優しさと温かさ
――ピッピピー、ピッピピー、ピッピピー――
「う、るさ、い……」
強烈な機械音で目を覚ました。アラームを止めて、ベッドから出る。寝室の扉を開け、無意識におじさんの所へ向かっていた。
「おじさん、おはよう」
そう言って、ソファを覗き込んだ。おじさんの姿はなかった。そして異変を感じた。ハンドタオルが2枚ともきれいに畳んであったから。おじさんは勝手にいなくなるけれど、ハンドタオルをきれいに畳んでることはなかった。唯一、自分で畳んだのはハンドタオルを背もたれ代わりにする時だけだった。
「おじさん、おじさん、おじさん」
ソファやコンセントの周辺、キッチンにバスルーム、ベランダと、おじさんがいそうな所を探した。でも、どこにもいなかった。なんだか信じられなくて、もう一度家中を探した。靴箱、冷蔵庫、食器棚、調味料のラック、納戸、本棚、洗面所にあるラック、バスルーム、オーディオラック、ベッドの下、クローゼットなど全てを見た。それでも、おじさんは居なかった。
ソファに座り、ハンドタオルを手に取る。
「えっ……」
ハンドタオルがあった場所に――ソファの上に――ムーストーンの指輪があった。指輪を目の高さまで持っていく。それは間違えなく失くした指輪だった。
「おじさんが探してくれたの……」
涙が出そうだった。
おじさん……。
「ありがとう」




