表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

超特急エクスプレス

とにかく早く帰りたいと思う日もあります。なんで人は早く帰ろうとするのか、考えて描きました。

今日はクリスマスイブ。

学校からの帰り道。

いつもの帰り道。でもちょっと違う帰り道。

いつもあいさつしてるおばさんはいない。

学校であそんでいるともだちはもういない。

さむくて、しずかで、暗くて、こわい。


だからぼくは早歩きでかえる。

でも、ときどき、止まる。

足下に犬のうんちが落ちてるからだ。

踏まなくてよかった。ぼくは準特急だ。


「あれ、まさるくん!」

どこからか声が聞こえる。

ふと顔を上げる。ともだちのみさきくんママだ。

「こんな時間にどうしたの?」

みさきくんママの顔は不思議そうに見てくる。

ぼくは、また、下を向く。

そして急発進をして走り出した。

「まさるくん、ちょっとーーーまっ」

みさきくんママの声は聞こえない。

聞こえなくても走り続ける。

こんどは特急だ。速いぞ。


とうぜん、いつまでも走れない。

特急だって駅に停まる。

息を切らしてふと顔を上げる。

いつも通る誰かの家。でっかいお庭がある家。

でも、いつもとちがう。まぶしい。

キラキラしてる。とにかくまぶしい。

こんな大きな家うらやましいな。

ケーキもステーキもローストチキンもなんでも出てきそうだ。よだれがあふれる。溢れるよだれを飲みこむ。

ぼくは下を向く。走る気力も湧かない。

各駅停車になって家まで帰ることとした。


「ただいま」

さっきの家と比べると、だれがみても小さい家。眩しくない。気分も下がる。

「おかえり、まさる」

お母さんの声はいつもと変わらない。

「ごはんちょっとだけまってて。さきにおふろはいる?」

汗をかいたぼくはお風呂に入って考えた。

電車はいつ体を洗うのか。自分じゃ洗えない。

洗ってほしくても伝えることはできない。

電車はいつご飯を食べるのか。自分じゃ食べれない。

お腹いっぱいが幸せな気分すら知らないのかもしれない。

じゃあ人が電車になる意味ってなんだろう。


お風呂からあがると、ガチャンとドアが閉まる音がした。

「ただいま!!」

まさかと、玄関に行ってみると、息を切らしているお父さんがいた。ふだんはこんな時間に家にいない。

「今からパーティーだ!」


リビングに行くと、びっくり。ステーキとローストチキンが並んでいた。3人でテーブルを囲む。

いただきます。


「お父さん、なんでこんなに帰りがはやいの?」

「なんでって、クリスマスだからだよ。」

「なんで汗かいてるの?」

「そりゃあ超特急を使ったからだよ。」

そう言うお父さんにタオルが渡される。

走ってきたことくらいバレバレだよ。

「ねぇ、電車は何が幸せで生まれたの?」

急に口が動いた。シーンとする。お父さんはステーキをたくさん噛んでる。教えてよ。

「そりゃあな」

「運び届けることが幸せなんじゃない?どこかに行きたい人を目的地へ運ぶ。中には行きたくない場所に行かなきゃいけない人もいるけど、その時電車は嬉しくないかもね。」

お父さんが話し出そうとした瞬間、お母さんが口を開けた。なんとなく意味はわかったし、なるほどなと思った。

「さぁケーキ食べるぞ」

お父さんはケーキを買ってきてた。ぼくは喜んだ。喜ぶぼくを見てみんな笑った。なるほど、お父さんは幸せにたどり着くために超特急になったんだ。

「開けるぞ、せーの。」「あれっ。」

崩れたケーキが出てきた。お父さんはびっくりしてすごく大きな声をだした。そんなお父さんと崩れたケーキを見てどこかおかしかった。ぼくも、お母さんも、お父さんも笑った。

「お父さんは超特急エクスプレスだね!」

ぼくが言った言葉の意味がわからなかったのか、2人は顔を見合わせてほほえみあった。

みんなも走る時は気をつけよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ