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第52章ー竹刀戦

 本当なら藤田五郎と斎藤一は書くべきなのでしょうが、斎藤一の方が通りがよいので、基本的に斎藤一で表記は統一します。

 林忠崇海兵大尉は、島田魁と藤田五郎こと斎藤一に声を掛けてきた。

「元新選組の方ですね。島田魁さんと藤田五郎さんとお見受けします。藤田五郎さんは斎藤一さんとお呼びすべきですかね」

 島田は内心、慌てた。自分の方は先程、林海兵大尉のことに気づかず、斎藤にたしなめられたばかりである、それなのに林海兵大尉は、自分の名前を覚えている。

「はい、そのとおりです。島田とお呼びください」島田は思わず直立不動の体勢で答えていた。斎藤も島田ほどではないが、驚いている。

「はい、藤田五郎です。それにしても、私どもの名前を覚えておられるとは」

「最終面接の前に、これまでの経歴等が記載された身上書に一通り目を通したうえで、面接は行いますからね。土方歳三少佐のこともあって、元新選組の経歴をお持ちの方は印象に残っていましたから。それに先程の沖田さん云々の会話、すぐに思い当りました」林は屈託のない表情を浮かべていた。


「それにしても先程の素振りから剣技を見て感服しました。一度、林大尉にはお手合わせをお願いしたいのですが」斎藤が言った。

「いいですよ。お互い熱くなってしまってけがをしてはいけませんから、防具をつけて竹刀で行った方がいいでしょう。この練兵場の中には剣道場もあります。生憎、宿舎不足から剣道場まで寝具を敷いて仮宿舎に充てている有様ですが、防具は持ち出せるでしょう。お互いに防具をつけたうえで、ここでやるのはどうでしょうか」林も言った。

「申し入れを受け入れていただき、ありがたいです。それから、私の方が年上とはいえ、一兵卒の身なので呼び捨てでお願いします」

「私もお願いします」斎藤と島田は、林に言った。


 3人連れで剣道場に赴き、林と斎藤は防具を持ち出して、元の場所に戻り、2人は竹刀を向けあった。島田は固唾をのんで2人の試合を見守った。

「えい」

「応」

 お互いに正眼に構えて睨み合っているうちに、お互いの気が熟したのか、斎藤から林に攻撃を仕掛けていった。斎藤の正眼からの面への攻撃を林は受け流し、あの突き技で斎藤に逆襲してきた。斎藤も新選組では沖田総司や永倉新八と並び称され、三羽烏と謳われた腕前である。林の攻撃は斎藤にあっさり受け流され、斎藤の逆撃が決まるか、と島田には一瞬見えたが、林もそれを鮮やかに受け止めてみせる。数合お互いに打ち合ううちに2人は汗を流しだし、島田には、2人共この試合に熱くなりすぎているのではと思えてきだした。

「それまで、それまで」島田は思わず声を出してしまった。

「いや、いい手合せでした。どうか今後、よろしくお願いします」その声を聴いて、林は我に返ったのだろう、竹刀を下したうでで、落ち着いた声で斎藤や島田に言った。

「こちらこそ、よろしくお願いします」斎藤も竹刀を下して言った。


「どうでした。林大尉の腕前は」島田は宿舎に戻りがけに斎藤に尋ねた。

「あれは天才だ。わしも手が抜けん。下手に手を抜くと負ける」斎藤は、半分独り言を言った。

「それほどですか」

「お前も仮にも剣道場の主なら、それくらいすぐに見抜け。お互い全力を尽くした状態なら、最終的にはわしが勝てる。しかし、それは紙一重だ。ちょっとわしの体調が悪かったりとか、何かあったらわしが負けてもおかしくない。それにしても、いい上司に巡り合えた、今後が楽しみだ。土方さんにこのことは絶対に言わんといかんな」斎藤は言った。

 林忠崇が武芸でそれなりの腕なのは間違いないのですが、新選組の三羽烏に本当に匹敵するのか、と言われると言葉に詰まります。これほどの腕なのは、小説上ということでご了解ください。

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