私が心から好きになった男性は、“影の男”だった。
私はどこかで、“白馬に乗った王子様”が私を攫ってくれると信じていた!
愛する男性に抱きかかえられて私を何処かへ連れ去ってくれると。
でも? 【現実】にそんな事がある訳がない!
今現在でも、“付き合ってる彼も居ない! 好きな男性すらいないのだ!”
そんな女が、現実逃避のように王子様を待っている。
馬鹿げた話しにしか聞こえないだろうが、私は真剣にそう思っている!
・・・そんな時、私がいつも通る帰り道。
目の前に、扉が突然現れ! その扉が開く。
扉の中から誰かが、私に手招きしている。
私はそっと、その扉に近づいて誰が私を呼んでいるのか確かめる事にした。
でも一瞬で、その扉から私を招く手が扉の中に引きずり込む。
『えぇ!? ヤバい、私どうなっちゃうんだろう?』
【大丈夫! 君に危害は加えないよ。】
『・・・あ、あなたは誰ですか?』
【ずっと僕は君を待っていたんだ!】
『・・・私を?』
『あぁ!』
・・・扉の向こうにあった“世界は?”
【影】の世界だった。
私を手招きしたのも影の男だった。
『・・・ココは?』
『君は“影の世界に来たんだよ。”』
『影の世界?』
『ここには、夜はない! “光の世界なんだ!”』
『光がないと? 影はできないから?』
『あぁ! 一日中、太陽が僕らを照らす。光と影はいつも一つなんだよ。』
『私はここに来ちゃダメじゃなかったの?』
『大丈夫! 僕がこの世界の王様に話を通しているからね。』
『・・・でも? どうして私なの?』
『君の居る世界と僕らの居るこの世界は“隣同士にあるんだ!” だから
いつも僕は君を見ていたんだよ!』
『“ひょっとして? 私の白馬の王子様?”』
『何それ? ハクバノ王子サマ?』
『・・・別に知らないなら、知らなくてもいいの。』
『あぁ、ううん。』
・・・彼は私に彼の家族を紹介してくれた。
『僕の両親と姉と弟だよ。』
『・・・ううん。』
『あらあら? “可愛いお嬢さんだこと! ヨゼの彼女?”』
『・・・い、いや? 違うよ! 母さん!』
『ヨゼのお母さん?』
『どうも、ヨゼの父です。』
『姉です。』
『弟です。』
『・・・あぁ、初めましてさ友音です。』
『さ友音さん? 可愛らしいお名前ね。』
『ありがとうございます。』
『ご両親も、可愛らしい女の子に育ってもらいたくて付けたお名前
なのかしら?』
『それならいいんですが。』
『あらあら? さ友音さんは、可愛らしいですよ。』
『そう言ってもらえると嬉しいです。』
ヨゼの家族は皆、物凄くイイ人達ばかりだった。
“別の世界から来た私をすんなり受け入れてくれた。”
『ねえ、ヨゼ?』
『うん? なんだいさ友音?』
『・・・私、本当にここに居ていいのかな?』
『もう元の世界に返りたいのかい?』
『ううん、そうじゃないんだけど! ここは私が住む世界じゃない
気がするのよ。』
『ど、どうして!』
『・・・どうしちゃったの、ヨゼ?』
『ごめん、取り乱してしまって。』
『本音を言うとね? 顔が見えないのって怖いの!』
『この世界の者になればいいじゃないか!』
『えぇ!?』
『この世界の者になれば、お互い顔がはっきり見えるんだよ。』
『・・・そ、そうなんだ。』
『さ友音も、僕たちとこの世界で、』
『ごめんなさい、私はやっぱり無理よ。』
『・・・ささ友音、』
・・・その後、彼はまたあの扉を開いてくれた。
私がこの世界の者にならないと分かったからだろう。
『さあ、急いで! “元の世界へお戻り!”』
『ありがとう、短い時間だったけど楽しかったわ。』
『あぁ、僕も凄く君と会えて嬉しかったよ。』
『最後に、“あなたの顔を見せて!”』
『あぁ、そのつもりだった。』
・・・そう言うと? 彼の顔がゆっくり影から光を浴びて体、形がはっきり
見えるように。
そして最後に彼の顔が見えて私は扉の先にある元の世界へ。
夢のような時間だった。
彼はとてもイケメンでカッコいい男性だった。
いつかまた私は影の世界に行き、彼と会いたいと心に誓ったの!
最後までお読みいただきありがとうございます。