手掛かり
「なんでこうも反応範囲が広いんだろうな。」
「トラストルノがいかに自由すぎるかってことだろ。電波もセンサーもあっちこっちに好き勝手あるせいで邪魔が入る。だから細かく特定出来ない。」
西校のSクラスの面々も地図やホロ画像とにらめっこしながら、必死にそれらしい場所を探すが、アテがなさすぎて全て怪しく思えてくる。
「リド、東校の首席から連絡が入ってるわ。」
リドは早すぎる折り返しの連絡に、今年の東と西の差を思い知らされる。
「やぁ、もう分かったのかい?」
『えぇ、東校内に関してはそれらしいものが1つも見つからなかった。もちろん私達4人の身体チェックも行った。でも残念ながら分からなかった。』
自分の背後で西校の数名が鼻で笑ったのが分かる。自分達だってまともな結果を残せていないのに他人のこととなると偉そうにするのは悪い癖だ。
『ただし、移動している方は分かったわ。自動運転車。で、そこに見覚えのある顔が乗ってた。』
その声と同時にエアスクリーンに一枚のホロ画像が投影される。
「こいつ‼︎チェーンソーの‼︎」
そこに映っていたのは間違いなく、あの日チェーンソーを振り回していた奴に間違いない。
確かにカルマはこいつを仕留めに行こうとしていた。そいつが堂々といま自動運転車に乗っているということは、カルマはあの日あの時に拐かされたということになる。
でも2人乗りの自動運転車にはすでにジャックともう1人乗ってしまっている。つまりカルマはもうこの車にはいない。
『いますぐに行動を起こしてもいいが、そうすると相手側の逆鱗に触れかねない。』
「ダメよ‼︎まずはカルマ自身を奪還しないと‼︎」
アリスが訴える。
「それ…でもどうやったんだい?」
『邪魔な電波やらなんやらを、ホロウイルスで片っ端から切っていってやったのさ。』
正気の沙汰じゃない。
失礼ながら咄嗟にそう思ってしまった。医療関係の施設でもあったらどうするのだろう。
「同じ方法でB地区のや東校のも特定出来ないんだろうか?」
『やるだけやってみるわ。ねぇ、それと、そちらの首席と対談の場を設けて欲しいわ。』
「…?わかった。フィルが戻ってきたら伝える。」
「東に裏切り者がいるんだろ。じゃなきゃあいつが簡単に捕まると思えねぇし。」
通話が切れると同時に憶測合戦がはじまる。東校に裏切り者がいる…可能性はある。でも可能性だけで言えば、西側だってない訳じゃない。
もしくはなんらかの事故で、東校にも反応が出ているとか…
いや、今は誰が裏切り者かとかそういう問題を深掘りしている場合じゃない。いち早く、彼を奪還しなければ。