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第6話 〜聖剣エヴァン〜

果てしなく続く青い空に、悠然と浮かぶ雲。

仰向けの背中に、冷たいはずのない“水の感触”があった。


「……ここは?…俺、死んじまったのか?」


レオンのつぶやきが空へと消えた。


「立て」


かけられた言葉に身を起こすレオン。


目線の先には、ガイダルとの戦いの最中、突然現れた傭兵風の男。


「あ、あんたは…?」


「見ろ、危機に陥ろうがお前の心は一切乱れていない。足元の湖さえ、波一つ立たん。」


レオンは視線を下に落とすと、自分が深さのある湖の湖面に座っている事に気がついた。


「うぉ!?? なんだこりゃ?……どうなってんの?…なぁここは何処なんだ?」


「お前の戦い方は見るに耐えんな。闘いと呼ぶことも憚られる。」


「俺の質問は全スルーかよ……仕方ねぇだろ!俺は騎士でも何でもねぇんだ!戦いなんてド素人なんだ!」


男は横目でレオンを一瞥した。その視線だけで、背筋に冷たいものが走る。


そして、腰の剣を抜いた。


咄嗟に立ち上がり、聖剣を握るレオン。


鋭い踏み込みで肉薄する男に聖剣で防御をする。


「私はエヴァン、戦い方を教えてやる」


「な!?」


振り抜かれた剣に吹き飛ばされるレオン。


男=エヴァンは、レオンに追い打ちの刺突をする。


ギリギリのタイミングで横へ体を転がし回避する。


エヴァンの剣は岩を貫き、四散させる。


「おい!!教えるならもっと基礎からやりやがれ!!」


「そんな時間はない。実践で学べ!」


こうして、エヴァンとレオンの果てしない戦いが始まった。


腹は減らなかったし、眠くもならなかった。

時間は過ぎて、朝日が昇り、やがて沈む。


ただやる事は一つだけ。


エヴァンと戦うこと。


ーーーーーー


一週間が過ぎた。


心も体も疲弊している。


分かってきたのは、攻撃の避け方。


腕の振り方で剣筋が少し読めるようになった。


ガギン!


硬い金属同士がぶつかり合う音。


「正面から受けるな。力で負ければ終わりだ」


押し負け、蹴り飛ばされる。


「ぐぁ!」


何度も心が折れかけた。


ーーーーーー


三週間が過ぎた。


戦いは続く。


ギリギリの防戦。


エヴァンの攻撃は常にレオンを追い詰める。


ずっと変わらない。


そう、変わらない。レオンの成長に合わせエヴァンは更に上を行くだけだ。


ーーーーーー


6週間が過ぎていた。


「止まるな、レオン。戦場では敵を倒さぬ限り、誰も休ませてはくれん」


「はぁっ、はぁっ……!」


エヴァンの剣が風を切る。


レオンは反射的に身を捻り、かろうじて避けた。


今の自分には、剣を振るう力も技もない。


ただ目で追い、足を動かし、全身で反応するしかなかった。


「剣筋を追え。腕ではなく腰、腰ではなく肩を見ろ。予兆を掴め!」


エヴァンの叱咤と同時に剣が襲いかかる。


次の一撃、さらに次の一撃――。

休息など与えられない。


攻撃が止まれば心も緩む。


だからエヴァンは絶え間なく打ち込む。


対応していくレオンに速力を上げながら、力を強めながら追い込んでいく。


(見える……見えてきた!)


最初はただの構えを見る事しか出来なかった。


だが今は違う。


エヴァンの動きは、より速い動きに変化したか、剣の先が動くより前に、肩のわずかな動きで軌道を察することができてきた。


これまで寝食も忘れ、ただただ延々とエヴァンと戦い続けてきた。


その経験が花開いていく。


足が自然に地を蹴った。


身体が勝手に回避し、瞬間的に反撃へと繋がる。


「――そうだ! それが生き残る術だ!」


エヴァンが声を張り上げる。


レオンの剣がエヴァンに攻め込む。


力点をズラされ、当たらない。


エヴァンの剣も同様にレオンがいなす。


いなした剣で突き放つ。


レオンの攻撃が初めて——エヴァンの頬を掠めた。


「くっ!!浅い…」


渾身の一撃は決定打になっていない。


咄嗟に距離を取ったレオンは再び剣を構える。


しかし、エヴァンは軽く微笑むと一度も崩さなかった戦闘態勢を解き、剣を収めたのだった。


「一撃、入ったな」


血の滲んだ頬に触れながら言った言葉に、レオンは荒い息を吐きながらも、全身に熱が走るのを感じた。


「……はぁ、はぁ……オレ、やったのか?……」


もう、剣を振るう力はないレオンにエヴァンが言う。


「おまえには“見極める眼”と“動き出す瞬発力”がある……よくやった。」


エヴァンの大きな手がレオンの頭をクシャクシャとする。


いつ以来だろうか。


父親の大きな手を思い出した。


 エヴァンの掌に暖かい光が宿り、レオンの傷と疲労が消されていく。


「今は戻れ……………強くあれ……」


目の前が白く弾けた。


――レオンの意識が戦場へ引き戻されるのだった。


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