番外編 シロと愉快な仲間たち〜松波翔太〜
書き上がったので、投稿します。
書きだめるみたいなことを、言ってましたが、嘘つきました。
ごめんなさい。
「松波、彼女がお前のバディになる松前薫だ。カオ、こいつは松波翔太。シロが勧誘して、回収にきた新人だ。面倒を見てやれ」
「あら、シロが?」
好奇心を露わに意思の強そうな目が俺を見たっす。それほど背は高くなく、肩口にあたるくらいに切り揃えられた髪がよく似合う、美人秘書って感じ。
これで縁無しメガネでもかけて、クイっと上げてくれれば完璧っすね。
「初めまして。私は松前薫。カオって呼んでね」
「は、初めまして!松波翔太っす。よろしくお願いしまっす!」
「……っす?」
「あ、すんません!直そうと思ったのに、出ちゃったっす……いや、えと出た!……デス」
「アハハッ、君面白いねぇ。気に入った。改めてよろしくね」
大きく口を開けて笑う笑顔に見惚れたっす。兄貴もカッコいいけど、カオ先輩もカッケーな。
「午前中は、社内の細かなルールと段取りを教えろ。午後からは早速仕事に取り掛かってもらう」
「相変わらずの鬼畜振りで」
「問題ないよな」
「ええ。大丈夫よ。何の問題もないわ」
二人して笑顔だけど、なんか怖いっす。
「顔合わせは以上だ。森の所へも忘れずに連れて行けよ」
「はいはーい。行こっか翔太」
「はいっす!」
苦虫を噛み潰したような顔をする部長に頭を下げて、カオ先輩と部屋を出る。
「ホントタヌキ親父。食えない男よねぇ」
「えーと」
同意を求められても困るっす。視線を彷徨わせる俺にクスクスとカオ先輩が笑う。
揶揄われてるのは分かるけど、心臓に悪いから止めて欲しいっす。
「私ね、シロのバディしてたのよ」
シロのバディ……兄貴じゃなかった?
「何事にも一生懸命で、すっごく可愛かったのよ。最初見た時なんて『天使かよ』ってテンション爆上がりよ。特にあの子の感情に併せて動く耳と尻尾!最強で最高よね。失敗して落ち込んだ時のへにゃってなった耳と尻尾プラス潤んだ目で見られた日にはこのまま昇天しても悔いはないくらいの可愛さなのよ!バディで常に側にいられたからそれが特等席で見られた訳。触り放題で覗き放題よ。可愛いシロのアレコレは全部私のものだったの!あんまりにもしつこいから、仕方なしに交代してやったけど、ずぅーーーっとなんて言ってないわよ!」
感情に任せて話してるせいか、どんどんと声がでかくなるカオ先輩に引く。途中、犯罪者のようなセリフがあったのは、気のせいだと思いたいっす。
確かに、シロの耳や尻尾は可愛いし、似合ってるとは思うっす。でも、そこまで共感は出来ないかなあ。口が裂けても言えないっすけど。
うううぅぅっと、低く唸ったカオ先輩からゴゴゴッて何かが吹き出した気がしたっす。
――ハッ、もしやこれが研修中に聞いた黒モヤ?でも黒いモヤモヤは見えない。違うのかな?
「あんの筋肉バカ!もう悔しいったらありゃしない。シロとまたバディを組むつもりだったのに、あのバカが拒否したって拒否したって………許しがたし!!」
「えと……なんかすみません」
拳を握り締めるカオ先輩にビビって後退る俺に「なんで翔太が謝るの?」と、半笑いの目が怖い。
「お、俺がバディになったか、ら?」
「いい?翔太。翔太は全然悪くないの。確かに!シロとまたバディを組むつもりでいたわ。拒否ってなんなの。拒否って!はあ?ふざけんなって気持ちよ。でもね、このことに翔太は関係ないの。全てはあのバカのせい!それに、翔太は気に入ったって言ったでしょ?」
「あ、はい」
「こんな扱きごたえのありそうな新人、あのバカに渡すのも癪だわ」
不穏な言葉が聞こえたような気もするけど、ニヤリと笑うカオ先輩はやっぱりカッコいい。
コロコロと変わる表情の変化が、カオ先輩の魅力っすね。
「お手柔らかに?」
「私の辞書にそんな言葉はないわ」
キッパリハッキリと宣言されて、冷や汗が出てきた。
ヤバい、俺死ぬかも(死んでるけど)
主にシロの可愛さを永遠と語り続けるカオ先輩と(もうお腹いっぱい。勘弁して欲しいっす)暫く廊下を歩き続けると、一つの扉の前で止まった。
「はい、到着。ここが備品庫よ。ここに務めるほぼ全ての人間がお世話になる場所。ちゃんと場所を覚えてね」
「はい」
プレートには『備品庫』。その扉を開け放ち、中に入った。
「――お?久しぶりだなカオ。復帰か?シロがえらい心配してたぞ?」
思ったより広めの部屋にカウンターがあり、その中に頭を短く刈り上げた中年の男性がいて声を掛けてきた。ちょっと目付きが悪くてヤバい商売の人みたいだけど、中々渋いっすね。
「今日から復帰よ。この子は私の新しいバディ。松波翔太よ。新人だから勝手が分からないと思うの。色々と相談に乗って上げてね」
「松波翔太っす。よろしくお願いしまっす」
「おう!よろしくな。俺はここを任されてる森だ。あと、何人かの従業員で回してる。皆んな頼りになる奴らばかりだから、困ったら相談に来い。カオの悪口でも愚痴でも何でもオッケーだ」
「失礼な男ね。――口は悪いけど、一応責任者よ。あと一人サブの奴がいるわ。まあそいつは無視でいいわ。
無視でいいわ?
「相変わらずだな。喧嘩するほど仲が良いとは言うが」
「止めてよ。鳥肌が立っちゃうじゃない」
苦笑する森さんに、カオ先輩は顔を歪めて腕を擦った。
「あいつも全くおんなじ反応してたぞ」
「お互い心底性に合わないのよ」
感性が似通ってるとか?お互い似た者同志?それだと、キッカケがあれば驚くほど仲良くなりそうっすね。
そんなことを考えていると、カオ先輩がいきなり振り返り、キッと睨み付けてきた。
な、なんすか。
「あんた余計なこと考えてるんじゃないでしょうね」
マジで怖いっす。
ぶんぶんと必死になって首を振ると「ま、いいわ」と視線を外す。
ひー怖かったっす。ヤバいっすね。触らぬ神に祟りなしっす。
そんなやり取りをしてると、いきなりバンッと扉が開いた。
ヒュッと心臓(あるのかな?)が縮み上がって二、三センチ飛び上がったっす。
な、なんすか次は。
「カオさん!!」
扉から勢いよく飛び込んできたシロが、カオ先輩を見とめ、うるうると目を潤ませる。
「どうして教えてくれなかったの?ぼ、僕…カオさんが来てるって、せ、先輩に聞いて…びっくりしたんだから……」
「ごめんね。連絡しようと思ったんだけど、驚かせたくて内緒にしたんだ。サプライズ成功ね」
「バカ!」
ゔゔぅと、呻き声を上げると、シロはカオ先輩に飛びついた。
今までで一番の笑顔を見せると、シロを抱き止める。
ヨシヨシと頭を撫でるカオ先輩は、何故かあとから入って来た兄貴にドヤ顔をして、渋面を浮かべる兄貴にザマァと口を動かした。
――カオ先輩、大人気ないっす。
「松波くん!今日仕事終わったら歓迎会だから。予定入れないでね」
「歓迎会!!了解っす。それ楽しみに仕事頑張るっす」
「うん。カオさんも、復帰おめでとう会だから予定あけててね。・・・あ、安西さんも来れるなら声かけてね」
「あいつは・・・いいかなぁ。邪魔だから」
カオさん、安西さんが可哀想だから。




