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忘鬼の謂れ〜鬼と戦い続けた男  作者: 吾瑠多萬
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【決戦】暁

この物語はフィクションです。


美澄凛はずっと進路に迷っていた

絵を描きたかった。だがそうしてはいけないような気がしていた。妙な葛藤が起きて、決め切れなかった


(あがり)は姪にあたる凛を、妹のように思っていた。凛も親族関係についての知識が無い幼い時には、東を兄だと思い込んでいた。母が会話で「兄さん」と呼ぶので、自分もそう呼んでいたからだ。東は妹夫婦の家が好きだった

東も結婚したが、一年で別居して、その二年後に別れてしまった。今は保育園を経営して、それが一番楽しいと思う。かなりのびのびと泥んこ遊びをさせたりする、親は洗濯が大変な園だが、今となってはそういう方が良いという親も増えて来た

凛も預かったし、卒園してもずっと来ては子供らと遊んでくれた。とても助かるし、微笑ましいとすら思っていた。だがそのうちに、クラスの友達を家に呼んだりはせず、そういう時間を保育園に来て遊んでいたのだと気づいた

「クラスの子と遊ばないのか」

凛は黙って横を向く

「何話したら良いのかわかんない。その時間あったら本を読む方が良い」


「そうか。わかった。好きなだけ来ると良い」

(あがり)はその事を義弟の誠時に相談した。誠時も気づいていない訳ではなかった

東はどうしてか、凛が幸せにならないと自分も幸せになれないような気がしていた


友達と呼べるものはほぼ居なかった。凛は性格が悪い訳でも無いし、むしろ優し過ぎるくらいだった。やがてその内面が子供らしく無いという事に思い当たった

子供相手よりも、大人の間に居る事を好んだ。大人の会話に聞き耳を立てて、知りたい事には質問をして来た。子供としてあしらわれると、黙っていてもかなり憤慨しているのが見て取れた

家でも母親がやっている裁縫教室に一緒に入り浸って、裁縫をしたり、大人の会話を聞いている。大人の会話をつまらないだろうと言っても、首を振って、そこで黙々と縫物をしていた。


文字を覚える事には何の苦労も無かった。目の前にある文字の全てを読む子だ。広告から、新聞から、至るところの。そのうちに本棚にある小説を片っ端から読んでいた。


学校の教科書には余白の殆どに落書きがあった。花や鳥や、動物。目に付いた机とか椅子とかバケツとか。

「教科書に描かないでね」

母親がスケッチブックを買うと、それはたちまち他愛ないものを次々とスケッチしたものでいっぱいになった


母親が裁縫のデザインに描く絵を見ていたからだろうか

48色の色鉛筆を買ってやると、目を輝かせた。何度もそれを並べては崩し、自分の気に入った並び順に変えた。それからはスケッチには色がついた



父の誠時は黙って娘を見つめていた。この娘が賢いが為に、物事の本質に敏感な為に悩んでいるのだと気づいていた。人の心を過剰に察して、自分は言葉を発せなくなるのだと思っていた


全く人の手を煩わせない子だった。二、三歳で言葉を話すようになるとあらゆる事を質問して来た。こちらも精一杯答えようとした。知っている限り、わからない事は調べて後から答えた。五歳くらいになると質問して来なくなった。尋ねても、答えが思っていたのと違うとでも思ったのだろうか。度を越した我儘など言った事もなかった。何かを買ってくれとせがんだりもしなかった

いつもこの子の目が何を見ているのか不思議だった。ぼうっとしていても、何かを見ていた。もしかして霊感とかあるのではと思った。自分の勘は強い方だったので、わからない訳でもない。でもせめて年頃の事をして笑って欲しいと思っていた

何かそういう心を抱きしめてやれば溶けるのだろうかと思うのだが、そういうのは幾つくらいまで通用するんだろうか。妻の咲雪(さゆき)に言ったら笑われた

「もうそういう年齢ではないのでは。私にしてくれたら良いじゃない」


咲雪もどちらかと言うと引っ込み思案だった。誠時の勤めるアパレルの会社にパタンナーとして入社した。彼女の型紙は縫いやすいと縫い子に評判だったし、着る人の品を引き立てた。無口で壁は固かったが、誠時が無遠慮と思うほどに自然に話しかけて来るので、咲雪はついつい心を許した。咲雪は誠時が誰にでもそうなのかと思っていたが、本当は、男女問わず気に入った人にしか自分の方からは話しかけないと聞いたのは、付き合い始めてからだ


結婚と仕事の間を迷う妻に辞める事を勧めたのは誠時だ。彼女が居ないと会社は地味に痛手だ。だが直接の利益と関係無いから、誰もその事には気づかないだろう。それでも構わない。己が在籍している間だけ会社は回れば良いのだ。大量生産に向いていない彼女に、在宅ワークを提案したのは誠時だった


「大丈夫よ。私にあなたが現れたように、あの子にも現れるわ」

「だがそんな男が現れたら、嫁にやるのを渋ってしまうかも」

「あなたのところには私が残るから構わないでしょ」

誠時は妻を抱き締めた。彼女のこういうところが好きで、絶対勝てないと思うのだった

凛が大学を卒業したら、会社なんて辞めて妻の仕事を手伝おうと目論んでいる。そうすれば朝から晩まで一緒に居て、共に一つの事をできる


年々質を落として利幅を稼ごうとする会社に誇りを持てずに居る。誠時は自分のそういうところが好きで、嫌いだった。どこか自分は驕っているんじゃないかと思う。小さい頃から勘は良かった。ここ一番という決断には強かったし、こうなって欲しいと思う事は大概そうなった。でもそういう事じゃない。


誠時が咲雪を好きになったのは己を見つけ出したからだ

誠時は明るく人当たりも良く敵を作らない。だが本人はそんな自分は本当ではないとわかっていた。自分が嫌だったし、それを見抜けない他人をも冷めた目で見ていた。ある時、飲み会の翌日に給湯室でたまたますれ違った折りに、背中で咲雪が独り言のように呟いた

「美澄さんって寂しいんですね。上から目線だし。気遣って疲れませんか」

思わず振り返る誠時を見て、咲雪はしまったと言う顔をした。傷つけたかもと思ったのだろう。だが誠時は長い長い鬼ごっこから解放された気がした。隠れていた己を見つけ出せる人が現れたとなったら、もうこの人よりも他には考えられなかった

神がこの人を通して己に言ったのだと思った

それからの誠時の態度に咲雪は困惑した。華やかで人気の誠時と地味な自分はどう見ても釣り合わないと思うのに、確実に距離を詰められた。元々好感を持っていた人なだけに、表面上冷たくしても全部破られた。遂に折れるしか無いとなった時、咲雪はどうして自分なのかを尋ねた

「俺の気づかない自分を、見出せるからだ」

咲雪は笑って言った

「変な人。最初から思ってた。変わり者で、普通に馴染めないんだなって」

誠時は一瞬言葉を失い黙った。それからこの縁に感謝し、笑って言った

「そうか。では最初からわかっていたんだな」

「何を」

「神が二人を引き合わせたと」

「宗教とかあるの?」

「いや、咲雪が俺の神様だ」

そこ絶対にムード出ると思ったのに笑い転げられた


特に宗教の信仰は無いが、どこかに神のような偉大なものがいるのではないかと思っていた。そうで無ければ、つまらないだろう。人の頭で考えられる程度のもので世界ができていたら。自分の予想が良い方に裏切られるとわくわくする。自分の小ささに打ちのめされるのは、痛みを伴うが実に愉快だ。

凛と話すと時々その感覚に陥る事がある。この子は何か自分よりも知っているのだろうかと。ああ、やっぱりなまじの男に凛は渡せないな


神がいるとして、自分はそれを知り得ようか。生きている間にか。死ぬ時にか。まあせめて死んだ時に神に見せて恥じる事無いように、我が人生を織って行こう。そう思う


「誠時さん、私と居る時は私のことを考えてね」

優しく咎めるように妻が言う

もちろん考えていたとも、この世で最も神秘で尊いものの事を。それを知らんとする我が興味は尽きない

「あ、でもそういうのは晩御飯食べてからね」

読まれたか。その神秘を知る時間かと思っていたのに。だが夕飯の後だと気が変わるだろう、と言う心の声は無視され、誠時は寝室から押し出された



絵が好きだ。幾らでも絵を描いて居られる。絵描きになろうかな、と幼い頃凛は思っていた


小学校に入って、同級生が犬の脚を七本あるように書いたのを見て驚いた。また夜空を描く時に周囲の子らが星を五角形の点を結んだ一筆書きをクレヨンで描き、その上を青の絵の具で描くのを見た。凛は星がそのように見えた事は無かった。せめて、十字とか、八方向とか。それに輝く光の放つ線は必ず放射状だろう

また太陽を赤い丸に塗り潰し、その周囲に短い線をおかしな方向に散らす。彼らには太陽が赤く見えるのだろうか。日の出や夕日でも無いのに。自分には、薄黄色か、白くすら見える。そして、空全体の青さの中で太陽の周囲は明るく薄い青になる

そう思って描いた絵は、クラスで目玉焼きだとからかわれた


遠足でレジャーシートに座って見たら、地平線は下に下がって見える。そう思って描いた絵では、レジャーシートの上に立ち上がる子の上半身は空に被る。だがその絵は「巨人だ」と揶揄された


体育というテーマで絵を描く時、自分と同じ縄跳びの題材の他の女子の絵は、絵の中の登場人物は全員が同じ正面向きで同じポーズだ。縄が頭の上にあるのに、足は飛び跳ねて宙に浮いている。びっくりする。足がつく時に縄も地面にあったら飛べない、と思う。

自分は横向きの子供達を描いた。まだ束ねてある縄を持つ子、これから縄を回す直前の子、縄が頭上の子、縄が地面にある子は足が浮いている


その頃になると、凛が絵の上手い子なんだという事は周囲に知れていたから、誰にもからかわれたりはしなかったが、何故かいつも申し訳無いような気がしながら描いていた



中学生になっても、クラスでは浮いていた。兎に角話について行けない。歌謡曲とか、芸能人とかどうでも良い。そんな遠くの、会う事も無い人のことなんてどうでも良い。それに一体何の意味があるのだ。

ゲームもスポーツも、何が面白いのかわからない。勝ったとか負けたとか、何の為にするんだろう。観戦して何がそんなに興奮できるのだ。自分のチームでも無いのに。ボール投げなど特に苦手だった。

例えば自分が狩をしなくてはならないから弓や剣をやるとかならわかるのだ。何か目的を見出さないと一生懸命になれない自分の性格が、自分でも面倒だと思っていた

踊りは好きだった。バレエを見て習いたいと言ったが、直ぐに挫折した。周りの子のノリに着いていけない。彼女らが、周囲と競い合おうとし、牽制し合うのが耐えられない。心の底ではそう思っているのに、表面上は仲良く取り繕うのを見るのが辛かった

ピアノを習わせようとしてくれたが、音符が苦手だった。耳コピはできたが、楽譜が辛くてそれ以上進んで行けなかった


いつも思っていた。自分は何かおかしい。この世界に馴染めない。どこか遠くに違う故郷でもありはしないか。そう思って本を読んでいた。どれかの本の中にその国が載っているのではないかと思っていた。いつも本当の事が知りたいと思った。だが何が本当なのか、その自分すら本当なのかわからない

周りに誰も居なくても絵があれば、本があれば構わないと思っていた。裁縫教室でも、保育園でも、居場所は無いわけではない


だが、高校で進路を決めようと思うと、絵の道に進むと決められなかった。なぜか自分にそう許可できなかった。自分は幸せになってはいけないのではないかと思う。お金の為に絵を描けるのか、と思う。何か漠然と自分が存在する事に罪悪感があった。周りを幸せにできない自分が、どうして幸せになれるのだろうかと思う。心にはいつも寂しさと虚しさを感じた。それが何かわからない。だって自分は恵まれている方なのに。両親にも伯父にも愛されていると思っていた。一体何が足りないのかわからない。自分は求めている、何を、誰を?或いはどこかを…


凛は伯父の(あがり)に相談した。凛が彼を(あがり)さんと呼ぶのは、保育園に度々訪れ手伝う都合上だ。

伯父はよく自分を気遣ってくれたし、対等に扱ってくれた。両親よりは距離感が丁度良いのだ

「凛は、先が見え過ぎなんだろうな。凛が知りたいのは、自分とは何者なのか、という事なんだろうと思うよ」

東は育児関係から始まって、児童心理学や母子のカウンセリングについても多少は知識があった。それでいくつかの心理学の入門書を渡した


凛は自分が知りたいのは自分の事だと言う事が腑に落ちた。それで、心理学の勉強をしようか、美大に行こうか迷った


(あがり)は言った

「今人生の全てを決めなくても良いだろう。絵だって、習ったらそれを絶対にやらなくてはならないという訳でもないだろう」

凛は絵の道に進むとは決めきれないままに、絵画教室に行った。そういうのは何かズルをしているような気がしたが、自分は今は絵を上手くなる事だけを考えようと思った


絵の基礎を教えて貰いながら、自分の内側での心象が形を取るのを捉えられるようになった。それはどこかの風景、田舎のような、森のような。気になるものはスケッチした

そのうちにその景色を絵に描いた。どんどん描こうと思った。誰かに見せる事など気にするな、と(あがり)が言ってくれた事もあって、その絵が粗削りでも、未完成でも構わないと思った


ある時、赤ちゃんの姿が目に浮かんだ。それは懐かしく、愛おしく、どうしても会いたい誰かだ。ああ、この子はいずれ自分の元へ生まれ来る赤ちゃんだ、私のところに生まれて来たいと思ってくれた縁のある子なんだ


その子の絵を描いた。コーラルピンクの色に囲まれて、生まれて来るのを待っている赤ちゃん。お腹の中は、血液が外の光で透けてオレンジピンクの色に見えるそうだ。そして、血液の流れるリズミカルなせせらぎがずっと聞こえている。それを聞くと赤ちゃんは安心して眠る。お腹の中で、会話も聞こえるし、お母さんの感情もわかる。だからお母さんはいつも穏やかでいないと

だから私も今からそうしないといけない

あなたは今はまだ存在していない命。私はあなたの母親に、相応しくなりたい。あなたを受け止められる者となりたい。あなたに与えられるものを持ち合わせる者となりたい。まだ間に合う


その赤ちゃんを描いてから、急に凛は生気を取り戻したようだった。生きる意味を少しだけ見出した気がした。自分は愛する対象を求めていたのだと知った。未だ見ぬその子に会った時に恥じぬように、もっと生きる事に積極的になろうと思えた。その気持ちは周囲の目にも変化を認めさせた。以前よりも、発言をするようになったし、クラスメイトとも話そうと努力するようになった。その存在が己に強さを与えてくれると感じた


凛はその子の名前を考えた。瑞穂とか、瑞樹とかかな。沢山喋ってくれると良いな。好きなことをさせてあげたい。その子が何を好きなのかを見出してあげたい。その子がその子自身である事を守ってあげたい。成長する姿を見たい

そのうちに、その子に会う為には相手の男性が必要だと気づいた。一人赤面した。考えた事もなかった


意欲を得た凛の絵は生き生きとし始めた。己が内を吐き出すように描き溜めた絵は、それなりの枚数になった


結局、凛は進路を決められないままに最終学年になっていた。心理学を学ぶ事にした。まだ決めてはいないが、児童や母子のカウンセラーならば、東の保育園を手伝う事もできる。ただこのまま親族の稼業を手伝っていたら、甘え過ぎではないだろうか

凛はもう絵は良いように思った。描きたいものを描くだけ描いたら、もう心の源泉(ソース)が尽きて描きたい絵が無くなってしまう事を恐れていた


大学一年の時、描き溜めた絵で個展を開いてみたら、と(あがり)は言った。これだけ才能があるのに、やめてしまうなんてもったいない。凛は個人的な絵を他人に見られるのは恥ずかしいと思ったが、母親の裁縫教室でも展示会をしているのを見た事があったので、画廊の雰囲気も知っていた


いざそれを思い描くと自分でも驚くほど詳細に企画のアイディアを思いついた。わからない事は母親と(あがり)に手伝って貰い、個展を企画した。BGMを自分で編集したいと思い、父と母が持っていたCDを全部聴き、図書館でも借りて来た。好きな曲も、そうで無い曲もあったが、今までこんなに音楽を目的を持って次々聴いた事は無かった。そうやって聴くとどれも面白かった

今まで貰ったお年玉の貯金と、保育園を手伝ったバイト料を会場費と宣伝の費用に充てた


絵葉書を沢山刷って、喫茶店とか画廊とかを回った。その辺は(あがり)が居なければなかなかできなかった。



(あがり)は最初渋っていた個展に、凛が思いの(ほか)乗り気なのに驚いた

そして、絵葉書を置きにその喫茶店に来た時、ミニコンサートが開催中だった。

東は音楽に詳しい訳ではないが、随分と息の合った良いハーモニーだと演奏を聴いて思った


次のところに回るよう促そうと凛を見て驚く

凛は(あがり)を制した。邪魔をするなとでも言いたげだ。強気の凛なんて珍しい。凄く集中している時くらいだ。凛の視線の先には、この演奏を引っ張っているフルートを吹く男の子がいた。大学生くらいか。目を閉じて曲に集中している。なのに、急に目を開けてこっちを見た


それを見た凛の慌てようは凄かった

こんな凛は見た事が無かった。扉の後ろに隠れて、個展の葉書を王子様に渡す役を東に押し付けて行ってしまったのだから

(あがり)は呆気に取られたが、内心わくわくした。可愛い姪っ子にもしや春が訪れたのだろうかと、にやつく自分を抑えた

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