コンテナ迷路
自動運転車で目的地近くまでついた芦屋率いるA班は、目の前にそびえ広がるコンテナの山々に唖然とした。
こんなに大量の、それもこんなにバラバラで置かれ積まれているとは思わなかった。資料で見るよりもスケールがでかくなっている気がする。
「こ…これやべぇだろ。」
これでは敵がどちらから来るかも分からない。
「なかなか難解な感じね。」
ティトも上を見上げつつ、眉を寄せた。これでは肝心の反応がでているところ辺り、反応を出している誘拐犯のいる場所もわからない。
アレイが一応小型端末で反応を調べるが、コンテナの山の中には当然カメラの類などもなく、手掛かりは掴めなかった。
「一応…これはあるけど…」
アレイが懐から取り出したのは極々小さな蜘蛛型カメラ。とりあえず中に向けて放ってみると、足を器用に使って中に入っていく…が中は静かなようで、なにも聞こえず、なにも見えない。
「とりあえず、俺が先頭で中に入る、その後をティト、アレイ、和田の順で…」
「あ、すいません‼︎その順だとダメっす‼︎」
「は?」
「だってそれじゃ俺目立ってないっすもん‼︎だから俺が先に行くっすから後ろから皆さんは静かに来てくださいっす‼︎」
「いや…でもそれじゃ危険すぎるだろ。」
「大丈夫っす‼︎任せてくださいっ‼︎」
芦屋が渋々首で行けと指示すると、和田はスキップしながら中へ入っていく。あいつは自殺願望者か?
芦屋は不安に思いつつも、他2人に黒いカパを渡し、自分もそれを羽織る。フードを被ると、入り口近くであるにも関わらず暗がりに立つと3人の姿は輪郭を失う。
「で、どうす…‼︎」
2人の間に立ったアレイが声をかけようとした瞬間だった。
ドッォーーーーンッッ…バンッ‼︎
「爆発っ⁉︎」
おいおい、まさか和田じゃねぇだろうな⁉︎勘弁してくれよ…
しかし芦屋の願いもむなしく、コンテナの奥から敵の声と思しき音が聞こえてきた。
「おい‼︎資料になかったやつがいる‼︎オレンジ頭だ‼︎」
「行くぞ‼︎」
こうなったら乗るしかない。たとえ泥舟だろうと構ってられない。3人は爆発よりも少し逸れたあたりを音もなく走り出す。
少なくとも爆発のあった地点は目的の場所ではない。
物凄い地鳴りと共に左手の方で爆炎があがる。
ジャックは高台に腹這いになって周辺を見張っていたテンの方へ声をかけた。
「なんだ‼︎」
「おい‼︎資料になかったやつがいる‼︎オレンジ頭だ‼︎」
資料にないやつ…?
ありえない…だってSクラスについてはナインの力を借りて調べがついてる。東校や西校だけじゃない、北校や南校まで調べ尽くしている。
Sクラスの奴らは良くも悪くも目立つから、存在を知られずにいるなんて不可能なはずだ…
しかもオレンジ頭??目立ちすぎだろう。
「テンはオレンジ頭を追って‼︎後の連中はこっちでなんとか対応しよう。」
「無茶言うな‼︎」
「平気さ、だって俺らは稼げばいいだけだ…」
女王が邪魔者を始末仕切るまでの、時間を。
ついでに小柄な少年を捕らえなくてはならない。ご指名だ。