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文字数が安定してなくてごめんなさい。
今回は少なめです。
よろしくお願いします。
「もう、大丈夫なのか?びっくりしたよ。シロちゃんが倒れたって聞いて」
そんな声と共に、僕の背中にはズシリと人ひとり分の重みがかかった。誰かなんて問わなくても分かる。
僕にこんなチョッカイをかけてくるのは、辰さんしかいないから。
「離れて下さい」
冷たく言い放ち、身動ぎして振り落そうとすれば、辰さんが腕を回して僕にしがみ付く。
「えーー、心配してるのに、ひどくない?」
「重いです。抱き着かないで下さい」
「だって、シロちゃん可愛いからさ。仕方ないよね?」
「意味が分かりません」
振り返れば端整な顔が、ねっと微笑みを浮かべた。きっとこの顔で世の女の子達を虜にしているに違いない。そして、宝来さんも。
そう思うだけで、僕の胸の中はモヤモヤとムカムカが湧いてくる。
「どうしたの?変な顔して」
「変な顔は元々です」
自分でもどうしてこんなにもイラついているのか分からない。でも、このニヤニヤとした顔を見ていると腹が立って仕方がない。
ムッとした顔のまま辰さんを睨んでいると、突然誰かが僕の傍までやって来て背後にへばりつく辰さんを引き剥がした。
「離れろ」
僕は不機嫌な顔をした宝来さんを見上げた。
「宝来さん」
ホッとした。宝来さんが救世主のような気がした。本当は、恋人が違う男にくっ付いているのを見るのが嫌なだけだったとしても、僕は守られているような気がしたんだ。
僕の気持ちに反応して、尻尾がふぁさりと大きく揺れた。
「大丈夫か」
「はい。助かりました」
「マサ、ひどいなあ。久しぶりのシロちゃんに癒されてたのに」
「嫌がってただろーが。とっとと止めてやれ」
「もう、直ぐそうやってヤキモチ妬くんだから。狭量なやつ」
仲良さげな二人のやり取りにチクリと胸が痛んだ。それでも、宝来さんから漂う剣呑な気配に僕は慌てた。
「ケンカはダメですよ。さっきのは、ただのスキンシップです。悪気はなかったように思います。恋人があんな風に違う誰かにくっ付いたりするのはイヤだと思いますが、オモチャを愛でる子供みたいなものだから、あまり怒らないであげて下さい」
以前、知られたくないようなことを言っていたから、周りに聞こえないように小さな声で窘めた。
「………シロ、あのなーー」
「シロ、宝来」
宝来さんが思案げな顔で、何かを言いかけた。でもその声に被さるように赤松さんが僕たちを呼ぶ。目を向ければ来いと手招きされて、僕は赤松さんの元へと向かった。
「色々、大変だねー」
そんな僕の耳に、辰さんの揶揄うような声が聞こえて来た。
後ろを振り返れば、辰さんが宝来さんの肩に手を回し何事かを囁いている。
宝来さんは嫌そうな顔をしてるけど、決して拒んでるようには見えない。
僕はグッと拳を握り締め、仲睦まじい二人から目を背けた。
胸の中に沸き起こる不快感にも似た感情を持て余しながら赤松さんのデスクの前に立つ。
「顔色は良くなったみたいだな」
機嫌は悪いようだがと、付け加えられて気まずさに目を伏せた。
「体調はどうだ?」
僕の態度に突っ込んでは来ない赤松さんにホッとする。
「ご迷惑をお掛けしました。もう大丈夫です」
「そうか。無理はするなよと言ってやりたいが、状況が許さない。手を抜けるところは上手く抜いて頑張ってくれ」
人手不足なのは僕も承知している。だから、赤松さんなりの精一杯の労いの言葉に頷いた。
「――宝来!何をしてる。さっさと来い!」
赤松さんが焦れたように宝来さんに向かって怒鳴った。僕はその声に首を竦めながら、近付いてくる宝来さんの気配を探っていた。
ありがとうございました。




