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トラストルノ  作者: なさぎしょう
遊戯場
101/296

レベルE


広大な範囲を占めるトラストルノの中にあって、その実外側にある。SOUP直轄の総合研究機関"TITUS(タイタス)"はトラストルノに属する極東の島を拠点に活動していた。

旧時代に"日本"という国のあったそこは、現在も尚"'日本"だった頃の面影を残しつつ、実状としては巨大実験施設と化している。


生活している人間の5分の1は研究者や施設従事者、残りの5分の4は何も知らずに実験の只中に置かれる所謂"一般市民"にあたる。トラストルノで毎日起こる戦火に巻き込まれることのない安心安全区域、というのが内部の人間の共通認識であった。






「それにしてもこの施設のバカでかさ‼︎一体どうして金があるのか…」


「愚問でしょう。今やトラストルノ最大の産業は"戦争"。兵器作ってりゃ金持ちよ。」


2つの影は立ち入り禁止の文字など気にせずゲートをくぐると、背の高い男の方が途中の部屋に入る。


出てくると全身に完璧に防護服を着込んでいた。みるからに動きづらそうだが、これから行く所を考えればこの重装備もやむを得ない。


「君は本当に平気なのか?」


「えぇ平気よ。子供の頃から何度かこっそりあの部屋(・・・・)に行ったことがあるの。」


「すごい子供だな…」


2人は施設員用のカードと番号で中に入る。途中、ジャケットチェックと呼ばれる全身の骨格と血管を透視する、という難関セキュリティがあったが、それも協力者によりすでに(・・・)突破済み(・・・・)だ。

さらに奥へ、深くへ…

"TITUS(タイタス)"の心臓部たる各所よりもさらに奥深くに据えられ生きる"彼"の元へ。


「これが最後の扉だわ。これより先は"レベルE"の超危険区域。まず生身で生存不可能よ。」


「そこで君は息が出来るわけか…すごいな。」


「今は私がすごいかどうかはどうでもいいわ。」


カード、暗証番号、ジャケットチェック、虹彩、指紋…さらには旧時代多く使われていたという"鍵"が5つ。

いまでは鍵を作れる人間が限られる、ということで突破されまえと作ったのかもしれないが、不可能ではない。

そして稀にこういった細かい作業ー例えば鍵を複製するーということに長けた人間もいる。

実際それを成し遂げ、(よわい)9つにしてこの内部に忍び込んだ子供がいる。それから約10年、やっと成すべき時がきた。





扉を開いた先は長く暗い廊下だ。一歩入ると今度は眩しい程の光で包まれる。

この先にいるのか…


「行くか。」


2人は一歩一歩踏みしめながら進んでいく。

突き当たりに一面ガラス張りの部屋が見えてきた。通路に面したガラス壁以外は、無機質なコンクリート壁で冷え冷えとした印象の部屋。

室内にはベッドにトイレ、白く毛足の長いカーペッド、絵本が数冊に、大きな真っ白いクッションが1つ。

そのクッションに、抱きつき眠る子供。





…彼だ。


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