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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
116/296

決行


「やんなっちまうなー…俺指揮とんの苦手なんだよ。」


芦屋は部屋で名影から言われたアレコレを頭の中で何度も反芻する。





「だいたいねー、次席なのにお前なんもやらな過ぎだからな⁉︎首席会に行っても壁に寄りかかって寝てるし‼︎」


いや確かに、今まで次席らしいことをしていない自覚はある。首席会どころか次席会ですら、こっそり録音をし、会の最中は寝て、録音したのを名影に渡すというやり方を貫いてきていた。

めんどうくさい、というのもあるが…根本的に考え方が合わないやつらが多すぎるのだ。しかも日系ばかりが集う"芦屋"の人間だとなると、差別意識の強いバカ共から軽蔑の視線を向けられる。

それで話しかけてこないならいいのに、いちいち絡んでくるのがウザいのだ。


「とりあえず、仕切るうえで重要なこと3つ‼︎」


「3つ…」


…もあるのか。


「ヤバい奴とかヤバい事になりそうだったら潤にパス‼︎」


いやいやいやいや…‼︎そんな「こいつ危険だな。真城パス‼︎」ってどんなクズ野郎だよ。


「潤なら大丈夫、たぶん。で次にまいっちは後方に控えさせておいて相手の逃口を塞ぐようにさせた方が今回はいいかもしれない。もしかしたら、誘拐された彼がいるかもしれないし。」


それはまぁ分かる。し、舞人との連携はクラス内でも1番取りやすい。

旧知の仲だしな。


「で最後、あんたは仕切るの苦手でしょ?実際あんまり上手くないし。」


こいつナチュラルに俺を貶しすぎじゃねぇか?事実だから否定は出来ないが…


「だから仕切るのはさいあくティトに任せちゃっていいわよ。で、あんたはどんな状況であっても気丈に振る舞ってなさい。余裕を捨てるな、笑顔を忘れず、絶対に死なない。精神的主柱にならなきゃいけないんだから。」





精神的主柱…それが一番厄介そうだけどな。


「聖くん、大丈夫?気張りすぎはよくないわよ。」


「え?あぁ…うっす…」


やっぱりティトが次席の方がいいんじゃねぇかな?


俺らは自動運転車(コンフカー)2台に別れ、別ルートから目的地に向かっている。俺のいるA班はティト、アレイ、そしてCクラスから"和田絲志(わだいとし)"という奴がいる。

170かそこらの身長で、いたって平均的な体型をしている。顔立ちもくっきりとした二重によって目がそこそこ印象的ではあるが、そこまで秀でているともいえない。

一見すれば特徴がなく印象が薄いのだが…彼の頭がインパクトを格段にあげていた。


「すげぇ髪の色だなおい。」


「あぁこれオレンジブラウンとかいうやつっすよ‼︎俺、目の色素薄いんで、その茶色に合わせてみたんす‼︎」


いや…悪いが瞳の色には全く合ってないぞ?

芦屋は途中まで出かかった言葉をなんとか飲み込む。オレンジブラウン?とか言ったか。俺には金髪と妙に暗いオレンジのアンバランスなヘンテコ頭にしか見えないんだが…


「これだとすっげぇ目立つから仕事にもなるし。」


「仕事…」


「そ‼︎俺にしかできない事‼︎」


聞き返しておいてなんだが、正直あまり他人に興味がない。「ふーん」とだけ返すと頭の中で名影から渡された資料諸々を思い出す。

こいつの役割を考えれば目立てば目立つほど確かにいいのかもしれないが…頼むからそのせいで死ぬようなことだけは勘弁してほしい。

新しい仲間を含め総勢8名…上手く扱える自信がない。






「頑張ろうねっ‼︎」


たった4人の小班とはいえ、リーダーを任されるのは初めてのことだ。年少ということと、年度末の評価開示で"指揮能力"と"状況判断"が東校2800人中10位…つまりSクラス最下位だったこともあり今まではリーダーなんて考えたこともなかった。

しかし今回、聖くんが「やってくれよ」と言ってくれたのだ。

期待に応えねば‼︎

僕の率いるB班はシーちゃん、潤くん、そしてAクラスからなーちゃんが引き抜いてきたという蒼井愛生(あおいあき)くん。パッと見、僕も潤くんもシーちゃんも接近戦を得意とする前線戦闘型だと思うのだけれど、今回の僕らの役目は後方支援と囲い込み。

愛生(あき)くんはいまいちどういう子なのかわからない。…いや性格はなんとなくわかったが、戦闘における得意不得意がわからないのだ。

なぜって……


「愛生くんは接近戦得意?」


「え、あ、はい…」


「狙撃とかは?」


「は…はい。」


こんな感じでほぼ「はい」という返答しか返ってこない…その返事通りなら聖くんにも勝るオールラウンダーだ。聖くんは狙撃あんまり得意じゃないしね。

彼はコミュニケーションをとるのが苦手なのだろうか。同じ日系のように見えるし、蔑視されることを恐れているわけではなかろう。


「そういえば面白い髪の色だよね‼︎染めてるの?」


「え…あ、いや生まれつき…」


「へぇ〜黒富士って感じ‼︎あ、見たことある?絵画の黒富士‼︎」


「あ、ある…」


ようやく会話らしい会話ができた‼︎愛生くんは前髪が長すぎて顔立ちがよくわからないのだけれど、髪の色がてっぺんから白、灰色、黒とグラデーションになっていて綺麗。サラッサラだ。


「今回のって伏に従えばいいの?それとも芦屋に従えばいいの?」


シーちゃんが後方から声をかけてくる。


「あ、それはね…」


「そんなもん基本は伏で、意見が割れた時だけ芦屋だろ?マチルダ、お前は何言ってんだ?」


おぉ…めっちゃ不機嫌。

潤くんはなーちゃんと離されて不服で不服で仕方ないらしい。さっきから目つきがやばい…


「なんですって⁉︎」


あぁほらほらシーちゃんが怒っちゃったよ…

出来れば仲良くしてほしいんだけどな。



漏れた本音を見せないようにしながら、伏舞人率いるB班も目的地へ向かう。

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