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今日から一回の更新です。
もしかしたら、手直しするかもです。
よろしくお願いします。
「そいつは社会的に抹殺されるわ。名前を変えて逃げたって、いつかボロを出す。仮に逃げ切れた所で、やったことは消えないの。魂に刻み込まれたその害悪は、必ずそいつを苦しめる。君が感じた苦しみよりも、何倍になってそいつに返るわ。――傷付いてボロボロになって、追い詰められた君には、彼らを制裁する権利はもちろんあるけど、自分で自分の魂を傷付けないで。君には幸せになる権利だってあるのだから」
蹲る高橋くんに、深海さんは諭すように話しかけた。
彼女の言っていることに嘘はない。
きっと、相手の人は犯した罪の重さ分、代償を支払わなければならないのだから。
地獄行きには二パターンがある。
改心した人と、そうでない人で、受ける罰が同じな訳がない。
改心した人は、回収された魂と同じように、あの世に来て生活を始める。違うのは、転生前には必ず地獄に赴き、罪を犯したことによって穢れた魂を浄化する必要があることだ。
熱湯風呂のようなものに(ぐつぐつと煮えたぎる地獄の釜)二、三時間入るんだ。それを一週間ほど繰り返せば、大抵の人は浄化が終わる。
熱いより痛くて、全身が溶けてなくなるような感覚に苛まれるらしい。
溶けてなくなり、再構築される……それが繰り返されることによって、穢れがなくなるのかな?
詳しい原理?は分からないけど、かなりツライと聞く。
でも、我慢できず逃げ出すと、また最初からの鬼畜仕様。
最悪だね。
それでも、改心しなかった人たちに比べれば遥かにマシ。
彼らはそのまま地獄に直行コース。管理も地獄の閻魔様に委ねられる。
現世にある地獄の光景そのままに、彼らは魂の浄化が終わるまで永遠に責苦を追わされるんだ。
何年も何十年も。人によっては、何百年も。
人は騙せても、大いなる存在を騙すことはできない。
穢れが落ちない限り終わることのない苦行。
魂に染み付いた穢れを落とす。
なんだか………洗濯みたいだね。
「死を選んだことは、残されたご両親の気持ちを考えると、許されることじゃない。でも、苦しかったんだよね。辛かったんだよね。生きることに絶望するくらい、追い込まれちゃったんだよね。今もまだ、腹が立ってどうしようもない気持ちを持て余してる。どうしてもと言うなら、安西をボコボコにしたっていい。でも、これ以上自分自身を傷付けるのは許さない。貴方が、幸せになる権利を放棄するのは絶対ダメ。貴方のために、貴方自身のために、一線を越えないで踏ん張って欲しいの」
優しい声音が、まるで彼の心を包み込むようだった。聖母様のような笑みを浮かべ、深海さんは高橋くんを抱きしめた。
高橋くんはポロリと涙を溢し………それは、止まることを知らず、どんどんどんどん溢れていく。
いつの間にか巻き付いていた糸が消えている。
うわぁぁぁぁと、泣き叫ぶ彼の声が辺りに響いていた。
小さく俺かよって呟かれた言葉は、もちろん全員に無視された。
彼は浄化預かりになる。闇に喰われてしまった魂を正常に戻すために、暫くは清浄の間って所に入れられて、瘴気を落とすんだ。
グスグス泣きながらも、素直に従う高橋くんにホッとする。
僕たちは深海さん達に高橋くんを託し、その場をあとにした。
部長にことの経緯を報告すると「わたしは、直ぐにその場を立ち去れと言わなかったか?」そう言って怒られた。
心配してくれているのは分かってたから、素直にごめんなさいをした。
そんな僕たちを部長は、医務室に行けと、早々に追いやる。
優しさなんだけど、ひどい。
「浄化って、ああやるんですね。僕初めて見たから、びっくりしちゃった」
医務室に向かう途中、僕は深海さんを思い出す。
あんなイケイケの人だとは思わなかった。
脳筋かな?
「違うからな。勘違いするなよ?あれは深海だけだ」
少し遠い目をした宝来さんが、そう言った。
「まあ、あんなんでも優秀だからな。瘴気を残らず吸収するなんて荒技、あいつにしかできない。浄化にも色々ある。安西は糸で縛り、漏れ出す瘴気を抑え霧散させる。縛ることで拘束も出来るから、あの二人は相性がいいんだ。――深海があんな無茶をできるのも、安西がいるからだろうな」
「信頼してるんですね」
「そうだな。あの二人は、あれでいいんだろうな」
宝来さんは苦笑したあと、僕の頭に手を置いた。
「それよりも、大丈夫だったか?向井が結界を張っていたから、シロに瘴気があたることはなかったと思うが」
僕は頭に置かれた手に意識を持っていかれながらも頷く。
大丈夫だと思う。あの黒いモヤは深海さんが全て吸収してくれていたし、向井さんが結界を張ってくれてたなら完璧だ。
それに、あの時みたく負の感情に捕らわれることもない。
それよりも宝来さんは大丈夫なのかな。
僕の前に、守るように立ちはだかってくれてたけど……。
「?どうした?」
「え、何がですか?」
「顔がニヤけてる。尻尾が風を巻き起こしてるぞ?」
ニ、ニヤケてないし!風を巻き起こすって何さ!
「な、なんでもありません!」
僕は頬を抑える。
「そ、それよりも、宝来さんは大丈夫なんですか?」
「俺は問題ない」
僕がじっと窺うように見上げれば「本当だ」と、頭をポンポンとしてくれた。
「行くぞ。遅くなるとうるさいからな」
「はい」
僕はそっと自分の頭に触れて、やっぱりニヤける自分の顔を自覚しながら、宝来さんと歩き出す。
「…………シロ痛い」
「制御不能です」
バッサバッサと音を立てる尻尾が、宝来さんを攻撃してるけど、僕にはどうすることもできないから諦めて欲しいな。
ありがとうございます。




