表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

護朗の日常05





「ごっしゅじんさ~ま~のっ、たっめっに~。今日も行く行く!何処へ行く~。」


 護朗は(最近固定され90cm)調子の外れた声でご機嫌に歌いながら歩いていた。


「松茸ど~こ~だぁ♪」


 赤いリボンにエプロンドレスにロングブーツ、籐の籠というメルヘンチックな出で立ちで歩きながら歌うその姿は可愛らしい(と言えなくも無い)のだが、いかんせん場所が問題であった。


 護朗が松茸を探しに行った場所は。




 樹海。




 樹海の何処に松茸があるのだと思うところだが、誰が吹き込んだのか護朗は樹海に幻の松茸があると信じていた。


 松茸では無く、白骨死体と知らない植物達が棲んでいる樹海で護朗は進む。


 それら全て大事な大事なご主人様の為。


 そう。


 護朗は樹海に入って既に5日が経過していた。


「でも・・・もうそろそろ戻らないと充電が切れてしまう・・・。」


 悲しげな声で呟いてから護朗は上を見上げる。


 上も下も右も左も只管陰鬱な緑で覆われており、これでは頭部のソーラーパネルもどうしようもない。


「とりあえず戻ろう。」


 護朗は籠に入った正体不明のキノコ達に向かって頷いてから飛んだ。


 靴は脱いで籠を持っていない方の手に持っているので足元から出るエンジンの炎は何を焦がす事無く燃え続けている。


 その姿はまさしく鉄○ア○ム。(熊だが。)


 そうして飛び続ける事2時間。


「只今帰りました~。」


 いつもの如く笑顔(に聞こえる音声)で声を出すと慌しい足音がリビングより響いた。


「「護朗!!!」」


 走って来たのは宇治と博士。その後ろでは譲が上体を揺らしながらこちらに来ている所で。


「ご主人様っ!」


 護朗は笑顔で駆け寄り、直角に頭を下げる。


「何処に行っていたの!」


 だがいつも笑顔の譲からは怒りを感じられる声が響く。


「ご主人様・・・?」


「いきなり、『松茸探しに行ってきます』っていう書置き一枚で何日も行方不明で・・・探したんですよ。」


 目尻に滲んだ涙に護朗は動揺してしまう。


「ご、ごめんなさい。・・・それに松茸、見つかりませんでした。」


 心なしか垂れた耳を見て譲は溜息を吐いた後、細いその手を護朗の頭に載せる。以前とは違い柔らかい感触では無くなってしまったがそれでも譲にとって護朗は大事な存在なのだ。


「これからは出来るだけ日帰りで帰ってきてください。」


「本当に・・・樹海なんて探しにいけないだろう?」


 横から博士の溜息混じりの声が落ちる。


「ごめんなさい。」


「で、誰が樹海に松茸があるなんて言ったんだ。」


 宇治の淡々とした、だが怒りを滲ませた声に護朗は俯いたまま答えた。


「佐々木さんが、樹海にはそれはそれは美味しい松茸があるんだって言うからご主人様に食べさせてあげたかったんです。」


「・・・・佐々木幹部か・・・・・・・。」


 宇治はそのまま部屋を出て行き、譲は二度目の溜息を吐いて宇治を見送った。


「今回ばっかりはちょっとやりすぎましたね。」


「でも良かった。私の最高傑作が無事で!さ、護朗君。メンテナンスと充電しないといけないね。・・・その籠は?」


「なんか珍しそうなものがあったから持ってきました。」


「樹海のものって持ってきていいんですか?」


「駄目だったような・・・・・・まあ、それは私が処分しておきます。」


「研究のお邪魔をしてすみませんでした。」


「いえ、大丈夫ですよ。護朗にも発信機を付けていますからあまり心配はしていませんでしたしね。しかし・・・樹海に入っても届く発信機というのは凄い。我ながら良い品を作りました。」


 譲は苦笑しつつ護朗の頭を撫でてから博士に連れられて部屋から出て行く護朗を見送る。


「ちゃんと万全にしてから戻って来るんだよ?」


「はい!ご主人様!」


 笑顔で去っていく護朗がドアの外に出て行くのを確認した後リビングに戻ってきた宇治に尋ねた。


「それで、工藤さんは何と言っていたのですか?」


「簀巻きにしてやると怒っておりました。」


 最新、最高機密が満載のロボット護朗は見た目も稀有であるがそれ以上に稀有なのはその性能と値段。


 その物凄くお高いロボットが佐々木の悪戯を兼ねた発言で失われたかもしれないという事実に工藤はここ数日怒り心頭だったのだ。


「今回ばかりは・・・・僕も口出しする気が起きません。」


「それで宜しいのではないでしょうか。会長も怒っておりましたし。」


「そうですよね。」


 護朗を可愛がっている譲が不安な5日間を過ごした事に怒っている椎原と同理由と金銭的な事(捜索費用と損失の可能性)で怒っている工藤はここ数日とても機嫌が悪かった。


 ちなみに佐々木は7日間程出張で日本に居ない。帰国予定は明日なので工藤は佐々木が成田空港に降り立つのを手ぐすね引いて待つ事だろう。




 宇治の淹れたお茶を飲みながら5日間の疲れが一気に押し寄せてくるのを感じる譲だった。






 そして。


 メンテナンスと充電が終わった護朗が嬉々として戻ってきた姿(ド○ンちゃんの着ぐるみを着て顔だけ出した格好)に譲は苦笑するしかなかったが、これ位なら要領範囲だろうと護朗のコスプレにはおおめに見る事にした。




 補足:ソーラーパネルは出し入れ可能で、頭部にはファスナーが隠れております。更に○キンちゃんの着ぐるみの際、尻尾は無理やり仕舞いこんでおります。(本人曰くちょっとだけ痛いんです。らしい。)ドキ○ちゃんの着ぐるみは護朗本人が選んでいますが実は博士の研究室にはア○ムもあるとか無いとか。  佐々木氏のその後についてはどうぞご自由に想像してください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ