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第44章ー誤算

「それをきちんと考えていなかったで済むか」荒井郁之介局長の怒声が海兵局内に響いた。荒井局長は海兵局内では温厚な人柄ということになっている(幕末から今まで海軍省内で海兵隊を護るために荒井局長がいろいろ苦労してきたのが最大の要因だが)。だから、海兵局員の中には荒井局長の怒声を初めて聞く者までいる始末だった。だが、荒井局長が怒るのもある意味、当然だった。海兵隊がこの戦争ですぐにはまともに戦えないことが(少なくとも海兵局内では)明らかになってしまったのだ。


 2月10日、陸軍省からの海兵隊の作戦計画に対する回答を見て、海兵局内では、やはり陸軍は海兵隊に対する警戒心が解けていない、陸軍は海兵隊を補完戦力としか扱うつもりがないなということが明らかになったな、という受け止めが行われていた。まあ、その程度は予想のうち、いざとなったら海兵隊独自で独断専行させてもらおうという考えが、(荒井局長を含む)海兵隊の多くの幹部の中では一時よぎっていた。しかし、2月11日(本当は10日にもできたらしいが、担当者が余りの内容にもう一度確認したうえで、と連絡をためらった)、海兵局の補給担当者が恐る恐る行った海兵隊の銃弾補給に対する連絡が海兵隊の多くの幹部の思惑を一度に吹き飛ばすことになった。


「銃弾の備蓄と生産状況について、もう一度話せ」荒井局長は余りの内容に自分の気を落ち着けつつ、補給の担当者に再度の説明を求めた。

「現在、海兵隊が制式採用しているシャスポー銃の備蓄は30万発です。日産可能な銃弾の数ですが、現在は横須賀造船所でシャスポー銃の銃弾等の製造は行われていますが、現在可能な日産の銃弾数は5000発で、工員を増員する等の方法により昼夜兼行での増産体制を整えたとしても日産1万発が限界とのことです」補給の担当者は、周囲の者から来る圧迫感に耐えつつ答えた。

「どうしてこうなった」荒井局長は詰問口調で、補給の担当者に糺した。

「海兵隊は、編成当初は常設2個中隊、戦時4個中隊ということで構想されており、横須賀造船所内の銃弾製造設備もそれを想定して施設を造りました。つまり、最大でも1000人程度にしか海兵隊員は存在しない。だから、日産1万発が上限で充分と考えられていたのです」

「ところが、屯田兵中隊を組み込むことで海兵隊の規模は戦時には急激に増大することになった。更に、屯田兵中隊もシャスポー銃を採用してしまった。だから、銃弾の製造が戦時には追い付かなくなったということか」大鳥圭介が(荒井局長の気を落ち着けるためもあるのだろうが)口をはさんだ。

「そのとおりです。このままでは海兵隊の主装備であるシャスポー銃がいざというときに銃弾不足に陥る可能性があります」補給担当者は答えた。

「厄介なことになったな」荒井局長は頭を抱え込んだ。

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