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聖女召喚に巻き込まれたけれど、肝心の聖女様がヒャッハーしたので、代理聖女やってます――どうしてこうなった

作者: 赤城ハルナ

よくある聖女召喚に巻き込まれたわたし。ところが肝心の聖女様(ヨーロッパ系女装男子)がヒャッハーして神殿から逃亡してしまった。聖なる力が弱いため聖女見習いとなったわたしだが、その後なぜか『聖女』として神殿に仕えることになってしまったのである――どうしてこうなった。

『聖女召喚』に関する小説を、思い付きで書きました。突き詰めるとBLになってしまうので、短編止まりにしました。渋谷の事務員系ヒロインはストーリーテラーという立ち位置です。

ヒロインは、聖女様は女性だと思っていた時は『お姉さん』、男性と分かってからは主に『おねいさん』と呼んでいます。

よくある聖女召喚に巻き込まれてしまいました。


❖ ❖ ❖


うわっ、これってあの『聖女召喚』!? わたしの周りに光がっ!

違った、わたしの目の前に光が。

その中心には背が高く金髪ロン毛なピンク色ノースリーブロングワンピのお姉さん。両手を上下してだいぶ困惑しているわ。ヨーロッパ系だね、美人さんだね。デルモ系だね。

だいぶ筋肉質な感じはするけれど?


あっ、この人見覚えがある。仕事帰りに某渋谷の交差点ですれ違った人だ。ものすごく目立つ人だったから何となく覚えていたわ。


すると周囲から叫び声が聞こえてきた。

「聖女様!」

「いらして下さったんですね!」

「あぁ、ありがとうございます!」


ハイハイ、目の前の人が聖女様ね。


「あsdfghjkl;:!」

金髪ロン毛のお姉さんがバンザイしながらしきりに叫んだ。言語は何だろう。それに、声が低くて太くない?


で、わたしは?


「あなたは――?」

きょとんとしているわたしに気付いた神官さん(?)が言った。


わたしが聞きたいんだけど?


「どうやらもう一人召喚されたようです。ですから二人とも聖なる力の鑑定をしましょう」


一番偉そうな神官さん(?)に連れられて、わたしと金髪ロン毛のお姉さんは鑑定室で聖なる力を鑑定されることになった。金髪ロン毛のお姉さんはハフハフ興奮しながら鑑定盤を覗いている。相変わらず両手を上下させて。


――この人本当に聖女なの?


鑑定の結果、お姉さんは本物の聖女さんでした。お姉さんが鑑定盤に両手をかざしたとたん、部屋中をまぶしい光で満たしたから。

わたしは――LED電球ほど光ってチョットだけ聖なる力があるとなったので、『聖女見習い』ということになりました。聖女見習いとは?


いやいや、見習いでも聖女とかやりたくないんですけど。

一日中聖なる力を使って人々を癒し、浄化(?)をしなくてはならないんですよね? お給料とか勤務時間とか休日とか有給とか、住まいはどうなっているんですかね?

ブラックなら目も当てられません。


「では聖女様方、こちらへ」と偉そうな神官さん。


――ところが、金髪ロン毛のお姉さんがいきなり『ヒャッハー』と叫んで鑑定室を飛び出した。その声はまさしく男の声! しかもよく見たらワンピから出たナマ足に脛毛がびっしりあるじゃんん?


「「「!!」」」


おねいさん、男だったんかい! 女装男子だったんかい!


「お、お待ちください、聖女様!」

神官さんたちが引き止める間もなくおねいさんは逃亡してしまった。何という足の速さ。女装アスリートかな?

「聖騎士団の皆さんに聖女様の保護をお願いしてください!」

あ、そうね、聖騎士団ね。よく聞くわ、神殿の守護騎士団でしょ。やっぱりここは神殿なわけね。


「はぁ……」

ぽつんと残されたわたしは……。


* * * * * * * * * *


「聖女見習い様、本日からこの神殿が保護いたします。これから我々聖国のために聖女様のお仕事を覚えていただきたく存じます」と、偉そうな神官さん。

「はい、分かりました」


ハイハイ、了解です。上司の言うことを(一応)聞く日本人のわたしは素直にうなずき、聖女の仕事を覚えることとなったのである。


聖女召喚に巻き込まれ組とはいえ、わずかなりにも聖なる力があるわたしの待遇は思ったよりも良く、衣食住は神殿の宿舎の一室を割り当てられた。簡単なキッチンにリビングルームとベッドルームがある2DK。何と宿舎でも二番目に豪華な部屋だった。もちろん一番豪華な部屋は聖女様用。


男でも聖女なんだな。


ちなみにおねいさんはまだ見つからないらしい。


翌日から聖女見習いとしてのわたしの教育が始まった。しかも側使えという女の子が二人もわたしの世話をすることになった。わぁ、見習いなのにすごい。


早朝起床、二人の女の子によって洗顔・丁寧なブラッシング(わたしもロン毛です)・聖女服の着付けをされ、運ばれた簡素な朝食を摂る。

聖女服は5、6枚の衣服を重ねる仕様で、一枚でも重ね方を間違ってはいけない。そこで着付け係が必要なのだとか。晴れ着みたいだな。毎日これを着なければいけないの?

次に神官さんたちと一緒に祈祷、聖女の仕事のお勉強、簡素なランチ、またお勉強、祈祷。

夕方になると自室に戻ってまた女の子たちによってかいがいしくお世話される毎日。


ちなみにおねいさんはまだ見つからないらしい。

交代で聖騎士団が捜索をしているとのこと。


そんなこんなで10日ほど経った頃、この国の王子様(?)が神殿を訪れた。


「申し訳ありません。聖女様はまだ見つかっていないのです」

「聖女様にお会いしたかったけれど、残念です。また来ます」

黒髪ロン毛のイケメン王子様がガッカリして帰って行った。


聖女様に期待しているんだろう、王子様と聖女様って結婚することが多いものね。でも聖女様は男なんだけど。BL世界ならそれもアリだけど。わたしには関係ないことだからどうでもいいけれど。


しかし次第に、自分には関係ない、どうでもいい、という考え方が通じない事態になってきた。


相変わらず聖女様は見つからないのだ。

神殿はかなりあせっている。日に日に聖女としてのわたしへの教育が厳しくなる。

おねいさん、恨む、恨むよ。


一か月ほど経ったろうか、ある日神殿へ驚愕の知らせが届いた。

「神官長様、三日ほど前、かの荒廃地が突然浄化されました!」

なんと、神官も聖騎士団も派遣していない、かねてから懸案されている不浄の土地が前触れもなく浄化されたというのだ。さっそく神殿の調査団が派遣された。


へぇ~、そういうこともあるんだね、と感心していたのだが、調査団の報告によると、何日か前金髪ロン毛のお姉さんが荒廃地に出現して両手を上げながら走り回っていたという目撃情報があったとのこと。


「それは……聖女様が聖なる力をお使いになったのでしょうね」と、偉そうな神官さんが遠い目をして言った。


その後二度三度そんなことがあった。


それはあれだ、おねいさんはヒャッハーしたあと諸国漫遊の放浪旅に出、気ままに聖なる力を放出しているに違いない。


ちなみにおねいさんはまだまだ見つかっていない。

あんなに聖騎士団を捜索に駆り出しているのに。

噂では、おねいさんは隠蔽魔法を使えるらしい。

おねいさん最強。


この頃偉い神官さんから聞かされたのだが、聖女召喚をしたときに二人やって来たので、スキルが二分されたというのだ。

おねいさんには聖女としての聖なる力と隠蔽魔法を始めとした防御魔法を。

わたしには言語スキルとおこぼれの聖なる力を。

なので、おねいさんはこの世界の言語はわからないそうだ。


それ、早く言ってよ!

……まあ、早くにその事実を言われても現状は変わらなかったわけなのだが。

おねいさんの言語能力は本人の努力次第で何とかなるけれど、わたしの聖なる力は増えそうもないから。一歩間違って力が増えたら余計な仕事を与えられそうだものね。それは避けたい。言われたことを淡々とこなす職員のような現状が自分には合っているのだ。


「はぁ……これからわたしはどうなるんだろう」

不安で仕方ない。


* * * * * * * * * *


その後わたしは聖女見習いから正式に『聖女』へ格上げされた。


普段は神殿で、時には巡礼という形で、神殿から教わった通り(わずかな)聖なる力を駆使して人々を癒している。相変わらず力は弱いので浄化は無理だけどね。そこはあのおねいさんが気ままにやっているので、神殿としては問題ないことにしたらしい。


土地の浄化はおねいさんの気まぐれに委ねられたのである。


いいのか、それで。


ある目撃情報によると、おねいさんはマッチョな勇者と国内外問わず放浪の旅をしているらしい。神殿はおねいさんを連れ戻すことをすっかりあきらめたみたい。

以前は神殿に足を運んでいた王子様も、どうやらあきらめたみたい。


某渋谷で日々まじめに事務仕事をしていたように、言われたことをもくもくとこなすわたしは、神殿にとっては都合が良かったんだろう。神殿はわたしに今後の予定を事務的に伝えてくる。衣食住・お給料・勤務時間・休日(週一+神殿の祭日と建国祭)・有給(適宜・神殿の保養所なら無料で使える)と、それなりの待遇をしてもらっているので、今のところ文句はあまりない。強いて言えば娯楽がない。


あれっ、これはハッピーエンドなの? わたしは一生神殿に縛り付けられるの? 契約完了とかないの?


神官さん、できましたらわたしに優良物件なダンナ様候補を見繕っていただけませんか?


* * * * * * * * * *


あれから一年。

おねいさんの側にはパートナーの冒険者の他に、神殿が秘密裏に派遣した冒険者がうろついている。

判明したおねいさんの名前は『ミカ』だった。

因みにわたしの名前は『ミコ』と言います。

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