閑話(シロの愉快な仲間たち〜高坂美耶編〜)
閑話挟んでみました。
本編じゃなくてごめんなさい。
誤字脱字やら諸々あったら、直していきます。
とりま、書き上げたので、投稿します。
出勤早々、部長に呼ばれた。
別室に呼ばれるとか、只事じゃない。
イヤな予感がする。てか、イヤな予感しかしない。
アキラも居ないから、仕事の話じゃないのは確定よね。
ドアをノックして部屋に入る。会議にも使われているその部屋には、大きな机が一つに、無機質な椅子が円形に並べられている。
向かいに座るのは部長。その隣には何故か、アキラが座っていた。
「来たな。座れ」
向かいの席を促され座る。
この椅子はクッションが効いていないから、座り心地が悪いのよね。
「呼ばれた理由に心当たりは?」
「ありません」
間髪入れずに答えれば、部長がわざとらしくため息を吐いた。
アキラを見てイヤな予感が更に膨れ上がったけど、素知らぬフリをする。
のらりくらりと恍けて躱せるなら、それにこしたことはない。
「宝来のことだ」
げっ、単刀直入できた。
「禁止事項の違反だ」
「なんのことですか?」
澄ました顔で座るアキラを一瞥し、恍けてみた。
「緘口令の意味は?」
意味って……私は素早くスマホを取り出し検索する。
一番上に書いてある文字を読み上げた。
「ある物事や話などを他人に言うことを禁止すること」
「…………高坂」
呆れた目を向けられたけど、呆れられる意味が分からない。
何か間違ったことを言っただろうか?それなら悪いのは、私じゃなくて、その説明を載せたサイトだ。
「……まあ、いい。宝来の話は禁止していたはずだ。社外はもちろん、社内でも、だ」
強調する部長に、舌打ちしそうになるのを、何とか押し留めた。
あの時、側に居たのはアキラだけ。部長と共に私を待ち構えていたし、これは確定ね。
――敵は味方の中にいたんだわ。
「何故話した」
そんなの決まってる。
「マウントを取るためです」
あの子犬が雅親に大切にされているのが分かった。でも、意味が分からない。あんな、可愛いだけが取り柄の(特に尻尾と耳。ふわふわで撫でてみたい)犬っころに私が負けるなんて悔しいじゃない。雅親には私の方が似合うのに。
「マウント……」
「はい。それに……雅親には討伐に戻ってきて欲しい。回収じゃ、雅親の力を発揮できない。宝の持ち腐れだわ」
本当にもったいない。
「また、その話しか」
「何度だって言います。他の皆んなだって、絶対そう思ってるはずです。どうして、上は雅親が討伐に戻ることを反対するんですか。彼ほどの力を持った人は他には居ないのに。魂の状態を危惧してるのは分かるけど、もう何年も大丈夫なんだから、心配は要らないわ。それなのに……」
雅親は戻って来ない。
最初の説明では、今の判断では無理だが、いずれはってなってたはず。
おかしいじゃない。前回の案件のあとも、調べたけど影響はなかったと聞くわ。
「……打診はした。上もお前と同じ判断を下した。強制的に戻すために、辞令も出したが破り捨てられた。直接乗り込む真似はさすがにしなかったようだが、回収と討伐の部長を交えて話し合いを行った結果、回収に止まることになった」
「え?」
なに、その話。初耳なんだけど。
「本人には全くその意思がない。以上だ」
「そんな!」
「その話は終わりだ」
嘘よ。そんなはずはない。雅親だって、戻りたいって思ってるはずよ。
だって、だって……
「高坂」
呆然としたまま部長に目を向ければ「その話は終わりだ。いいな?」と、念押しをされた。
「それよりもだ。お前の処分の話だ」
「処分…」
「禁止事項を破ったんだ。当然だろ?――本来なら懲戒免職が妥当だが、相手は今現在の宝来のバディだ。宝来の状態を知っておくべき存在とも言える。こちらから事前に説明をしなければいけない相手に事前説明を怠った。それを見兼ねた高坂が説明を行った。それで、何とかなるだろう」
回りくどい言い回しで、部長が何かを言っている。私はまだ、さっきの話を引き摺ってて、言葉が頭に入ってこない。
意味が分からず疑問を顔に浮かべる私を無視し、部長が話を続けていく。
「なので、今回は特例だ。上には止むなしと報告する。だが、処罰が何もないのも…だからな。反省文を30枚。それで今回は許してやる。――場所はここを自由に使え。提出は今日中だ」
そう言って、何も書かれていない用紙の束と、鉛筆を私の前に置いた。
「帰る前に必ず提出しろ」
部長が退出してからも、私は何も考えられなくて横線のみが書かれた用紙を見つめていた。
「いつまでそうしているつもりだ?」
不意にかけられた声に顔を上げる。
いつの間にか隣に座っていたアキラが、頬杖を付いて私を見ていた。
「あんたまだ居たの」
「そりゃな。バディだからな」
「裏切り者のくせに」
「悪いことは悪いと言ってやるのもバディの役目だ」
「言わなかったじゃない」
少なくとも、こいつはあの時、止めようとはしなかった。
「まあな。お前さん、最近好き勝手し過ぎだから、お灸も兼ねてかな」
「は?」
「人を見下すわ、仕事に優劣を付けるわ、何様だよって思ってた」
「………」
「前の美耶は違った。相手の事情も鑑み寄り添おうとしていた。真摯に向き合い、仕事に取り組んでいた。それが――宝来のことがあってから、少しずつおかしくなった。最近は、それが顕著になってたよ。しばらく様子見をしてたが――俺は、そんな美耶がイヤでね。元の美耶に戻って欲しかった」
ジッと私を見つめる目が、私を責め立てる。
耐えきれなくて、目を逸らした。
「……元々、こうだったんじゃないの?」
「違うね。美耶のこと好きだったのに、今は大嫌いになりそうなんだぜ?」
「――そう、好き………え?好き?」
「え、今更そこに反応すんの?てか、そこじゃなくて、大嫌いになりそうってのに反応して欲しいんだけど」
「好き……アキラが私を?」
「聞いてないな、これ」
「す、好きって、私?」
アキラが何かブツブツ言ってるけど、それどころじゃない。
初めて告白されてるのよ。これに興奮しないはずがないじゃない。
ため息とか吐いてるけど、無視よ無視。
「……俺、結構分かりやすいと思うんだけど、美耶の服に付き合ってたろ?」
「コスプレ好きじゃなくて?」
「嫌いじゃないけど、俺、あんなセンス悪くない」
「は?」
聞き捨てならないことを聞いた。
私、センス悪くないから。毎回決めたコンセプトを元に発注してコーディネートしてるんだから。
「まあ、好みの問題だって言われたらそれまでだからな。それについては、まあいいや。それよりそれ、早く書けば?」
よくはないが、用紙を指差されて、改めて向き合う。
色々気になることが多過ぎて、それどころじゃないんだけど、確かにそうよね。
でも……
「なんて書けばいいの?」
「反省の言葉?」
「してないわよ。私」
「だと思った。――適当に?」
「適当って……そういう所がイヤになってるんじゃないの?」
「あれ?俺の話ちゃんと聞いてた?」
「聞いてるわよ」
私を何だと思ってるのよ。ただ、優先順位が低かっただけよ。
「適当なとこは嫌いじゃない。俺がイヤなのは、相手のことを自分の物差しで見て決め付けて、見下すこと。かな」
「胸が痛いわ」
「そこはちゃんと反省しろよ?」
「考慮するわ」
「それ、絶対しないヤツだろ」
「そんなことないわよ」
自分のバディがイヤだって言ってるのだから。自分でも気づかぬ内にイヤな女になりかけてた。それに気づかせてくれたアキラの思いには応えたいじゃない。
「もう、面倒だから『反省』だけでいいわよね」
「え?」
「色々言い訳じみたこと書くより、きっと伝わるわよね」
「え?美耶さん?」
「よし、そうとなれば、頑張りますか」
「え、マジか。いいのか?それ」
そして、お昼も食べず仕上げた『反省文』を、部長に提出した。
力作だ。私、頑張った。
「これはなんだ」
「反省文です」
「………アキラ」
「すみません。無理でした」
隣で頭を下げるアキラに首を傾げた。
「お前がバカなのは分かった」
なんですと!
「謹慎な。初めからそうすれば良かった。まさか、こんなのを提出されるとは……指導を間違えたか?」
頭を抱える部長に物申そうとした私の口を押さえ、アキラは「失礼します。二人謹慎します」そう言い終えて頭を下げた。
納得してないから!
もがもがと言う私を引き摺り、部署を出る。
「どういうつもりよ!」
「これ以上、部長をイジメんな。可哀想だろ」
どういう意味よ!イジメてなんかないわよ。
「いいから、行くぞ。腹減った」
色々言いたいことはあるけど、そうね。お腹空いたわ。
「アキラの奢りね」
「へいへい」
「一番高いの頼んでやるわ」
「仕方ねぇな」
苦笑するアキラと共に食堂へ向かった。
ありがとうございました。




