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「そのあと、処分が決まっていた僕を助けようとしたのはどうしてですか?先生に聞きました。僕を助けるために、裁判に乗り込んでくれたって」

「最初は罪悪感だ。俺の見込みの甘さがお前を苦しめる結果になって、今度はなんとしても助けてやりたいと思った。それに……また、あの笑い声が聞きたかった。幸せなお前を見たかったんだ。回収でお前に再会して、愉しげなお前を見るたび、良かったと思ったよ。でも、その内に俺が笑わせてやりたい。傍に居たいと思うようになっていった。お前が、辰やほかの奴らに構われているのを見るたびに腹が立って仕方なかった。当然のような顔をして、お前のバディをしていたカオにも腹が立っていたんだ」

「だから、僕を睨んでいたんですか?」

「睨む?……睨んでたのはお前の方だろ」

「違う。僕は宝来さんが睨んで来るから、睨み返していたんです」


 僕はずっと嫌われていると思っていたんだから。


「お前を睨んだ覚えはない。さっきも言ったが、周りの奴らに腹が立っていたんだ。睨んでたのは、シロに構う奴らに対してだ」

「僕じゃない?」

「当たり前だ。何でお前を睨まなきゃならない」

「知らないよ。だって、僕はずっと宝来さんに嫌われていると思っていた。訳も分からず睨み付けられて、結構、凹んでたんだから」


 ムッと口を尖らせる僕を、宝来さんが抱き締める。


「悪かった。俺の方が嫌われていると思っていた。イヤな思いをさせたな」

「僕……宝来さんが好きだよ」

「……大好きじゃないのか?」

「え……?」

「カオは大好きなんだろ?俺は好き止まりなのか?」


 生真面目な顔で僕を見据える宝来さんを、僕はキョトンと見返した。


「大好きじゃないのか?」


 再度問われ、思わずプッと噴き出した。


「笑いごとじゃない。大事なことだ」


 不機嫌な声で返されて、僕は慌てて顔を引き締めた。


「大好き」


 緩む口元を宥めながら、僕は宝来さんの頬にキスをした。


「お前が好きだ」


 熱っぽい目をして宝来さんが僕を見つめる。僕の頬を撫でる手が優しい。その手に擦り寄り目を閉じれば、柔らかな唇が僕の唇を覆った。

 押し付けるだけのキスを何度も繰り返した。それだけで、胸の奥が暖かな温もりに包まれた。


「正式に、恋人になってくれるか?」

「本当に僕でいいの?」

「シロがいいんだ。お前以外の奴はいらない」

「でも……僕はきっとめんどくさいよ?」


 愛情を信じ切れないくせに、際限なく相手に求めてしまうだろう。


「面倒なのは、俺の方だろ。安心しろ。逃すつもりはない」

「僕は……逃げたりしないよ?」

「なら、何の問題もないな」


 そう言って笑った宝来さんは、僕の頭をヨシヨシと撫でる。


「子供扱いは止めてください」

「頭を撫でられるのは嫌いか?」

「……好きです」

「俺がか?」

「俺も、ですけど、頭を撫でられるのが、です」


 上出来だと、宝来さんはまた頭を撫でる。ついでのように耳元を揉み込まれて、ふにゃりと体から力が抜けた。


「宝来さんの手は何だかスケベです」

「褒め言葉だな」

「褒めてません」


 プルプルと頭を振って、手を振り払った。


「スケベな俺は嫌いか?お前にいやらしいことをしたら、軽蔑するか?」


 眉尻を下げて弱った顔をする宝来さんが、何だか可愛い。僕の尻尾が、僕の気持ちに反応して揺れ動く。


「嫌いになんてなりませんよ?軽蔑なんてしません。どれだけむっつりスケベでも、大好きです」


 ニコリと笑う僕に、宝来さんはとても複雑な顔をして笑い返した。


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