護朗の日常01
僕の名前は浅見護朗。
(今の所)全長95cmのテディ・ベアです。
ただの熊ぬいぐるみではありません。
そう、僕は。
ご主人様を守る為のロボットテディ・ベアなんです!
(自慢はいつでもふさふさの尻尾とお茶セットと湯沸かし器内蔵な所)
日々ご主人様の為にお茶とホットココアを淹れ、お遣いに行き、佐々木さんに服を貰って博士の所で改造されて。
そして時々非日常を送っています。
僕の仕事の主な出来事はご主人様にお茶を淹れて、掃除をする事です。
といっても僕自身はあまり身奇麗に出来ないのでご主人様がブラッシングをしてくださいます。
とても優しくて可愛らしい、自慢のご主人様なのです。
僕の(人工)和みオーラとは違う真実人を和ませるお方なんです。
そんな大事な大事なご主人様にはあまりにも魅力的な為“すとーかー”というのが付いています。
僕はそんな塵屑共(工藤様談)を掃除する事も仕事の一環となっているのですがともかく数が多いので手早くやる事にしています。
そんな僕の日常を少しだけどうぞ。
お遣い帰り。
今日も譲様お気に入りの和菓子を手に入れる事が出来た護朗は任務達成の充実感に包まれて帰宅。
する途中なのだが不審者発見。
「あ、あれは・・・。」
脳内記憶装置から過去の映像記録を取り出して処理すると此処一ヶ月程ずっとご主人様の住むマンション前に立っている男である事が判明。
護朗は足音を立てずに(というより空中移動)して男の後ろに立つ。
「おぢさん。」
肩を震わせた男はボーイソプラノの愛らしい声に振り向く。が視界には誰も映らない。
「・・・気のせいか。」
「おぢさん。」
もう一度男は振り向き、下を向くと、ぎょっとした。
視界には確かにテディ・ベアが立っており、硝子の瞳が見つめている。しかも黒のワンピースに黒い靴。純白のフリルのエプロンに黒いリボンを頭に付けている。
目を擦るが夢では無い証拠に目を何度開けても頬をつねってもテディ・ベアは視界から消えない。
「なんで、ぬいぐるみなんかが・・・。」
「おぢさん、何してるの?」
僅かに首を傾げる仕草に男の眉が寄る。
「何ってなんでもいいだろうっ。」
男が叫んだと同時に護朗は男が持っていたデジタルカメラに懐からケーブルを伸ばして差し込む。そうして直ぐにその情報を脳内のコンピューターに取り込み解析。
「てめっ、何しやがる!いや、人間じゃないからこいつ、か?」
【解析完了。ご主人様のストーカーと断定。】
直ぐにケーブルを抜いてから和菓子の入っている紙袋をお腹のチャックの中に仕舞い、護朗は二歩下がる。
男がその素早さと動く事に唖然としている間に護朗は。
「はぁっ!!!!!」
飛んだ。
しかもただ飛ぶのではない。
跳躍は約5M。
何故そんなに飛ぶのかというとそれは単純に博士の“ろまん”故。
飛んだ護朗は唖然としている男に向かって両足を向け。
「ご主人様の敵は星屑となれ!」
決め台詞を吐いて蹴りを入れた後空中に飛んでいるその体を右手の加工済み強力ストレートで空に飛ばす。
本当の意味で飛んでいき、消えていったその残像を見ながら護朗は右手に息を吹きかけ(るふり)をし、一言。
「またつまらぬものを飛ばしてしまった。」
ちなみにこの台詞も博士の“ろまん”故。
だがボーイソプラノの声とメイド服でそんな台詞を言っても欠片も迫力も無い事を護朗は知らない。最もプログラムされているから言っているだけで護朗自身にとってはどうでも良いこと。
護朗の目的はただ一つ。
全てはご主人様の為。
「さて、早く戻らないとお茶の時間に間に合わない!」
そうして何事もなかったかのようにお腹のチャックを開けて和菓子の入っている紙袋を取り出し左手に持つと可愛らしい音を立てて歩き出し、ご主人様の待つ部屋へと戻っていったのだった。
読了ありがとうございました。楽しかったです!でも現代の科学力では絶対に不可能だとか色々突っ込み所満載な護朗。