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昼過ぎに起き出した僕らは、シャワーを浴び外に食事に出かけた。
宝来さんが持っていたバッグには着替えが入っていた。ちゃんと用意していたのには、ビックリだ。
「そのつもりで来てたからな」と言われて、思い付きじゃないことが嬉しいと思った。
食事のあと、途中でスーパーに寄って食材を購入した。これから部屋の掃除が待っているのかと思うとちょっと憂鬱だけど、その為に宝来さんは来たのだし、僕も頑張ろうと思う。
部屋に戻ると、宝来さんは洗濯物とそうでない物とで、別にするようにと指示を出す。
言われたように分けると、手際よく分類して洗濯機に放り込む。
そして、手慣れた手付きで床に散らばった僕の服を畳んで行った。
「シワになってるのも、一度洗濯するか」
そう言って器用に手を動かしながら選別していく。僕も最初に畳み方を教わったから同じようにするんだけど、宝来さんのスピードにはとても追いつかない。
しかも、宝来さんはただ畳むだけじゃなくて、シャツはシャツ。ズボンはズボン。下着は下着と分けるのも忘れない。
それに――キレイだ。僕は、僕が畳んだ服と宝来さんが畳んだ服を見比べて、シュンと落ち込んだ。
「慣れてないんだ。仕方ないだろ」
苦笑を伴う声に顔を向ければ「やってれば上手くなる」と、フォローを入れてくれた。
足の踏み場もなかった床は、あっという間に綺麗になった。その間に出来上がった洗濯物を干すのも忘れない。
手が疎かになる僕への注意も忘れない。
ソツなくこなす宝来さんは、スーパー家政夫さんだった。
「宝来さん、凄い!」
「何がだ?」
「床が見えました」
「……そうか。良かったな」
「はい」
僕が嬉しくてニコニコしてると、宝来さんがフッと笑った。
「お前はいつもそうやって、無防備に俺の懐に入り込んでくるんだな」
「……え?」
「いや、何でもない。――さて、畳み終わったら、片付けだ。タンスに入っている物、全て出せ」
「え?……でも、そんなことしたらまた散らかりますよ?」
「誰も放り出せとは言ってない。中身を、そのままの状態で床に置くんだ。一旦、全部出して、仕分けしながら入れて行く」
「うっ、……はい」
僕は頷いて、タンスの引き出しを開けた。宝来さんに中を覗き込まれる。ぐちゃぐちゃに詰め込まれた衣類を見て「そうだよな」と、呟かれた。
何がそうなのかは、きっと聞かない方がいい。
「シロ、こん中の物も畳むぞ」
「はい」
スーパー宝来さんは、黙々と手を動かす。きっと僕だけだったら何日掛かるか分からない作業を、宝来さんは、ほんの何十分で仕上げていった。
「タンスにしまう時は、分類して入れるようにした方がいい。探す手間も省けるしな」
確か、カオさんもそう言ってた。だから、最初は頑張るんだけど、その内、その場所に入らなくなって、どこでもいいから詰め込める場所に入れてしまうようになる。
「入らなくなったら、どうするんですか?」
「物が増えてか?」
「それもありますけど……何故だか僕がすると上手く入らなくなるんです」
「その場合は、俺を呼べ」
「え……?」
言われた意味が分からなくて首を傾げた。
「お前、物が捨てられないんだろ」
確信を込めた口調に頷いた。僕は物が捨てられない。捨てられるのは生ゴミだけ。それ以外の物は捨てることが出来なかった。
スーパーでもらうビニール袋も、包装紙も。
壊れてしまったものや、敗れてしまったものも、僕には捨てることが出来ないんだ。
だって、捨てないでって、言われてる気がするから。
カオさんが、さすがにこれは捨てようかって、端に避けていたものも、結局捨てることかできなくてそのままだ。
捨てなきゃって思うのに、その行為が苦しくて僕には出来ないんだ。




