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6話

妾達は逃げるように208号室に入るとテーブルに無造作に手荷物を置いて部屋の奥に歩く



妾の後にシノン、ドミニク、その後ろを人族のチームが入ってくる



入り口手前にテーブル、奥には聞いていた通り6つのベッド、壁には窓が二つある



ちなみに魔法使いは入り口から一番手前のベッドに倒れ込んでおった



帽子くらい脱げたじゃろ



妾はテーブルに腰かけて皆を見るとそれぞれ荷物を固めて置いた



「さて…自己紹介でもしておくかの。妾の事はニーナ・エヴァーグリーンと呼べば良い。冒険者になる予定よ」




妾がニーナと名乗ってもバレそうな気配はないな。



赤髪金目、琥珀色の角という魔王ニルバーナの特徴丸出しなんじゃが…



大丈夫そうじゃの。あまり知られていないかも知れんの



それはそれで寂しい


「こっちの狼耳はウェアウルフのシノンじゃ。」



シノンは…



シノンは…



「冒険者になるんじゃったっけ?」



ため息を着いた



「違います。ドミニクのお目付け役です」



そうじゃったのぅ。ドミニクの虫除けじゃったの



「ニーナ様が今考えたのは違いますからね」



「な…シノン。お主心が…」



なんと…読心術も使えるようになっておったとは…



さすがに妾でもできん。教えて欲しいぞ


「読めませんよ。表情からだいたいを理解してるだけです。ニーナ様は顔に出すぎです」



な…なんと。そんなに妾は顔にでとるのか…



人族のチームの残念そうな視線が飛んでくる


止めてくれ!妾の心が傷つくじゃろぅ



「こ、こっちはドミニク、見ての通りドワーフで細工師じゃ。」



疲れたからか小さく「どうも」とだけ答えた



「ドミニクは妾の依頼の為に同行しておる。後は…この街に根をおろせるかと言ったところかの」



「俺達でも依頼できるのか?」



とカウンター男。ドワーフの作るもんは何でも高品質だからのう。



「構わぬがこう見えてドミニクは腕利きじゃ。依頼もまず妾を優先させる。その後で交渉するがよい。まぁ値は張るかもしれんの」



妾達はこんなところじゃろうな。

終わりとばかりに空色の瞳の男に目をやり交代を伝える



…顔で選んだんじゃないぞ。こやつがリーダーっぽい感じじゃったからじゃ



「今度は俺たちだな。俺はクロード・レンドール。冒険者だ」


と自己紹介



「俺は職業は剣士だ。ファミリーネームのレンドールは村の名前だ。俺とこいつは同じ村の出身だからこいつもレンドールの姓を持ってる」


続いて壁にもたれて寝ていたこいつと呼ばれた盾役は目を開いた


「…ロデス・レンドールだ」



無口なやつじゃのう


「ああ、無口なのは悪く思わんでくれよ。」



ロデスがクロードを睨んでいるが特に気にしてない様子。常日頃から似たような感じなんじゃろうな


「わかっておる。妾は口の軽い男の方が嫌いじゃて」



これで二人じゃな



魔法使いは寝とるし神官女の番じゃ



「私はフィリス・マクリア。神官です」


うむ、素っ気ないしこちらをかなり警戒&忌避しておるの



「おい、フィリス。流石にそれはないんじゃないか?部屋をかしてくれるんだ。」



「私は頼んでいません。気に入らないなら今からでも私一人で野宿します」



はぁ…強情じゃな



「別に構わぬよ。ただ一期一会、この出会いを悪くしたくないだけじゃて。人族と魔族…この中立地帯だけでも中立で…平等でありたいのじゃ」



「………嘘は言っていない」



ロデスが一言発したら視線が集まる



無口がかえって注目を浴びとるの



「…それもそうですね。今日くらい…」


クロードがこちらを見て喜んでいるがロデスの一言で覆るもんなのか?



まぁ掘り返したりはせぬが…




「ならばまずは着替えんとな。ほれ!男衆は出ていってくれ。覗きは許さんぞ。ドミニク。お主ももう少しがんばれ」



ドミニクを部屋から追い出すとクロードとロデスもそれについて出ていった



妾は一番奥を自分のベッドに決め飛び乗る

シノンが隣でフィリスは反対側じゃ



フィリスが手荷物からいろいろ出しとるが荷物が多いのは良くないぞ



「アイテムポケット。『妾のパジャマ。桶。水。手ぬぐい。歯ブラシ。櫛』」



アイテムポケットからいろいろ取り出して寝る前にしておきたい事をする



「い、いっぱい出てきましたね…」


「うむ。妾のアイテムポケットはいろいろ入っておる。手荷物も軽くて済む。旅には便利じゃぞ」



シノンに水を渡すと炎魔法で湯を沸かしてくれた



これで体を拭けるのう



「アイテムポケットは空間系魔法。私は神聖魔法しか使えない。これからの旅を支えるには必要かもしれない」



「もう長いのか?」


シノンに体を拭いてもらいながら髪を鋤いていく



妾が終わったら手伝うからの



「ええ…冒険者だったクロードを見つけて教会に連れてって各地の魔物倒して…」



窓の方を見ておるが外を見てる訳じゃない。旅を思い出してる様子



「各地の有力者に援助してもらったりしてるうちに国が接触してきたり…」



国とかはわからんが魔物についてなら話を続けれそうじゃな


「魔物かぁ…複数で出てくれば弱くて楽なんじゃが…単一だと手強いからのぅ」


シノンの後ろにいき櫛を通す



狼耳がピクピクしておるぞ。気持ち良いんじゃな



「なんですって?」


ほい。シノンの髪は終わりじゃ。



フィリスに貸してやろう?ん?持っとるか?



「知らぬのか?魔物はテラーポイントから出てくる。いっぱいなら弱く。少ないほど強いんじゃぞ」


テラーポイントからは魔物の元になる魔素が漏れ出している


魔素だけでは魔物にはならぬ



生き物の悪意とか敵意とか死んだ者の怨念、または呪い等々が魔素と融合し初めて魔物になる



魔素の量は一定なので融合した材料の濃さで強さが、魔素の結びつきの数で魔物の数が変わると妾達は結論付けておる



戦争や飢饉、暴動の起こった時は魔物もかなり強かったからの



妾が見た中で面倒なのはサイクロプスの巨体や意思や理性のない精霊。厄介なことこの上ない



ちなみに人族の戦争だからといってその怨念や負のエネルギーが人族の土地にだけ出る訳じゃない



魔族側にも作用することもわかっておる


「そんな話…テラーポイント?」



フィリスは考え込んでいる

ホントに知らぬようじゃな



人族の王はそんなことすら民に伝えておらん状況なのか?

妾はピンクの花柄のパジャマを着る



シノンはランニングとホットパンツ(闇の衣)じゃ。もちろん尻尾は出るようにしておる



フィリスが物欲しそうに妾のパジャマを見とるがこれはあげられんぞ



「見たことないかの?魔界では見つけてあるものは管理され魔物がでてくれば倒しておるのじゃ。たまに魔族から死人が出るのが妾の悲しい所よ」



「魔物が?魔族を?」



「まだかぁ」



扉の外から聞こえた。クロードじゃ



「っと。この話は終いじゃ。危うく男衆の事を忘れるとこじゃった。」



フィリスはもう少し話したそうな顔をしておったが流石にずっと待たすのはいかんぞ



「おーい。入ってよいぞ」



扉をあけてのそのそと入ってくる男衆



「う~い」

「………」

「ふぁぁ」

「お主らも着替えるが良い。妾達は向こうを向いておるからの」



妾達は窓の方へ体を向け視線を外す



「ところでお主達は今後の予定を聞かせてくれんか?」



「ん~。俺達は残念な事に財布が心配なんだ。ギルドで依頼を受けて稼がないといけないな」



「ふ~ん。冒険者も楽じゃないのぅ。ドミニクへの依頼どころじゃないではないか」



「そうだぜ。出費が嵩む嵩む。」



「クロードの食費にな…」



ロデスから発せられた一言でフィリスがちょっと笑った



ほぅ!なかなかいい顔で笑うではないか


「あ!こんな時だけ喋りやがって!」


「ふふふ。面白い奴らじゃの。そうなると食費の為にも依頼が被らぬと良いな」


本当に面白い奴らじゃ。見てて飽きぬわ


ふとクロードを見るとこちらを見ておった



「ニーナさん。俺は魔族は魔物を使って人を襲う。決して解り合えない相手と言われ信じてきた。でもニーナさんは笑うし困るし、人間と変わらない。魔族の事を誤解していたのかもしれない。」




「そう言うには早いぞ。世の中じゃ対立してる方が多い。簡単に意見を変えるのは危険ぞ」



そもそも魔物を使って襲うなどしとらんからの


ってか言うこと聞くような存在じゃない



「それでも、俺はニーナさんと出会えた事に感謝する」



な…なんと。まぶしい!まぶしいぞ!クロードよ



「そなたのような者ばかりなら争いもなくなるやも知れぬのぅ」



妾は普通に話せておった!やるではないか!妾



「まぁ今日はお近づきに一杯やろうか!」


「うむ!」




あ…ちなみに魔法使いは「オルフ・シンガ…」と寝言で言っておった



やはり器用な奴

―――――――――――――――――――――――――――


―バキッ



「ぎゃあ」



なにがあった!と皆起きてくるが




頬を赤くしたドミニクと尻尾を膨らませ立てたシノンのやりとりを見て自然にベッドに帰っていくというやりとりがあった



お約束じゃな



―――――――――――――――――――――――――――


「ううぅ…頭痛い」


「ははは!クロードよ!まだまだじゃな。竜種の妾に勝とう等100年早いわ」


妾はベッドの上からクロードを見下ろして言ってやった



人族のチームは早起きなのか全員起きておる



シノンとドミニクはまだ寝ぼけておるのう…



「竜に飲み比べは無謀。それよりギルド行く」



オルフが水魔法で顔を洗っている

水魔法使いなのか?


顔を洗ってしゃっきりしおった。昨日は寝ておったから解らなかったがなかなかの赤のキツい目に頬に何らかの印が…



銀色のイヤリングに二股の杖。金属製じゃが何かはわからん。ミスリルと何かの合金みたいじゃ



昨日と変わらず真っ黒なローブじゃ。これでどこにでも行けるじゃと…?



一回お洒落をすると良い

なんなら貸してやろうか?

ん?冒険者はお洒落など気にしないとな!



しているほうがおかしいとまで言われた


…ガーン



「さ、クロード。皆、そろそろ行きましょう」



フィリスがクロードを手助けして立たせておる




昨日遅くまで飲み比べをしていたら酔いつぶれおったのでドミニクとロデスはきっちりベッドで寝た


だからテーブルで寝たのはクロードじゃった



固まっていたからか体が痛そうじゃな



「ヒール、キュア」



ヒールで体調を整えキュアで二日酔いを消してやる



キュアは解毒の魔法で二日酔いにも効く。酒も飲み過ぎは毒に当たるようじゃ



「サンキュー」



クロードの荷物を持ったロデスが目でせっついておる



「待ってくれぬか。妾達も行く」

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