ほんとうのこと 1日目
ぼくは探しモノを見つけ、次の探しモノを探すため、その情報を見たんだ。そこには、白いキラキラした玉があって、ぼくを探してるのかと思っちゃった。ぼくの普段の姿とそっくりだから。でも、そんなことはありえないもん。人も動物もぼくのことを知らないから。一体何を探せばいいんだろう。とりあえず、持ち主の所に行ってみよう。
持ち主の家に入って、家の中を探してみるけど、白くてキラキラした玉なんてない。仕方ない。おじさんに変身するか。
――バフッ。
変身するとき、どうしてこんな間抜けな音がするかな。もうちょっと格好良く変身できたらいいのに。おじさんの姿で部屋の隙間とかを見るけど、やっぱりない。探しモノがなんだか分からないなんて初めてだ。とりあえず、持ち主を観察するしかないかな。
ちょっと動いただけなのに疲れた。運動不足かな? よし、運動しよう。ぼくの運動はプラグを抜くことなんだよね。小さい体でプラグを抜くってかなり力がいるんだよね。
――うんしょ。よいしょ。ぬわーあ。
はあ、抜けた。よし、もう一本。
――うんしょ。うんしょ。よいしょ。ぬわーあー。
うん。いい運動になった。はあ。
玄関からガチャガチャと音がする。あっ、持ち主が帰ってきた。隠れなくちゃ。本棚の裏に走れーー!!
ふう。見つからなくてよかった。もとの姿に戻ろう。
――バフッ。
さて、持ち主の観察開始。持ち主はすごく疲れてるみたい。女の人なのにおじさんみたいな低い声を出すし、独り言をぶつぶついってる。その独り言も「ああ」とか、「疲れた」とかだし、全然情報にならない。
今度はちょっと怒ってる。忙しい人。意外と元気なんじゃないか。あっ、ぼくが抜いたプラグのせいで怒ってるんだ。ううん~ごめんなさい……。
あれ、持ち主どっか行っちゃった。今、探しモノしても大丈夫かも。本棚の裏から出る前に、周りを確認してっと、よし大丈夫だ。
あっ、リビングにカバン見っけ。中に入るか。う~ん。う~ん。手がかりになりそうなものはないなあ。残念。
ん? 足音がする。テレビの裏に隠れよ。持ち主はご飯を食べてるのかな。すごく、いい匂いがする。
――悪魔さま、バンザーイ!! から揚げ、バンザーイ!!
持ち主が意味不明なこと叫んでる。何か変な人だな。そんなにから揚げが好きなのかな。なんだ、お酒飲んでるんだ。酔っ払ってるんだ。酔っ払ってるついでに、何かあの白い玉のこと喋らないかな。
――美味しい!!
食べ物の感想はもういいよ。それにしてもよく食べる人だね。ゴミをまとめてる、食べ終わったんだ。持ち主は片付けのためにキッチンに行って、洗面所で歯を磨いてるみたい。てことは後は寝るだけだよね。
持ち主はベッドのある部屋に行った。
よーし。探しモノの時間だ。もう一回探してみよう。白いキラキラした玉。リビング、ない。キッチン、ない。玄関、ない。お風呂場、ない。
あとは、持ち主が寝てる部屋だけ。もう寝てるかな。扉を通り抜けま~す。寝てるね。あ、ライトがついたままだ。この方が見やすいから、このままで探しちゃお。
ベッドの下って、よくあるんだよね。さっきも探したけどもう一回探そう。う~ん。ない。やっぱりない。さっき探してもなかったもんね。
あっ、ライト消してあげよう。寝る前の運動ってことで、プラグを抜くぞ。
――うんしょ。よいしょ。よいしょ。うんしょ。うん? うわ~~~あ!!
なんで体浮くの。何? 何?
――おじさん、私の家で何やってるの? プラグ抜いたの、おじさん?
持ち主に見つかった。すごく怒ってる。寝てなかったんだ。質問には答えた方がいいよね。「はい」の変わりに、首を縦に振るしかない。
――おじさん、何処から入ってきたの?
そんなことより、早く下ろして!! 手と足をバタバタしたら分かるかな。
――何よ。下ろして欲しいの?
そうだよ、下ろして。
――分かったわよ。
下ろしてくれるんだ、よかった。えっ! どこ行くの? 下ろしてくれるんじゃないの? 部屋出るの? うわ~ん!! 下ろして!
え、ソファ? すごくふかふか……。はあ、今日は疲れた。もう寝よう。