第11話 〜魔導研究所〜
地下への扉開放の翌日…
地下階段に降りる入り口に5人の影があった。
「さぉ!行くわよ!!」
鼻息荒く先頭に立つセノン。
「すっかり元気そうだぞい!」
「はい!そうですね!」
「ん?嬢ちゃんも、なんかいい事でもあったんかい?」
いつも以上に笑顔がまぶしいエリシアの雰囲気にカインが声をかけた。
「え?えぇ…まぁ……そうですわね」
ある意味自分探しの旅と言う目的を持ったことで吹っ切れたエリシアは、とても魅力的に見えた。
「……そんで? 勇者様はなぁんでそんなに覇気がねぇのよ?」
「あ、あぁ…朝から目眩と吐き気が…うぅぷ…」
「だ、大丈夫ですか? レオン様…」
顔面蒼白のレオンに駆け寄るエリシア。
「しょうがないわね〜。ちょっと見せてみなさい」
研究者のセノンは少なからず、医学にも精通していた。しかし、医者とは違う分、魔力によるサーチが基本診察となる。
「あ〜、これは魔力にあてられたんだわ」
全員の頭に?が浮かんでいた。
「昨日の解錠であたしの前に出て魔力の本流をモロに食らって体内のバランスが崩れてるのよ。
まぁ飲みすぎて二日酔いみたいな感じかしら」
「大将がこれじゃ、今日は無理じゃねぇか?」
カインの言葉に軽くため息をついたセノンが言葉を続けた。
「しょうがないわね……探索は延期だわ……魔力にあてられたときは、神聖魔法が効果的よ。魔力を打ち消してくれるから楽になるわ。エリシアに治してもらうといいわね」
エリシアに視線を向けてウインクするセノン。
エリシアはセノンの仕草に、早速、自分が役に立てる事があるのだと、心の底で歓喜した。
「は、はい!!任せてください!!」
こうしてレオンの治療で、地下探索はもう一日先送りされるのだった。
ーーーーーーーー
吹き抜ける風が前髪を揺らし、その心地よさに目が覚めた。
窓から見える外の景色は日が傾き、夕方であることがわかる。
エリシアに「寝てください」と言われ横になってから随分経ったようだ。
「あ、起きましたか?レオン様」
レオンの覗き込むようにエリシアの顔が見える。随分近い。
意識がはっきりしてくる中で、頭の下が随分と柔らかいように感じた。
レオンはエリシアの膝枕で眠っていたのだった。
「わわ!! 悪い!」
跳ね起きたレオン。ハーレムをと言っている割に、サプライズラッキーには動揺してしまうようだ。
「魔力酔いも治ったようで良かったです」
「あ、あぁ。 ありがとぅ...じゃあみんなの所に戻ろうぜ。」
頬を掻きながら礼を言うレオン。
「あ、待ってください!レオン様...私、実はお伝えしたいことが」
「え? あ、あぁ。どうしたんだ?」
「その、実は......どう伝えるべきか......その私、レオン様の事......」
顔を赤らめながらそう口にするエリシア。
レオンはエリシアの表情からすごく大切なことなのだと感じた。レオン自身も鼓動が早くなる。
「レオン様の事......レオン様の事!!」
鼓動が高まる。
のどが渇く感覚がレオンを襲う。
「膝枕してたら足が痺れてしまって動けないんです......]
ズッコケるレオンと頭に手を当てながら舌を出すエリシア。
漂っていた緊張感がなくなり、笑いが空間を支配した。
ーーーーー
翌日、全員が揃って地下への探索へ向かう事となった。
レオンが先頭でセノンが二番手。
エリシアを挟んでガイダルが全体を守り、殿はカインが務めている。
階段を下り続けているが、ライティングの魔法を使わずに通路は明るいままだった。
このことに違和感を覚えたのはセノンだけだった。
「なあ、これなんだ?」
先頭を歩いているレオンが定期的に壁に付いているドーナツ型のオブジェを指差した。
「魔力増幅装置ね。魔力循環器に増幅魔法陣を組み合わせて、使い回した魔力を増幅させて再利用しているのよ。ある意味永久機関だけど、消費量が一定じゃないと使えないわ」
「「「????」」」
「え、え〜と、どういうこと??」
「あぁ〜ここは地下だけど明るいでしょ?普段なら魔法石の魔力灯やロウソクやランプなんかを使うけど、これって結構、交換が必要なのよね。でもこれを使うといつまでも明るいままに出来るってわけ」
そう、地下探索のためにランプを準備していたが、今も使用していないのだった。
階段を進み始めて10分ほどたったであろうか。
「長いな…」
これまでずっと下り続けている。途中でどこかに扉でもあったのではと考えてしまう。
「あ!あれは!?」
エリシアが奥に見える扉を指さした。
扉の上には「魔導研究所」と書かれていた。
アルフェン研究施設――入口の自動ドアが静かに開く。
「な、なんだ!勝手にひらいた!?」
扉に手をかけようとしたレオンが慌てて退く。
特に罠のようなものは存在しないようだった。
しかし、研究所に登録された魔力反応を持たぬ者たちが足を踏み入れた瞬間、空気がひんやりと変わった。微細な振動が床を伝い、光の粒がまるで警告のように瞬く。
「――警告。未登録魔力反応検出」
「な、なんぞ?」
「来るぞ!!気ぃ付けろ!!」
ガイダルとカインの言葉が響く中、天井が開き、黒い巨体が落ちてきた。
「ご、ゴーレム??」
「違うわ!岩のゴーレムじゃない!!これは・・・自動人形よ!!」
戦闘用オートマタがゆっくりとその巨体を動かす。
鋼鉄の関節がきしみ、胸部の魔力回路が赤く脈打つ。人の形をしていながら、その存在感は人間の比ではない。
眼光のように鋭い魔力の閃光が侵入者を貫く。
「――排除対象確認」
オートマタの腕が振り下ろされ、床が震動する。
レオンは聖剣を構え、攻撃を迎え撃つ。
衝撃が伝わるたびに、筋肉と神経が痛みを訴える。
ガイダルは盾を掲げ、カインは影を駆使して攻撃を分散させる。
オートマタの振り回した腕がレオンたちを吹き飛ばす。
「ぐはっ!!?」
背中から壁に当たり、一瞬呼吸が止まる。
苦悶の表情の中で、構えをとるレオンたち。
火花と魔力の閃光が交錯する中、オートマタは精密に動き、隙を与えない。
それでも、レオンの鋭い判断と集中力が仲間たちの連携を生んだ。
突き立てた聖剣が首の関節に入り、ついにオートマタは停止した。
巨体は床に崩れ落ち、関節から煙が立ち上る。
「……ふぅ」
息を整える間に、受付端末が静かに起動する。
青白い光が床と壁を照らし、登録魔力の投入を待っている。
セノンを先頭として調べた後、魔力パターンの登録で安全に施設の探索ができる事がわかった。
「みんなココに触れてちょうだい」
端末の画面へ手を触れていく一行。
すると…
案内役のオートマタがゆっくりと姿を現す。
戦闘用とは違い、流線型の装甲と柔らかな曲線が印象的だ。
無表情ながらも優雅な動作で、静かな声が響く。
「ようこそ、アルフェン研究施設へ。内部を案内いたします」
オートマタに付いて行くと、「実験室」や「資料室」、「増幅室」と様々な部屋があった。
セノンは資料室に入り、埃を被った巻物や古い魔力結晶を一つずつ手に取る。
紙の感触、結晶のひんやりとした冷気が、百年前の研究者たちの存在を想起させる。
彼女の指先が古い魔法式を辿るたび、目は知識への渇望で輝いた。




