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護朗の日常09




 護朗は譲の外出中、テレビを見ていた。


 退屈だからであるのだが、ここ一月程夢中になっている番組があるのだ。


「♪だ~い好きなのはぁ~、ひ~まわりの種~♪」


 OPを一緒に歌う程度には好きである。


「・・・お兄様。」


 黙って夜食の仕込みをしていたにとは護朗の後ろに立つ。


「なに?」


「お兄様はどうしてハ○太郎がお好きなのですか?」


 偶々今日は待機組の荒川はただ横に座って仕事をしていたのだが聞き耳を立てる。


「うん、だって気にならない?」


「なにがですか?」


「ち○丸ちゃんの中身。」


「・・・は?」


 首を傾げたにとに護朗は真面目な顔をして語りだした。


「だって、どうしてこの番組の中で一番小さい筈の子が覆面しているの?もしかして誰かの隠し子でメンバーの中の誰かときょうだいだから?それとも二十面相みたいに仮面をとったら別人でした・・・いや、元々覆面だから別人なのは当たり前だとして、誰かに火を付けられて火傷を負った顔だからとか一目で分かる大きな傷があって、それがやっぱりメンバーの中の誰かの仕業だとか。」


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


 荒川は唖然とした表情で持っていた書類の束を床に落としてしまう。


「うわわっ!って、どうしてそんな火サスか昼メロ的な展開になるんだよ。これ、普通のというよりキャラクター製作に製作側が苦しんでますというのがありありとわかる以外何の特徴も無い話じゃないか。」


 何でそんなに詳しいのだ荒川、という突っ込みは誰もしない。


 ちなみに本日の護朗の仮装はぬりかべ(BY鬼太郎)である。にとはいつもの様にメイド服。


「お兄様。それってもしかして・・・。」


 と何かを察知したらしいにとは笑顔で背中のチャックを下ろしだす。荒川は驚いたというよりはぎょっとした顔をするが誰も省みてくれない。


 窓を開けて取り出したものを地上に向ける。


 取り出したものは。

 バズーカー。


 躊躇無く一発放ち、何事も無かったかのようにチャックに仕舞いこむときちんと窓を閉め言葉を続ける。


「佐々木様がおっしゃったのではありませんか?」


「え?うん。そうなんだ。ち○丸ちゃんには密かに囁かれている謎があるんだと言って特別に教えてもらったんです。」


「荒川様。」


「はっはいっ!」


 ロボットに怯えてはいけないと思いつつも護朗以上に容赦の無いにとの行動に顔と体は引き攣ってしまう。


「そのノートパソコン、貸していただけませんか?」


「どーぞ。いくらでもどーぞ!」


 失礼致しますと丁寧に頭を下げたにとは回線が繋がっているのをチェックし、どこかへとアクセスし。


 恐ろしい勢いでキーボードを叩き出す。


 壊す勢いの早さは目が追いつかない程早い。


 無表情で叩き続けるその顔は怖かった。


 そしてジャスト1分でキーボードを叩く音は止まり、電源を切る。


「ありがとうございました。」


 また丁寧に頭を下げるにとに荒川は何をしたのか聞く事すら出来ない。


 出来る人間などそうは居ないだろうが。


「い、いや・・・役に立ったなら何よりだ。」


「機会に何か不具合が御座いましたら直ぐに言ってくださいね。直します。」


 笑顔になったにとに頷く。


「にとぉ。」


 護朗の声に笑顔のままにとははい、お兄様と答える。


「さっきの煙は何だったの?」


 首を傾げる姿は可愛らしい。たとえ外見がぬりかべであったとしても。(誤解の無い様に注釈を入れるが管理人はぬりかべは好きである。)


「ああ、“すとーかー”、ですわ。」


「え~。まだいたの?」


「いえ、新しいものです。大丈夫ですわ。“すとーかー”に人権は無いのですから。」


 にとは笑顔だ。


「そうなの?」


「ええ、お兄様。」


 首を傾げる護朗に笑顔のにと。


「そうなんだぁ。」


「ええ、そうなんですよ。」


「そっか。ねぇにと。」


「はい。」


「明日は一反木綿にしようと思うんだけどどう思う?」


 えへへ、と笑う護朗ににとは首を傾げつつ笑顔が深まる。


「一反木綿は薄いので難しいと思いますわ。それよりたまにはお兄様のスーツとか燕尾服等の格好も見てみたいです。」


「それはにとのお願い?」


「ええ。」


「じゃあ、明日はそれにしようかなぁ。二人でご主人様に執事ごっこする?僕が執事でにとがメイド長。」


「そうですわね。素敵です・・・。」


 手を組んでうっとりするにとを見て笑顔の護朗。


 荒川は目を逸らしながら下に居るストーカーらしき人物の回収の為本部の部下に連絡すると、本部は佐々木幹部のパソコンに凶悪なウイルスが入ったらしく大騒ぎらしくとてもではないがこちらに人を回す余裕が無いと言われる。


 部下の後ろから聞こえるその騒ぎを遠い記憶の彼方から聞きながら和やかに且つ楽しそうに明日の譲に出すティーセットの打ち合わせをする護朗とにとの兄妹を見て荒川は深い溜息を吐いた。

 

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