私は花火が好きだ
私は花火が好きだ。
できれば、打ち上げた花火が好きだ。
あのパッと開いた瞬間の音も。
周りの喧騒を静寂にしたような轟音を。
心臓が跳ね、肺が震えるような振動を。
真っ暗な夜空に咲いた花。
そう表現しても遜色なく、一切の翳りをみせない彩り。
黄色、赤、緑、様々な煌めきが双眸へ舞い映る。
そんな花火が好きだ。
これだけでいいのかもしれない。
だが、私にとって、一番好きな部分。
それは、彩りや夏の風物詩や季語だからではない。
たった一つの煌めきに心奪われたわけではない。
むしろ、少しの嫉妬心が見え隠れするくらいには妬ましい存在である。
なにせ、花火――彼らと言うべきか。
彼らは、魅力的だ。
魅せるのだ。
たった一輪。
されど一輪で。
人々の注目を集める。
そう、注目の的だ。
それが羨ましい。
花火が上がると聞けば、見に行く人も多く。
屋台も並ぶだろう。
並ばなくとも、大勢物好きは集まる。
その轟音に、その花に。
例え、種族。性別。年齢や生まれ故郷。背が高いか低いか。足が早いか遅いか。
日本に生まれたか。
それとも海外か。
なんて関係なく、その場にいる人、音を聞いた人は一斉に空を見上げる。
例え、国が違えど言葉を交わすことは難しくとも、その時だけは皆一緒。
パッと開いた花を見上げるのだ。
私はそれが好きなのだ。
心はひとつにならずとも、見るものがひとつになった気がして好きなのだ。
だから、私は花火が羨ましいし、ちょっと注目を浴びて妬ましいし。
この上なく好きなのだ。