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番号の変更を忘れてたので、直しました。

 1日の仕事を終えた僕は「お疲れ様でした」と挨拶をして帰ろうとした。でも、宝来さんに腕を掴まれ阻止された。


 何かあったのかなって、掴まれた腕を見てたら「シロ、このあとお前の家に行くぞ」と、告げられる。


「……え?」


 僕は言われた意味が分からなくて目を瞬いた。


「明日は休みだろ。松波を迎えに行かなきゃならんが、予定としたらそれだけだ。これからシロの家に行って、少し寝たあと今日、明日にかけて掃除だ」

「え……」


 戸惑う僕を無視し、宝来さんは腕を掴んだまま歩き出す。反対側の手には小振りのボストンバッグが握られていた。


「掃除って……?」

「約束してただろ?」

「でも……」


 約束はしたけど、本気にはしてなかった。だって、自分の家の掃除だけでも面倒なのに、人の家の掃除なんて本気でやりに来るなんて思わない。

 カオさんは来てくれたけど、見るに見かねて仕方なしだったし。


「僕、あんまり困ってないですよ?」

「何がだ?」

「部屋が散らかってるの」

「……だろうな」


 ため息混じりに同意されて、ほんの少しムッとする。フンと顔を背けて「だからいいです」と、断りの返事を返した。


「お前が良くても俺が困るんだ」

「何で宝来さんが困るんですか」

「いつまで経っても、お前の家に遊びに行けないだろ?」


 真面目な声で言われて、僕は宝来さんに顔を向けた。


「……遊びに?」

「ああ」

「僕の家に?」

「………イヤか?」


 僕はブンブンと頭を振った。

 イヤじゃない。イヤな訳がない。誰かが僕の家に遊びに来るなんて初めてだから、凄く嬉しい。

 僕の尻尾も喜ぶように激しく揺れる。宝来さんの体をバシバシと叩く。


「シロ、痛えよ」


 ごめんなさいって謝ったけど、最近の尻尾は僕の言うことを全然聞いてくれなくて、今回も止まれって念じる僕の命令を無視した。

 だから、落ち着くまでは宝来さんから少し離れて歩いた。じゃないと、僕の尻尾は宝来さんへ攻撃し続けることになったからね。


 仕事場から僕の家までは二本の電車を乗り継ぐ。宝来さん家とは逆方向の電車だ。

 電車を降りてから10分ほど歩けば、僕が住む1Dkのマンションに到着する。3階の角っこが僕の部屋だ。


「びっくりしないで下さいね」

「大丈夫だ」

「絶対ですよ?」

「ああ」


 ここまで来る間に何度か繰り返した会話を交わし、僕は部屋のドアを開けた。

 玄関に入り、電気を点けた。玄関から一直線に廊下が続き、浴室、トイレの扉を右側に過ぎるとリビングに繋がる扉を開ける。(もちろん?廊下にも服が散乱してる。因みに玄関は、靴が所狭しと散らかってて、慌てて隅に寄せた)


 宝来さん家よりは狭い部屋の中は、脱ぎ捨てられた服と、洗濯して出しっ放しの服、その他雑多な物で、足の踏み場もない状態だった。

 机の引き出しやクローゼットの扉も開きっぱなし。


 まるで、泥棒に入られ荒らされたあとのような様相を呈している。チラリと宝来さんに目を向ければ、部屋の中を見渡し苦笑していた。


「――生ゴミは溜め込んでいないようだな」

「あ、うん。それは捨てるようにしている」


 食べたあとの弁当の箱や生ゴミは匂いが出るから捨てている。


「上出来だ」

「え?」

「もっと酷い惨状を想像してたんだが、そういったゴミを捨てられるんならまだマシだな」


 まさか褒められるとは思わなくて、僕はポカンと口を開けて宝来さんを見上げた。


「どうした?」


 僕の様子に不思議そうな顔をする宝来さんに、何でもないと首を振る。

 でも嬉しさはじわじわと胸の奥に湧いて来て、緩む頬を両手で抑えた。


「一先ず、ベットを使えるようにした方がいいな」


 ベットは昨日の夜、起きたままの状態になっている。その上にはパジャマが脱ぎ捨てられていた。


「あ、じゃあ、シーツを交換します」

「予備があるのか?」

「はい。一枚あります」

「……どこにあるのか分かるのか?」

「あ……たぶん?クローゼットかな?」


 指摘されて、僕は曖昧に答えた。視線を向けられ、あははと笑う。


「えと、探ってみます」


 以前、カオさんがそこにしまってた記憶がある。あれ以来、触ってないからきっとあるはず。


 僕は作り付けのクローゼットの前まで行って、半開きになっていた扉を開け放った。

 途端――バサバサッと詰め込まれていた洋服が落ちてくる。


「うわっ」

「シロ!」


 僕の焦った声と宝来さんの慌てた声が被さった。腕を引かれて、服の海から救出される。


「大丈夫か?怪我はないか?」

「あ、はい。軽い物ばかりだったから大丈夫です。すみません」


 宝来さんは、僕の頭に乗ってたシャツを取り除いてくれた。


「ちょっと、待ってて下さいね」


 開け放たれたクローゼットの中も、ぐちゃぐちゃな状態だけど、きっとあるはずたからと、僕がそう言うと「いや、いい。動くな」と、腕を掴まれた。

 えっ、あっって戸惑う僕をベットまで連れて行くと、上にあるパジャマを渡される。


「着替えて来い。何もかも起きてからだ」


 有無を言わさぬ口調で言われ、僕は逆らえるはずもなく、パジャマを受け取った。


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