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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
119/296

コンテナ戦地


フィールドは広ければ広いほど、障害物が多ければ多いほど楽しい。この楽しい(・・・)って考え方を問題視されて、俺はSクラスに入れなかった。いや、実際は成績も微妙に足りていなかったのだが…でもCクラスはおかしい。本当ならSの1つ下、Aには入れるはずだ。


「っと‼︎」


わざと相手から目視できるように、コンテナの上を跳び回る。


チュインッ…バシュッ…バシュッ…‼︎


しかし厄介なことに相手はスナイパーらしく、動かずに遠距離から狙ってくる。本当は俺を追ってきて欲しいんだけどな…


「さーて、どうしたもんか、ね‼︎」


3つも積まれたコンテナの上から器用に降り、着地するとフワリと着ていた服の裾がはためく。

本当はPEPEの正装である黒地の軍服やカパを着てもいいのだが動きづらい。しかも軍服にいたっては他の人が着ているのを見たことがない。

PEPEは基本、派手でなければ私服でいいことになっている。だから和田もいつも黒いサルエルに黒のTシャツに黒いパーカー…と名影曰く"ダルファッション"で登校している。

今日だって例外ではなく、同じ服装だ。

しかし今日はポケットなどが重い。


「色々仕込んできたもんね♪」


コンテナを降り、間を縫いながら走っていると、今度は背後から頭スレスレを弾丸が追い抜いていった。

来た‼︎


「ひゃっほーい♪」


和田は右手のコンテナに片足をダンッとつくと、驚くようなスピードでくるりと身を反転する。

瞬間、追ってきた白人の男と目が合う。

躊躇うな‼︎


パンッ‼︎……






オレンジ頭をしばらくは目で追い射撃していたが、こちらを動かそうと思ったのだろう、ふっと視界からオレンジ色が消える。

すばしっこいなんてレベルじゃない。異生物を相手にしているような感じだ。

しかもさっきスコープから見えた、あのオレンジの少年の顔……笑っていた。

本当に楽しくて仕方がないという風に、輝く笑顔でコンテナの上を跳ね回っていた。


「化け物連中だよ…」


ジャックですら"化け物"だと思うような連中…それも1人や2人ではない。女王達(あちら)もさすがに苦戦を強いられるのではなかろうか。


いた‼︎


すぐに愛用のウィンチェスターを構える。ジャックが見繕ってくれた品で、非常に手にも体にも馴染んでいる。

だから、狙いは完璧だったはずなのに。


避けた⁉︎


いや、偶然かもしれない。運すらも味方につけているのかも…



と、突如少年が右手のコンテナに片足を勢いよく蹴りつけ…そして飛び上がり反転しつつ…


パンッ‼︎……


なんつー顔で撃ってきやがる。

普通、人に銃やナイフを向ける時は少なからず恐怖心が表れるはずだ。どんな殺し屋も戦争屋も、本能的に恐怖心が介在するのだ。

それが、この少年ときたら…


「あっはは‼︎」


左腿に被弾し、テンが着地に失敗し転がりつつ物陰に身を隠すと、少年のじつに楽しそうな軽快な笑いが響いてきた。

それはジャックのような虚勢を張った笑いとは違う。湿度を含んだ、本当の笑いだった。


「なぁんだ、1人しか釣れなかったのかよー。アオもいればなー、5人でも10人でも釣れるのに‼︎」


そもそも俺ら2人しかここにはいねぇよ‼︎


テンは内心毒づきつつ、足音に耳をすます。


「俺さぁ、鬼ごっこは得意なんだ‼︎だから追っかけてきてよ‼︎」


少年は声高にそう叫ぶ。それと同時に足音が遠ざかっていくのがわかった。

くそっ…この足で走れってか⁉︎

しかし下手にジャックの方に向かわれても厄介だ。いやでも…むしろジャックの方に加勢した方が良くないか?

こんなのがあと、少なくとも4〜5人は来るんだろ?


「これは…結構まずいな。」







「二兎を追うもの、一兎をも得ず♪」


和田絲志(わだいとし)、名影が認めたオールラウンダーの"囮"。



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