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ちっさいおじさんと3日間  作者: 早川 りな
3日目 今日は日曜日
8/16

曇りの午前

 9時に目が覚めた。昨日とは打って変わって曇り空だった。

 リビングに行くとおじさんはソファの上で熟睡中。昨日の水割りチューハイが効いたみたいだった。

 おじさんを眺めながら今日は一日家にいよう、と思った。ボーっとしたまま、ソファに座っていた。思考回路停止状態で時計を見るともう9時半。

 30分もボーっとしちゃった。そろそろ活動してみるか。

 ソファからのろのろと立ち上がり、洗面所に行って顔を洗った。洗濯機を見ると洗濯物が溜まっていた。

 洗濯しよう。

 寝室に戻り、ジーンズとTシャツに着替る。そしてパジャマと枕カバーを洗濯機に入れ、スタートボタンを押した。

「朝ご飯を作るためキッチンへ行きましょう」

 うわ、今日発した最初の言葉が独り言だ。独身と独り言はワンセットな気がする。

 昨日、作ったポテトサラダとハムをパンに挟み、カップにお茶を注ぎ、それを持ってソファに座った。おじさんはまだ寝ていた。

 これじゃあ、当分起きないね。

 のんびりとポテトサンドを食べ、お茶を飲んだ。

 洗濯が終わるまでゆっくりしてよう。

 本を読んだり、ネイルをしたり、ネットショッピングをしたり、時間がないとできないことをしていた。こんな風に時間を使えることがうれしかった。

 小学生くらいまでは時間は無限にあると思っていた。でも、年を重ねれば重ねるほど、時間が無いことに気が付く。1日が24時間は老若男女関係なく、この地球上にいるもの全てにあるのに。過不足なく、平等に。

 きっと小さい頃は自分だけに目を向けていればよった。自分だけの時間だった。でも少しずつ年を重ねていくと、人や他のことにも目を向ける。そして気が付けば、自分の時間を自分のために使ってないのかもしれない。

 それでもいつか他のために使った時間が自分へ帰ってくると信じてる。



 そんなことを思っていたとき、洗濯機から洗濯終了のメロディーが流れた。リビングで洗濯物を畳む。

――ブエックション!!

 な、何?

 ビックリして周りをきょろきょろと見回すと、おじさんが起き上がり鼻の下を人差し指で擦っていた。

 おじさんのくしゃみか。洗濯物をパタパタしたせいで埃が舞ったかな。おじさんの睡眠を妨害してしまった。でも、もうそろそろお昼だし、いい加減起きるべきよね。

「おじさん、おはよう」

 おじさんは両手で顔を擦って、頷くように頭を振った。そして、布団代わりのオレンジ色のハンドタオルをきれに畳んで背中の後ろに置く。次に敷布団代わりのブルーのハンドタオルのしわをきれいに伸ばした。

 マイ・ソファを作りあげちゃったよ。そのうち、おじさんの部屋が出来上がりそう。

「おじさん、お昼ご飯作るから。テレビでも見てて」

 テレビをつけて、畳んだ洗濯物を仕舞うべき場所へ仕舞った。

 あっ、明日はおじさんのハンドタオル洗ってあげよう。


 キッチンで昼ご飯の準備をする。

 今日はそうめん。冷蔵庫からキムチとトマトとめんつゆを出した。そうめんが茹で上がる間に、トマトをサイコロ状に切り、キムチと合える。茹で上がったそうめんを冷水に浸し、水気を切る。透明の涼しげなガラスのお皿にそうめんを盛り付け、上にトマトとキムチをのせ、めんつゆをかけて完成。

「お昼ができたよ」と、おじさんに一応呼びかけてみる。

 あのちっささじゃ、テーブルまでこれないだろうけど。でも、突然現れる割には大して自分で動いてくれないよね。瞬間移動をするしないの基準はどこにあるのだろう。

 テーブルにお昼ご飯を並べて、おじさんの所に行くと、バラエティー番組を真剣な顔で見ていた。

「おじさん。お昼食べよう」

 昨日と同じようにおじさんの前に手を置く。おじさんは何の迷いもなく私の手に乗ってきた。そして、ブルーのハンドタオルをもう片方の手に持ってテーブルへ向かった。おじさんを下ろし、私も席に着いた。

「いただきます」

 私が手を合わせて言うとおじさんもマネをした。

 昨日は不思議がってたくせに。

 おじさんの大好きなキムチとおじさんが初めて食べるだろうトマトを、小皿に置いてあげた。おじさんは嬉しそうにトマトに爪楊枝を刺している。

 もしかして、トマトもキムチと勘違いしてるのかも。昨日のポテトサラダを食べるとき、すごく警戒してたし。

 どうやらそうだったみたいで、一瞬「うん?」という顔をしたけれど、気に入ったみたいで、美味しそうにもぐもぐしだした。

 おじさんの観察をしながらお昼ご飯を食べた。

「ごちそうさま」

 またおじさんは私のマネをしていた。


 おじさんをソファに連れて行き、洗い物をしてから、ジンジャーシロップを作った。それから、寝室で来週の仕事の予定を確認していた。おじさんはバラエティー番組をやっぱり真面目な顔で見ている。

 仕事に没頭していたせいで外は暗くなっていた。


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