コンテナ戦地 逃亡
「走って‼︎いいから走れ‼︎」
ジェスターの鬼気迫る声なんて初めて聞いた。それくらい、あの少年はやばいのか…
階段を下りきって今度は右へ左へ、一旦地上に出てから次の階段へ…ジェスターを先頭にコンテナ群から出るために奔走する。
「ガキを1人連れ帰らないといけないんだ‼︎ジェスターそれだけ仕事をさせてくれ‼︎」
「必要ない。デュースが捕まえてくれてる。」
「デュース⁉︎デュースまで動いてるのか⁉︎」
「えぇ、今回は少年の捕獲だけが目的なわけではないからね。むしろこっちは陽動よ。」
「先日の…レベルEについての情報収集が本当の目的かい?」
テンが問うと、ジェスターは頷く。
ジャックは詳細が自分に知らされていなかったことに、なんだか虚しさを感じつつも考えを巡らす。
情報収集となるとトレイやケイト、それからセブンの出番か?それとも…今回はさすがにエースも参加しているのか?
ジャックですら会ったことのないトランプ構成員。
「見えてきた‼︎あれが出口。」
ようやっと外に出る。
「向こうに手動運転車が停めてあるから‼︎そこにデュースもいる。」
コンテナ群から1歩出た瞬間、隣にいたテンがぐわっと後ろに引っ張られた。
もう、追いついて来たのか⁉︎金属の焼けた匂いが鼻をつく。テンは首に食い込む手を振りほどこうと必死だが、とてもそんな抵抗ではほどけない。
「くそがっ‼︎」
ジェスター、ジャックも銃と日本刀を構えるが、テンが壁になってしまって下手に攻撃が出来ない。
その間にもテンの顔は赤から青へ…ジャックは足元を撃つが、なんの牽制にもなりゃしない。
「…っひゅ……う、ゲホッケホッ‼︎」
突如、少年の頭がガクンッと妙な揺れ方をして崩折れた。
「…‼︎ナイン⁉︎おまっ、いいのかここにいて…」
「でも来て正解だったろ…」
「それは…まぁ。」
ナインの手には細長い警棒のようなものが握られている。一箇所にだけ高圧の電流を流すスタンガンだ。
少年はどうやら気絶しただけのようだが、それでも容赦なくそれを頭に突きつけるとは…
「なぁ…俺もお前たちと一緒に帰っていいかな?」
「もちろん…でも、いいのか?」
「あぁ…うん、潮時かなって…今日で僕の学生生活は、終わり。」
そう言いながら、ナインは少年をそっと近くのコンテナに寄りかからせてあげる。その仕草からは名残惜しさが伺える。
「好きな奴が居たんじゃなかったのか?」
「ふふっ、あぁそうだった、その子の仇として一発殴らせろよジャック。」
「あの子だったのか…そりゃ、ごめん。」
ジャックはぎゅっと目を瞑る。その頬をナインは軽くぺちっと叩くと俯き、それからギラリとした瞳でジャックを見据え宣言した。
「今日で学生の、PEPE東校Sクラスの…彼等のクラスメイトの…
アレイ・ディモンド
とはおさらばだ。」