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本編です。
医療系は想像です。
間違ってたらごめんなさい。
よろしくお願いします。
医務室で頼子先生に診てもらったあと、僕たちは部署へとんぼ返りした。
結果は異常なし。
僕も少しは耐性がついたのかな?それともやっぱ、鉄壁の防御で守られたのかな。
どちらにせよ、ホッとした。また、なんてことになったら、宝来さんに迷惑かけちゃうし、部長にも「だから、言っただろう!」って、無茶苦茶怒られちゃうところだった。
部署に戻ると、とても良い笑顔の部長に呼ばれた。
あんな満面の笑み、初めて見た。
「松波翔太を勧誘したのは、シロか?」
「?はい」
「松波が回収で働きたいと申告してきた。良くやった。一人でも人員増加はありがたい」
どうやら松波さんは、約束通り回収に配属を希望してくれたみたい。
嬉しいな。
「そんなお前たちに、褒美の仕事だ。体の異常もなかったようだし、精力的に働け」
それは、褒美じゃないよね?通常業務を言い渡されるだけだよね。
「対象者は、東雲雄介。45歳。病死だ。回想の時間は50時間」
リストを渡される。東雲雄介さん。ガンが全身に転移し死亡。離婚後一人暮らし。〇〇総合病院にて入院。
「終わったら、そのまま次の現場に向かえ。時間に余裕がないから、巻きでな。それと――勧誘できそうならしてこい」
そう言って部長は、僕に残りのリストを渡した。
◆
〇〇総合病院。この地方にある一番大きな病院だ。患者数も多く、ガン治療にも力を入れていて、この病院を最後の砦として、他県からやってくる人も多いと聞く。
目の前の病室では、医師の指示の元、看護婦さんが慌ただしく出入りしていた。
「雄介!雄介!」
「雄介!聞こえる?雄介!」
涙ながらに呼びかけるのは、ご両親だろうか。
悲痛な声に胸が痛む。
僕はこの仕事を通して沢山の死を見てきたけど、ご家族の方の慟哭には未だに慣れることができない。
「大丈夫か?」
見上げた先の宝来さんが、労わるような眼差しで僕を見ていた。
その優しい眼差しに、重苦しくなっていた心が少しだけ軽くなった。
「はい。ご心配おかけしました」
「心配くらいさせろ」
くしゃりと僕の頭を撫でると、宝来さんは腕時計に目を向けた。
「そろそろ時間だ」
10時27分40秒。それが東雲さんの死亡時刻。
「30秒前」
機械のデジタル音が、ピッピッと、ゆっくりとした音を立て始める。
「雄介、……なんだ?」
意識のない東雲さんが不意に意識を取り戻した。
「――20秒」
「……………」
ありがとうと、掠れた声が耳に入ってきた。
僕の耳は高性能だから、僅かな声音も拾ってしまう。
極々小さな声は、果たしてご両親に届いただろうか。
――届いてるといいな。
「――10秒」
ピーーーと、機械音が鳴り響く。
用意されていた機械が東雲さんの心臓に当てられ、電気を流す。
胸骨を圧迫し、心臓マッサージを行う。
「雄介!雄介!目を開けて!」
「雄介!」
「――時間だ」
非情なほどに淡々とした宝来さんの声音が響く。
僕は一つ頷き、病室の中に入って行った。
未だ医師によって行われる救命をよそに、僕たちは傍に立つ東雲さんに目を向ける。
取りすがり泣くご両親を、悲しげに見つめる眼差しに胸が痛んだ。
「東雲雄介さん」
彼の目が僕たちに向けられる。少し驚いたように目を見張った。
「おれが見えるのか?……おれ…死んだんだよ、な?」
戸惑う声に頷いた。
「僕たちは死神です。僕はシロ。彼は宝来。貴方を迎えにきました」
「死神……ハハッ、だからおれは死んだのか」
「どういう意味ですか?」
「そのデカい死神の鎌でおれの命を刈り取ったんだろ?」
そう言って、僕が手に持つ鎌を見る。
「おかしいと思ったんだ。昨日の時点で車椅子で動けるくらいまで回復してたんだ。医者も驚くほどにな。数値も正常とまではいかなくとも、良い感じに下がっていた。今使ってる治療薬が効いてるんだろうって……昨日、先生と話してたんだ。なのに、なのに、おかしいだろ!今日の朝、突然呼吸が苦しくなって動けなくなった。全身あちこちが痛くて、意識が朦朧として目の前が真っ暗になったんだ……お前が、お前たちが、おれを殺したんだ」
東雲さんの体から黒いモヤが漂い始める。僕は手に持つ鎌をぎゅっと握り締めて「違います!」と、声を出した。
誤解だ。東雲さんは誤解してる。
まず、その誤解を解かなきゃ。
ありがとうございました。




