の椅子に座る。エイトは何も言わずにセブンの横に腰掛けた。


「ぼくのケガ…みたい?」


「見せたい?」


「気持ち悪いと思うよ…?」


「いいよ。」


エイトは思わず止めそうになった。そのケガは、自分だけが知る友人(ナナ)の一面…知ってほしくないような思いに駆られたのだ。


「…っ。」


しかし結果は動くことも出来なかった。



長い前髪と目深に被られたフードの下には、思っていたより幼い顔とうっすらそばかすの浮かぶ頰と、そして顔の右側にまだらに残る、おそらく火傷痕。

…旧日系か?日系は大体どいつも幼く見える。


「へぇ…火傷?」


「うん…」


「そう、さぞや痛かっただろ?火傷ってすっげぇ後から痛むし。」


「そんなんでもない……」


セブンは戸惑ったようにオドオドと喋る。が、カルマは特に急かしもせず、落ち着いて話を聞く。

エイトはなんだか置いていかれてしまったような疎外感を感じた。この2人は根本が似ているのかもしれない…何か共鳴する部分を感じ取ったのかもしれない…だからすぐに意気投合したのかも…


『あなたは混ざらないの?』


エイトは咄嗟に振り返る。


「どうした?」


カルマが聞く声も届かない。エイトは声の聞こえた方を凝視しながら、苦悶の表情を浮かべる。それは、あの"恋人"の話をした時と同じ表情だった。


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