表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/114

【第106話:星を断つ一閃】

ギギギギギギギッ……!!


機神の**【絶対防御アイギス】と、星喰らいの【極大崩壊波ヴォイド・ブレス】**。 二つの巨大なエネルギーがゼロ距離で衝突し、空間そのものが悲鳴を上げている。 拮抗状態。 だが、分が悪いのはこちらだ。 星喰らいは地球そのものから無限のマナを吸い上げている。対する機神のエネルギーは有限だ。


『警告。アイギス出力低下。……シールド崩壊まで、あと15秒』


セリアの悲痛な声。 盾に亀裂が走り、光の破片が散る。


「くそっ、押し負けるか……!」 「まだだ! まだ折れるなァッ!」


僕とレオンハルトが咆哮するが、機体はジリジリと後退していく。 このままでは、盾ごと押し潰され、蒸発する。 打つ手なしか。


「……おいおい、情けねぇ声出すなよ」


通信機からではなく、直接、頭上の装甲から声が聞こえた。 見上げると、メインカメラの先に彼がいた。 カズヤだ。 彼は機神の頭頂部に立ち、暴風と熱波の中で、楽しそうに笑っていた。


「膠着状態なんて退屈だろ? ……俺が『風穴』を開けてやる」 「カズヤ!? 何をする気だ!」 「決まってんだろ。……あいつの喉奥、一番いいところを斬りに行くだけさ」


彼は腰の刀――僕が渡した錆びた古刀に手をかけた。 魔力障壁もない生身の体。 飛び出せば、余波だけで消し飛ぶ。


「死ぬ気か!?」 「死なねぇよ。……俺は今、最高に『生きて』るんだ」


カズヤは姿勢を低くした。 その全身から、物理法則を無視した「気」が噴き出す。 刀が鞘走る音が、轟音の中でもクリアに聞こえた。


「レイン。……お前が教えてくれた『居場所』ってやつ、悪くなかったぜ」


彼はニヤリと笑い、そして――飛んだ。


「いっけぇぇぇぇッ!!」


カズヤの体が、光の激流の中へ突っ込んでいく。 自殺行為。 だが、彼は燃え尽きなかった。 彼の周囲だけ、エネルギーの奔流が「斬り裂かれて」左右に分かれていくのだ。 魔法も、熱も、衝撃も。 全てを断つ「無明」の剣域。


『ギョッ!?』


星喰らいの巨大な目が、足元に迫る「点」のような異物に気づく。 だが、遅い。 カズヤは既に、ブレスの発生源――星喰らいの口腔内へと侵入していた。


「……見えたぞ、コアッ!!」


カズヤは空中で回転し、抜刀した。 錆びた刀身が、彼の魂の輝きを帯びて、銀色に光る。 狙うは喉の奥。エネルギーが渦巻く一点。


『無明流奥義』――【天元突破ブレイク・ホライズン


ザンッ!!!!!


一閃。 ただの一振りが、星喰らいの喉を内側から切り裂いた。 ブレスの供給路が断たれ、エネルギーが逆流する。


『ガ、アアアアアアアアアアッ!?』


星喰らいが苦悶の絶叫を上げ、のけぞる。 ブレスが止まった。 口の中で大爆発が起き、カズヤの姿が煙の中に消える。


「……カズヤッ!!」 「レイン、今だ! あいつがこじ開けた!」


レオンハルトが叫ぶ。 そうだ。感傷に浸るな。 あいつが命懸けで作った、最初で最後の好機チャンス。 これを逃せば、それこそあいつに殺される。


「……合わせろ、レオンハルト! 全エネルギーを右腕へ!」 『了解ですわ! 盾の出力をゼロにして、全てを推力と剣へ回します!』


機神の左腕(盾)が消滅する。 防御を捨てた。 背中のブースターが、暴発寸前まで唸りを上げる。


「トドメだ! ……この星から出て行けェェッ!!」


僕たちは操縦桿を押し込んだ。 機神が加速する。 音速、超音速、極超音速。 光の矢となった機神が、星喰らいの懐――カズヤが切り裂いた傷口へと突っ込む。


右腕に展開された、最大最大出力の光の剣。 その切っ先が、星喰らいの心臓コアを捉える。


「貫けぇぇぇぇぇッ!!!!」


【機神剣・星穿つ一撃プラネット・ダイバー


ズドオオオオオオオオオオッ!!!!


光の剣が、星喰らいの巨体を背中まで貫通した。 時間よ止まれ。 そう願う暇もなく、莫大なエネルギーが怪獣の体内で炸裂する。


光が溢れた。 北極点の氷が蒸発し、空が割れる。 星喰らいの断末魔が世界中に響き渡り、そして――消えた。


光の中で、僕は見た気がした。 崩れゆく怪獣の破片と共に、満足げに笑いながら落下していく、黒い学生服の少年の姿を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ