表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/58

42

今日から一回の更新です。

もしかしたら、手直しするかもです。

よろしくお願いします。

「そいつは社会的に抹殺されるわ。名前を変えて逃げたって、いつかボロを出す。仮に逃げ切れた所で、やったことは消えないの。魂に刻み込まれたその害悪は、必ずそいつを苦しめる。君が感じた苦しみよりも、何倍になってそいつに返るわ。――傷付いてボロボロになって、追い詰められた君には、彼らを制裁する権利はもちろんあるけど、自分で自分の魂を傷付けないで。君には幸せになる権利だってあるのだから」


 蹲る高橋くんに、深海さんは諭すように話しかけた。

 彼女の言っていることに嘘はない。

 きっと、相手の人は犯した罪の重さ分、代償を支払わなければならないのだから。


 地獄行きには二パターンがある。

 改心した人と、そうでない人で、受ける罰が同じな訳がない。

 改心した人は、回収された魂と同じように、あの世に来て生活を始める。違うのは、転生前には必ず地獄に赴き、罪を犯したことによって穢れた魂を浄化する必要があることだ。

 熱湯風呂のようなものに(ぐつぐつと煮えたぎる地獄の釜)二、三時間入るんだ。それを一週間ほど繰り返せば、大抵の人は浄化が終わる。

 熱いより痛くて、全身が溶けてなくなるような感覚に苛まれるらしい。

 溶けてなくなり、再構築される……それが繰り返されることによって、穢れがなくなるのかな?

 詳しい原理?は分からないけど、かなりツライと聞く。

 でも、我慢できず逃げ出すと、また最初からの鬼畜仕様。

 最悪だね。


 それでも、改心しなかった人たちに比べれば遥かにマシ。

 彼らはそのまま地獄に直行コース。管理も地獄の閻魔様に委ねられる。

 現世にある地獄の光景そのままに、彼らは魂の浄化が終わるまで永遠に責苦を追わされるんだ。

 何年も何十年も。人によっては、何百年も。

 人は騙せても、大いなる存在を騙すことはできない。

 穢れが落ちない限り終わることのない苦行。

 魂に染み付いた穢れを落とす。

 なんだか………洗濯みたいだね。


「死を選んだことは、残されたご両親の気持ちを考えると、許されることじゃない。でも、苦しかったんだよね。辛かったんだよね。生きることに絶望するくらい、追い込まれちゃったんだよね。今もまだ、腹が立ってどうしようもない気持ちを持て余してる。どうしてもと言うなら、安西をボコボコにしたっていい。でも、これ以上自分自身を傷付けるのは許さない。貴方が、幸せになる権利を放棄するのは絶対ダメ。貴方のために、貴方自身のために、一線を越えないで踏ん張って欲しいの」


 優しい声音が、まるで彼の心を包み込むようだった。聖母様のような笑みを浮かべ、深海さんは高橋くんを抱きしめた。


 高橋くんはポロリと涙を溢し………それは、止まることを知らず、どんどんどんどん溢れていく。


 いつの間にか巻き付いていた糸が消えている。

 うわぁぁぁぁと、泣き叫ぶ彼の声が辺りに響いていた。

 小さく俺かよって呟かれた言葉は、もちろん全員に無視された。


 彼は浄化預かりになる。闇に喰われてしまった魂を正常に戻すために、暫くは清浄の間って所に入れられて、瘴気を落とすんだ。

 グスグス泣きながらも、素直に従う高橋くんにホッとする。

 僕たちは深海さん達に高橋くんを託し、その場をあとにした。



 部長にことの経緯を報告すると「わたしは、直ぐにその場を立ち去れと言わなかったか?」そう言って怒られた。

 心配してくれているのは分かってたから、素直にごめんなさいをした。


 そんな僕たちを部長は、医務室に行けと、早々に追いやる。

 優しさなんだけど、ひどい。


「浄化って、ああやるんですね。僕初めて見たから、びっくりしちゃった」


 医務室に向かう途中、僕は深海さんを思い出す。

 あんなイケイケの人だとは思わなかった。

 脳筋かな?


「違うからな。勘違いするなよ?あれは深海だけだ」


 少し遠い目をした宝来さんが、そう言った。


「まあ、あんなんでも優秀だからな。瘴気を残らず吸収するなんて荒技、あいつにしかできない。浄化にも色々ある。安西は糸で縛り、漏れ出す瘴気を抑え霧散させる。縛ることで拘束も出来るから、あの二人は相性がいいんだ。――深海があんな無茶をできるのも、安西がいるからだろうな」

「信頼してるんですね」

「そうだな。あの二人は、あれでいいんだろうな」


 宝来さんは苦笑したあと、僕の頭に手を置いた。


「それよりも、大丈夫だったか?向井が結界を張っていたから、シロに瘴気があたることはなかったと思うが」


 僕は頭に置かれた手に意識を持っていかれながらも頷く。


 大丈夫だと思う。あの黒いモヤは深海さんが全て吸収してくれていたし、向井さんが結界を張ってくれてたなら完璧だ。

 それに、あの時みたく負の感情に捕らわれることもない。

 それよりも宝来さんは大丈夫なのかな。

 僕の前に、守るように立ちはだかってくれてたけど……。


「?どうした?」

「え、何がですか?」

「顔がニヤけてる。尻尾が風を巻き起こしてるぞ?」


 ニ、ニヤケてないし!風を巻き起こすって何さ!


「な、なんでもありません!」


 僕は頬を抑える。


「そ、それよりも、宝来さんは大丈夫なんですか?」

「俺は問題ない」


 僕がじっと窺うように見上げれば「本当だ」と、頭をポンポンとしてくれた。


「行くぞ。遅くなるとうるさいからな」

「はい」


 僕はそっと自分の頭に触れて、やっぱりニヤける自分の顔を自覚しながら、宝来さんと歩き出す。


「…………シロ痛い」

「制御不能です」


 バッサバッサと音を立てる尻尾が、宝来さんを攻撃してるけど、僕にはどうすることもできないから諦めて欲しいな。


ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ