第12話 〜アルフェンの真実〜
アルフェン魔導研究室
映像記録
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「今日は何をやっているのだね?」
「えぇ、今日は魔力の相殺実験です」
「ほう。魔力の相殺か・・・現在有効なのは神聖魔法による相殺だな。お互いの神魔の力が相反し合い、相殺、各々の干渉した力そのものが消滅する」
「はい、そうです。魔族の軍勢が増大している今、神聖魔法の力がどこまで有効かを見つけたいと思いまして」
「なるほど、魔力増幅器と神聖力増幅器で放射した力を見極めていくわけだ・・・素晴らしい!!とても意味が無くて素晴らしいよ!!とてもくだらない!!!ははははは」
「え?・・・そ、それは?」
「神聖魔法の強度限界測定が目的だろうが、現在の神聖魔法使用者は限られている。君たちエルフか一部の神官たちくらいだ。エルフは決して表舞台には立たないし、神官など人口の1/100にも満たない!!魔族も人も魔術を使うものが多いのだ!!そもそもの母数が違うというのに、どんな役に立つというのだね!!!ははははは!!くだらないよ!!せいぜい頑張ることだ!ははははははは」
「・・・・・・・」
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「それでは1058回目の実験です。魔力想定3200です。大規模破壊魔法クラスになります。皆さん十分な安全確保を」
実験室の中は魔力の奔流と神聖力が混ざり合い各々の力が消滅した。
「おぉ!! 成功ですね!!」
「この魔力クラスでも神聖魔法は対抗できますよ!!」
「・・・!!?は、博士!!あれを見てください!!
研究員の一人が実験室の中を指さした。
そこには今までになかった実験室に窪みができていた。
実験の失敗かと思われたが、担当研究者エルフのセイリンが違和感を覚えた。
直接現場を確認に行くとそこは半径1mほどの円形の窪みに抉られていた。
圧力で押された状態ではなく、文字通り「抉られていた」にもかかわらず、破片や残骸が一切ない。まるで元々なかったかのように、または「消滅」してしまったかのように。
「ま、まさかこれって・・・」
「博士・・・」
「えぇ、魔力と神聖力の対消滅が空間にも影響を与えているんだわ」
「神聖魔法による相殺は危険なのでは??」
「これまでの実験で空間に影響を及ぼしたのは初めてだわ。強大になるにつれて空間にも影響を及ぼすのね。これが理論化できれば凄まじい魔法が作れるわ!!」
「やりましょう!!博士!!神聖魔法を軽視する連中をギャフンと言わせましょう!!」
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「・・・・・・15,000です」
「可視化して消滅魔法として組む時の魔力値が15,000か・・・人間技じゃないわね・・・」
「魔力増幅機を総動員してもこの数値は無理ですよ・・・」
「まって!?・・・圧縮魔法にしたらどうかしら?」
「確かに圧縮すれば総魔力の上限は引き下げられますね。でも圧縮の魔術式を追加しないと使えませんよ」
「やっぱり現実的には無理か…でも、記録はしっかり残していきましょう」
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「魔力と神聖力の融合について……セイリン•エルブン•ライナー」
「お、お母さん!!そんな!!」
映像記録を見たセノン。
映像の人はセノンの母であった。
そこには、生前の変わらない母の姿があった。
「……アルカナ•インフィニタ……か……」
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セノンが研究資料を読んでいる間に、レオンたちは施設内を探索していた。
様々な装置に、至る所に描かれる魔法陣が魔導研究所であると感じさせる。
研究所の最奥、「時空研究室」と書かれた部屋、静寂の中、微かに響く金属音、魔力の低い振動。奥深く、圧倒的な存在感の巨大装置が鎮座していた。
「な、何だこれは……」
驚愕の中、圧倒的な存在感に声を失う一行。
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「セノン、こっちに来てくれ!」
走って戻ってきた レオンが呼ぶと、思考の海に沈んだセノンが意識を取り戻す。
「なに!?どうしたのよ?」
時空研究室に鎮座した装置の表面には古代文字が浮かび、脈打つ魔力が周囲の空間を歪めている。
セノンは震える声で、記録を仲間に読み上げた。
「……これは、かつて烈火の支配者が進軍してきた際に用意された装置だわ…」
ページに残されていた記述によれば、烈火の支配者は明朝には国境に迫り、到達までおよそ五時間と推測されていた。
絶望的な時間の短さ――そこで研究者たちは、禁断の術に手を伸ばした。
時間干渉。
時間を十倍に引き延ばし、国の人々に“二日間”の猶予を与える。
逃げるために。
ただ一人でも多くを救うために。
「……つまり、五時間の間に、国内の時間を五十時間に伸ばしたってことか」
レオンが呟き、皆が息を呑んだ。
「でも、それだけじゃないわ。この研究所の厳重なロック……あれは“魔王の城への入り口”を突破するために仕掛けられたものだったみたい。」
魔王に抗うための砦。
しかし、皮肉なことに装置は制御を失い、大地の魔力を吸い上げ続けてしまった。
結果、この国は時間を歪め、百年の廃墟を“千年の荒れ果てた遺跡”へと変貌させたのだ。
「……だから、誰も真実を知らなかったのですね」
エリシアの言葉に、一行はただ沈黙した。
かつて命を懸けて民を守ろうとした者たちの想いと、その結果生まれた歪みの重さに。
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そして、資料室へ戻ってきた面々。
「……これからどうするんだ?」
「そうね。ここでじっくりと50年くらい研究したい所だけど、人間の変態勇者はそんな時間もないし、旅をしながら研究するわ」
「おい、おい…こんなに本ばっかり運べないぜ」
「大丈夫よ、記録水晶に全部ぶち込んだから問題ないわ」
「抜け目がねぇなぁ」
とりあえず、地上に戻ることとなった。
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「…はぁ、はぁ……この階段は…もう…登りたく……ないわね!!」
「…流石に…大変ですね……」
「まだまだじゃのう!気合が足らんぞい!!」
そう言って、ガイダルは肩に乗せ、ズンズンと歩き出した。
「わぁ、これは良いわね!楽ちんだわ」
「えっと…スミマセン」
「がーっはっはっは!!」
豪快なガイダルがドンドン登っていく。
「はぁ…はぁ…あれ、いいなぁ…俺達の事も担いでくんねぇかな?」
「いやいや、それはねぇだろ。レオンよぉ、少しは勇者のプライドを持とぅぜぇ?」
もう、間もなく地上と言うところで……
ドドドドドドド!!!
全員を物凄いプレッシャーが襲う。
「な、なんだ!!?」
階段を走って登る面々。
地上に出ると黒い甲冑とマントを羽織った男が立っていた。
『アルフェンに魔力の奔流を感じて来てみれば…なんてことは無い羽虫だったか』
「な、何なの!?このプレッシャーは??」
「なんだかんだ言ってる場合じゃねぇだろ!!コイツはやべぇ!逃げるしか無いだろ!!」
レオンがエリシアやセノンの前に躍り出て、聖剣を構えた。何とか後退のチャンスを作ろうと考えていた。
『ほう、エヴァンか…久しいな。ではお前が新たな勇者か…くふふふ』
ジリジリと後ずさりをする勇者一行。
しかし、攻撃する隙も退く隙も見いだせない。
『勇者には敬意を払わなければな…我は「魔王ゼノス」である!!!』
第2章もありがとうございました。
次回、第3章突入します。お楽しみに!!




