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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
103/296

裸の王様


「ジェスターも僕のこと嫌いなのかと思ってたよ。」


ジェスターは目の前の椅子に膝を抱えて座る少年をじっと見る。細すぎる身体に、赤毛。灰色の瞳。濁っているようにさえ見えてしまうのは、彼の表情がいつも一辺倒沈みがちなせいだろう。


「みんな、僕のことが嫌いなのに…僕は裸の王様さ…祭り上げられて笑われる。」


ジェスターはなにも言わずに椅子の背の方へ周ると、後ろからキングの首元に腕を滑り込ませる。

キングはその腕に頬をすり寄せながら、ジェスターの顔を見上げる。


「なにが…あったの?」


「なにがあったわけではないの。」


「そっか…じゃあこれから何をしでかすの?」


「……貴方が手伝ってくれるって言うなら教えてあげるわ。」


キングは困ったように眉を下げ、しかし「わかったよ。ジェスターのために」と答えた。

ジェスターは優しく、キングの額に口唇を押し当てると、耳元に囁きかけるように話し始めた。





「SOUPの研究機関"TITUS(タイタス)"からレベルEの被験者が逃亡したようなの。きっとこれから世界は大混乱に陥る。トラストルノは崩壊するかもしれないわ…」


「レベルEならトラストルノの崩壊を待たずして人類滅亡じゃないの?」


「そうね…まぁそれはどちらでもいいのよ。」


ジェスターは少し目を伏せる。


「誰か、や何かではなくて…私が終わらせたいの。」


「なにを?」


「…………亜細亜座を。」


「………………。」


キングにはこの後続く言葉が分かっている。そしてそれに対して自分は抗う術が無いことも。

ジェスターにとってキングは目に見える"呪い"だ。そんな僕に頼み事をしてくれている…


「いいよ。僕も一緒に居てあげる…ううん、居させて。」


「…ごめんね、ありがとう。」





キングの髪に顔を埋めてジェスターは震える声で何度も「ごめんね」と「ありがとう」を繰り返す。

キングの肩や鎖骨には髪を伝って温かい水滴が落ちてくる。






キングはただじっと、その小さな身に愛を受ける。

2人の時間は静かだった。

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