7話
妾は宿をでていくクロードの後についてチェックアウトをした
クロードは現役の冒険者じゃ。ギルドに口添えしてくれれば楽に話が進むかもしれぬからな
「ギルドでする事?名前の記入と職業だな。三人とも自称冒険者だし空欄だな。登録できればちゃんと魔族用のギルドカードがもらえるぞ。依頼を受けるときは必要だからなくすなよ」
クロードは自分のギルドカードを見せてくれた
カードには教えてくれた通り本人の顔写真と名前、職業がかかれていた。
ん?
職業の欄がキラキラして読めんようになっておるの
ちなみにロデスのカードを見れば【騎士】となっておった
何故読めんのじゃ?
「ああ…それか…」「詮索は遠慮してくれませんか?」
フィリスがクロードとの間に割り込んできた
「む…内緒か。まぁよい。」
クロードにカード返すとカードを見つめてため息をついた
「仮免なんだけど人族の希望なんだとよ。なんて恥ずかしい職業だ。ギルドに顔出すのやめようかな。人助けなんて当たり前なんだからこんな職業いらないのに」
「クロード!なんて事を!その心意気は買いますがその誉れ高い…あっ」
「…」
フィリスよ…
「ざ…残念そうな目で見るのはやめてください」
後退りしてロデスの後ろに隠れるフィリス
「…ギルドだ」
フィリスが後ろに行ったからか存在が増したロデスが指を指して言った
「ギルドに入ったら人族も魔族も一応の区別は無くなる。ケンカも冒険者同士の私闘って判断される。これを口実に戦争は起きない。例として魔族の冒険者が人族の一般人を殺したとしても魔族の冒険者として処罰される。逮捕されたのが魔族側か人族の側かで罰も変わる。逆も同じ」
オルフが説明してくれた。
なるほどの、区別されっぱなしでは対立のままじゃからな
うまいことできておる
「魔族と人族の混成チームはないのか?」
「今のところは」
ないか…まぁ国境の街でさえ二分しておるからの。
「結構おおきな建物ですね」
シノンが見上げていたのはかなり大きな建物だ
冒険者ギルドアディリア支部
神殿を模したような形で上からみると凸な形をしているらしい
中立地帯にあるはずなのに端から端まであるのはどういうことじゃ?
とクロードに質問すると依頼は中央で受注し、左右には人族と魔族の宿舎や薬屋、武器屋、酒場まであるそうな
そうか、ギルドにも宿舎があったのか
低い階段を上がりギルド内へ足を進める とすれ違う人族が妾達をみていく
やはり魔族と人族が一緒にいるのはへんなようじゃの
ま、気にしない気にしない
しかし何故妾ばかり…
「ニーナ様、今街娘だからですよ。街娘は普通ギルドになんて来ませんから」
シノンが周りの冒険者から妾を隠すように立ってくれておる
妾に恥をかかせないようにして…
「…あなたは魔王様なんですからね…知ってる人もいるかもしれません」
ああ…そっちか
「すまぬがちょっと待っててくれ。【シャドウルーム】」
ギルド内部も神殿風で太く背の高い柱が等間隔に並んでいる
妾は壁際の柱の裏に行きシャドウルームを唱え中に入った
シャドウルームは外からは見えず中からは見えるという偵察用魔法じゃ
しかしこれは夜間用。今は昼間で曇ってすらおらん
だからシャドウルームは丸見えなんじゃ
別に着替えるだけじゃがらよいが
「【アイテムポケット】竜騎士の制服とライトアーマー」
竜騎士の制服はその名の通り竜騎士隊の制服だ
全体的に真っ赤で右側の襟首から脇腹までの竜の刺繍が背部の左肩には竜と槍のマークがはいっている
下は赤いボトムス、合皮の靴
ライトアーマーの肩当て、胸当て、すね当てを装備する
今日の武器は…槍がいいのぅ
アイテムポケットに手を突っ込み無造作に取り出す
「…魔竜槍ニーズヘッグか」
魔竜槍ニーズヘッグは竜鱗でできた柄と前後に分かれた二つの刃が特徴の槍じゃ
ニーズヘッグが知りたければ自分で調べるがよい
この槍は突いてよし、斬ってよし、ぶんまわしてよしの一品じゃ
刃に触れたものに毒を与えるという能力もある。あまり使いたくはないがの
見栄えの為じゃ
さてと見栄えの良くなった妾に似合いそうな殿方はおらんか後で品定めせんとな
「待たせたの」
クロード達が妾を見ておる
そんなに見ないで…欲しいんじゃが
「凛々しくてかっこいいぞ」
それ、ぜんぜん誉めとらんからな
「魔法使いじゃなかったのか?フィリスから空間魔法を使うって聞いたけど」
うんうんとうなずくフィリス
「妾はなんでもいけるのじゃ。なんなら聖騎士もいけるぞ。光属性もなかなかに使えるからのぅ」
「器用貧乏?」
オルフよ。単発トークはやめて
「いやいや。修行の賜物よ。シノンだって風、土、回復の三種は使えるんじゃからの」
「私のはまだ駆け出しですがね」
「いいじゃないか…僕なんて何も無いんだから…この前もホブゴブリンの盗賊も怖かったし」
「不思議なチームだな―っと受付空いたみたいだな」
どうやら他の冒険者が受付から離れたらしい
いよいよギルド登録じゃ。楽しみじゃのう
妾達はギルドのカウンターに進み歩く
―ざわ
場が一瞬ざわめいた
ギルド内に設置されているテーブルにいる魔族の冒険者達
やはり妾の事を知っておる者もいるようじゃな。…安心したぞ
それらを一瞥すると慌てて目を背けて静かになる
そんなに恐がらなくてもよいのに…
シノンがドミニクを連れて魔族達の所へ行く
挨拶まわりだそうじゃが闇の衣がざわめいておるぞ
力ずくは感心せんが騒ぎになるよりかは良いか
妾はクロードについてさらに進む
ギルド受付は木でできた半円のカウンターだった
正面に依頼受付、右側に依頼達成報告と報酬受けとり口、左側に新規の登録場がある
「ニーナさんは新規だから向こうだな。今日は人の受付だし一緒に行こう」
1日おきに人族魔族を交代しながら受付をしているらしい
今日は人族が受付をしている
初心者な妾に気を使って話しかけてくれるらしい。クロードはいい奴じゃな
「やぁ、ミリア。今日は新規の冒険者を連れてきたんだけど、登録頼むよ」
と妾の方を指差して言うと受付の女はあきらかに睨んだように妾を見てくる
「…魔族よね」
「そうだけど。冒険者になるんだし登録にきたのはおかしくないはずだ」
「ふん…なんでクロードは協力的なのかしら…胸かしら?」クロードとのやりとりを見る限り魔族の紹介も少なからずやってそうじゃ
そして受付の女は何度も同じ事をしているといったところ
「後で食事にでも連れてってくれたら―」
なんじゃと!この女!クロードの人の善さにつけこみおって!
一言言ってやろうと身を乗り出したがロデスの腕に阻まれた
「越権行為。必要ないはずだ」
「ロデス…あんたも毎度毎度邪魔してくれるわね。わかったわよ。ほら登録書、仲間がいるなら一緒に書いておきなさい」
と二枚の紙を渡された
悔しかったのか紙が折れておる
クロードに聞いた通りの事を書くだけだし簡単なもんじゃ
ささっと書き上げ受付女に返すと壁際に連れていかれて水晶玉のような者を妾の前に掲げた
姿写しのマジックアイテムだそうな
妾の知らない物もあるから面白いの
続いてシノンとドミニクを呼び戻し同作業
これでカードの手続きは終わりじゃな
「ニーナ・エヴァーグリーン…夜道は気を付けることね…じゃなかった。チームのランクはEよ。一番下の下の下よ。そのまま下にいればいいわ…じゃなくて、依頼はランクにみあった依頼しか受けれないからあんたはEランクだし雑草…はいいすぎね。薬草拾いでもしてついでに胸の脂肪を捨ててくればいいわ」
むぅ…嫌がらせが多いのぅ
「つまり今は同ランクの依頼しか受けられない」
オルフが簡略して教えてくれた
それにしてもなんでこんなに敵対心持たれておるんじゃ?
「おっぱい」
「なっ!」
「オルフ!女性がはしたない。なんですか!おっぱいと…は…きゃああああ!」
悲鳴をあげると余計に目立っておるぞフィリスよ
「ミリアは貧相。ニーナは豊満。持たざる者の僻み」
「オルフ!」
結構毒舌じゃのぅ
「因みに私もなかなか」
ローブを引っ張り膨らみをアピール
うむ。確かに
「わ、私…なんて事を…ああ神よ」
「なんていうかさ…あんた達疲れるからとっとと依頼でも請けに行って。ほらギルドカード」
三枚のカードを受けとりシノンとドミニクに渡す
…ん?シノンとドミニクの職業の場所が光ってる。クロードと同じじゃな
妾の所は魔王となっている。
シノンとドミニクもカードを見せあってる
妾のも見せてみるとやはり光ってるそうな
なんじゃ?不備か?
二人にこっそり聞いてみるとシノンは狼王、ドミニクは創造主だそうな
これについては聞けぬな…
「職業がついたら自動的に表示されるから職業ギルドは入っておけばいいわ。職業は受けられる依頼にも関係するから入ることをお勧めするわ」
「わかった」
とカウンターを離れるとクロード達に職業欄について話す
「え…魔族なのに加護が?」
フィリスが知っておる感じじゃな
「職業が見えないのは本人が持つ何らかの加護が働いているからで本人しか見えないようにしてくれているはずです。ちなみになんと書いてあるのですか?」
「ふふふ、内緒じゃ。しかし加護か…思い当たる節が多すぎて解らんわ」
まぁ魔王とかバレるよりかはよいな
「…まあいいです。まさか三人ともとは思いませんでしたが。加護の種類が知りたいなら教会…は無理ですね。今度暇があれば私が調べてあげますよ」
昨日とはぜんぜん違う態度じゃの
ん?またロデスの言葉からか。色々有難い
「助かるの。さてと次は依頼じゃな」
「よし!Eランクの依頼を取りに行こうぜ。目指せ薬草100本」
クロードがカウンター中央へ向かっていく
薬草100本って…ホントに薬草拾いの依頼を請けるのか…