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Journey to おたま

踏みしめていたはず地面がない。

リカは自分が落ちていることを理解し、とっさに身を固くした。

『ここで終わりなのかな』


おたまに謝ることも、元の世界に戻ることもなく、

己の過ちの責を背負い死んでいく。これが罪と罰なのか。

『協力してくれた3人に申し訳ないな』



ドサッッッッ………



力を入れて目を閉じた瞬間、鈍い音が洞窟に響いた。

体のどこかが割れるように痛い。どうやら無事であるらしいが、

到底起き上がれそうにないので、丸くなって痛みをやり過ごすことにした。



ドッッッッッッッッ…………

『!?!?!?』



「大丈夫か!青山!!!!!!」


もう1つの鈍い音と、馴染みのある大きな声。

「ま……ちだ…………?」


まさか追ってきたのか。そして無事だったのか。

この深さの洞窟に元スポーツマンは着地してみせたのか。


うまく声が出せないリカの息遣いに気づいた町田が顔を寄せる。

「よかった、生きてる!痛むところはないか?

 鈴本さん!青山生きてます!!!」



もうろうとした意識に町田の大きな声が響く。

『うるさい……』

リカのせいで町田を巻き込んでしまったことに対する申し訳なさが大半、

この深さの洞窟をすぐに追ってきたことに対する呆れが少し。


でも、暗闇にひとりじゃない。


洞窟の外にいる鈴本・会長と町田が話しているのを感じながら、

体を休めること数分。リカはようやく頭と体が動かせるようになってきた。


「あ」

そうだ。洞窟に落ちる直前、暗闇の中で何かが光って見えた。


「どうした?青山。動けるか?」

「洞窟の奥で何かが光っていたの。……ちょっと行ってくるから待ってて!」

「いや安静にしてろ……ってちょっと!!」


リカは痛む足をかばいながら洞窟を進む。

まだ光が届くギリギリの場所。思った通り、何かが光っている。

「ネックレス……?」


岩の上に乗った小さなそれは、歴史の教科書で見たような古いデザインの貴金属だった。

ひどく砂埃をかぶってしまっているが、一部が光を反射している。

これはいったい何なのか。土を払ってよく見たい。


恐る恐るリカがそれに触れた瞬間、世界は変わってしまった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




ワアアアアアアアアアアア!!!!!!

ザッッッザッッッウオオオオオオオオ



これまで体験したことのない、ものすごい騒音に目を覚ますと

リカは戦場の最中にいた。

「どこ……?」


あちこちで舞う砂煙。大勢の足音と叫び声。

また別の世界に飛ばされてしまったのだろうか。

混乱する中辺りを見渡すと、銀色のお椀に取っ手がついたような形をした生き物がたくさん宙に浮いていた。彼らは武器を手に、天に地に罠を張り、戦場を駆けまわっている。

よく見えないが、遠く先には人間らしき大きな兵士たちがもみくちゃになっていた。


『これは、おたまの乱……?』

まさか。


4世紀に起きた、お玉たちの戦い。

お玉が力を失い、この世界から『おたま』が消えたきっかけの。


……逃げるべきか、戦うべきか。お玉の仲間なのか、人間として戦うのか。

初めて見たお玉の姿に感動する余地もなく、リカは次の行動を決めなければいけなかった。


『いや、考えるな』

ここは戦場の最中だ。立ち止まっていては判断の前に巻き込まれてしまう。

とりあえずリカは生きるため、手近に落ちている剣を拾おうとした……拾おうとした……が。


「拾えない?」

剣が何度も手をすり抜けていく。


リカは急いで自らの頬を引っ張る。「痛くない」

夢か。……少なくとも今回は体ごと飛ばされたのではないらしい。



『!?!?!?』



突然、リカの意志と反して視界が動いた。空を舞い、猛スピードで戦場の中心部へと駆けていく。


この世界にリカの実体はなく、お玉の意識に憑依しているようだ。

体の持ち主から、悔しさと怒りと使命感の混ざった重い悲しみが伝わってくる。


戦場を進むうちに、眼下に本陣のような場所が見えた。中心部にはひときわ輝くお玉。リカの憑依しているお玉の目的地のようで、リカは舞い込んでいった。


「我々は勝たなければ。我々が生きていることを、認めさせるために」


噛み締めるように呟くお玉(輝くおたま)と首を垂れる側近のお玉たち。お玉たちの首元には色分けされたリボンが巻かれている。人間と同じく役割や階級があるのだろうか。


「我々は勝たなければ。ともに過ごした日々が美しくあるために」


(というか、どうやって巻いてるんだあのリボン……?)


そんなことを考えていると、側近の1人と目が合った。

「え」



ピカッッッッッッッ



目の前が真っ白になった。


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