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第53章ー土方、到着

 土方歳三が長崎に到着したのは、2月25日だった。長崎に到着後、早速、誠の旗が輸送船の上から見えるように掲げられた。その誠の旗の下、屯田兵の各中隊が下船して行き、やがて、誠の旗を先頭にして屯田兵中隊は順次、仮の駐屯地に移動していった。もちろん、その誠の旗のすぐ傍には、土方がいる。


「ここまで派手にやっていいものかな」土方は半分独り言をつぶやいた。

「いいではないですか。海兵隊本部はいいと言っているのでしょう」傍にいた永倉新八こと杉村義衛が言った。

「それにしても、一緒に来てくれるとは思わなかった。私宛の手紙が届いたこと自体にも、本当を言うと驚いていた。それが、私からの手紙が着くか着かないかといったときだったのに、小樽港にいる姿を見た時には目を疑ったよ」

「はは、誠の旗を持ち出されては、私も行動をともにせざるを得ません。もちろん、いろいろ思うところがないと言ったら、嘘になります。でも、今を逃したら、ずっと後悔する気がしたのです。それで、小樽から長崎に行こうとしたのですが、やはり行くのにはお金もいるし、船も中々ないしとないない尽くしでした。函館から行った方が早いかとまで思いましたよ。そうしたら、土方さんから声をかけてくれて、身動きが取れないほど狭いと警告されましたが、それでもいいのなら、と屯田兵の皆さんと一緒に乗船することを許可されて、ここに来ることが出来ました。心から感謝しています」

「1人でも多く連れてきたかったからな。それにしても、本当にいろいろあったな。しかし、どれだけ元新選組や海兵隊に参加したいといっていた面々が来てくれているだろうか」土方はふと不安を覚えた。


 土方が仮の駐屯地に近づくうちに、駐屯地のざわめきが大きくなるのが分かった。駐屯地の門の一番近い側に立っているのは、土方には見覚えのない人間だった。

「ちゃんと整列しろ。土方少佐をお迎えするのに失礼があってもいいのか」その男が叫んでいた。土方の見るところ、その男の階級は大尉だった。ということは、と土方は考えを巡らせるうちに、その男の方から声がかけられた。

「土方少佐、心からお待ちしていました。林忠崇大尉、第3海兵大隊副大隊長として第3海兵大隊長の職務を代理で遂行していましたが、今からその職務を土方少佐に引き継ぎます」林大尉は敬礼して土方を出迎えた。

「今から第3海兵大隊長の職務を引き継がせてもらう」土方も答礼して答えた。

「それにしても駐屯地の門で早速引き継がなくてもいいのではないか」

「いや、この状況で引き継がないわけには」林大尉は苦笑いしながら身振りで駐屯地の中を示した。


「土方少佐が来られたぞ」

「よし、土方少佐のために粉骨砕身するぞ」駐屯地の中では、多くの兵が叫んでいた。中には見覚えのある者もいる。

「土方副長。いや、土方少佐」島田魁が言葉を詰まらせていた。

「この旗の下で、また戦うとはな」斎藤一がつぶやいていた。

「他にも相馬主計とか、元新選組の隊士が駆け付けています。速やかに土方少佐に職務を引き継がないと私の身が危ない」林大尉が半分冗談、半分真顔で言った。

「確かにそうだな」土方も苦笑いを浮かべた。

「それでは、新しい新選組の実力を示すか。全員、私に協力してくれ」

「応」

「言うまでもありません」多くの兵が口々に答えた。

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