コンテナ戦地 4
オレンジ野郎のせいで、コンテナに打ち付けた背中が妙に張っている感じがする。もしかしたら"痛く"なっているのかもしれない。
俺じゃなかったら痛みで悶絶してたかもしれないぞ、このチャラ男が。
「ってか何1人で行動してんだよ‼︎」
「それが俺の役目だからっす…けどそれより、あの真っ黒女やべぇ‼︎」
やべぇのは知ってるよ‼︎
「もう俺、逃げの一手しかなくって‼︎…あれ?愛生なんでここにいんの?闘わねぇの?」
「いや、指示されてないから…」
吹っ飛ばされた真城と和田を案じて、アレイ、芦屋、蒼井が駆け付けその場から全員で黒スーツの少女を見上げる。
全員でかかったとして…ジャックも回復している。しかも和田が吹っ飛ばされてきたということはスナイパーもまだどこかにいる可能性が高い。下手に動けば全員まとめて殺られかねない…
芦屋はいつになく慎重だった。自分以外の命の責任まで背負わされたようで、重くて判断ができない。
「なぁ芦屋次席、なんで愛生を前線にださねぇの?」
「なに?」
「愛生は前線でこそ役に立つぜ?」
そんな情報、名影からの資料には無かった。ただどれだけ強い相手であっても、仮に真城ですら手も足も出ないような状況であっても、彼なら余裕だ。最終兵器だ。
とだけ書かれていた。
「前線の方が…そういうのは先に言えよ‼︎」
どうする?名影ならどうした?
今はどんな事であれ、相手に勝てる確証…いやそこまででなくてもいいから、起死回生の一手が欲しい。
「なぁ…蒼井…さん、アレ倒せそうか?」
「え、その原理でいくなら俺も年上だから先輩とかなんか敬称つけ…」
「いいよ。出来るよ。」
和田の余計なつっこみを遮るようにして蒼井が言う。なんの迷いもない、自信に満ちたような声。
「どうすればいい?殺す?」
「いや動けないようにしてくれれば…」
「わかった。じゃあまずは脚だね。」
いや、まさかあんなにも化物じみた奴だとは思わなかったんだ…
もっと人間的な強さかと思っていた。
余裕、とか自信、なんてのは始めっからあってないようなもので。彼の中には自信も恐怖も等しく、存在していないようなもの…
ガッ…ダッガァーーーーーン‼︎
蒼井がありえないほどの跳躍と力をもって、死神少女の頭の辺りを掴みねじふせようとした。ただそれだけで、コンテナが2つ、変形し、少し動く。
「な…なんだあれ。」
「おいおい…なんだ、化物飼いならしすぎだろうが…」
芦屋も、ジャックも、敵も味方もなく全員が、目を見張った。
「和田…あれなんだ。」
「あれ?首席から聞いてませんか?"分類"の項に書いてありませんでした?」
分類?その項はみんな"ヒト"だろ?
「愛生は………アンディーですよ。」
蒼井愛生、PEPE初の学生"人間もどき"。