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出会い①

 男の人は俺を見て「なっ?!」と声を出すと「穢れし者……」と言いながら女の子の胸ぐらから手を外す。すると素早い動きで女の子は冒険者たちの囲いから抜け出して俺の背後に回った。


「知り合いなのか?」


 男の人がそう聞いて来たので、俺が違うと答えようとしたら、女の子が「そうよ」と答えたので、男の人が「こいつは傑作だ」と言って周りにいた冒険者たちがみんな「ゲラゲラ」と笑う。


「流浪の民様のお知り合いとは、まったく世の中を知らない馬鹿な子供ってのはまだ居たんだな」


「なによ、それ?」


「知らねぇのか? そいつは穢れし者、街に住むことの許されない流浪の民だぜ」


「穢れし者?」


 女の子がそう聞くと男の人は「そいつの首にはまっている首輪は穢れを抑える首輪だ」と言う。


「なんでもその首輪は昔の有名な魔法道具師が作った品でな、それをはめられている者たちは流浪の民、街に定住を許されないのさ」


 そこまで言った男が「あんまりそばに寄ると穢れがうつるかも知らねぇぜ」と笑う。だけど、女の子は「馬鹿じゃないの?」と言った。


「そんなことぐらいでうつるならこの子は街を歩かせてもらえないし、この街の人たちにだってとっくにうつっているわよ」


 その言葉に男の人が「グッ」と悔しそうな顔をする。すると周りの冒険者たちが「ちげぇねぇ」と言って「ゲラゲラ」と笑い始めた。


「このやろう、こっちはな、親切で言ってやってんだ」


「いらない親切ね。そういうのを余計なお世話っていうのよ」


「なんだと!?」


 男の人が怒鳴ると女の子は俺を盾にする。仲間の冒険者が「もう行こうぜ」と言うと、男の人は仲間を見て頭をかいた。


「どうせ俺たちじゃ、その流浪の民には勝てないだろ?」


「そっ、そうだが……」


「それによ、小娘に相手をしてもらいたいなら娼婦館にでも行けよ。借金奴隷がよりどりみどりだろ?」


 仲間がそう言うと男の人は「クッ」と声を出して「そんなんじゃねぇよ」と言う。


「じゃあ、どんなんだよ」


「だいたい娼婦館に行く金なんてあるわけねぇだろ?」


「じゃあ、少しは働けよ」


 仲間がそう言って周りにいた冒険者たちが再び「ちげぇねぇ」と言ってから「ゲラゲラ」と笑うと男の人が真っ赤な顔をして俺をにらんだ。


 というより俺を盾にしている女の子をにらんだ。


「チッ、わかったよ」


 男の人がそう言って冒険者ギルドの中に入ると、周りにいた冒険者たちは「逃げたよ」と言いながら冒険者ギルドの中に入っていった。


 それを見送っていると、不意に女の子がガッと俺の服をつかむ。


「あのさ、なにしてんの?」


「ごめん、ちょっと待って」


「はぁ?」


 振り返ると女の子はガタガタと震えていた。


 うん?


「ちょー、怖かった」


「その割にずいぶんと煽ってたみたいだけど?」


「だってお尻とか胸とか触ってくるし、頭に来てたんだもん」


 女の子がふくれるので、俺は「そうか」と笑う。


「それで? 見かけない顔だけど、冒険者ギルドになんの用?」


「うん、あんた冒険者なんだよね?」

 

「一応そうだけど……」


 俺がそう言い淀むと、女の子は俺の前に回り込んで俺の顔を覗き込んだ。

 

「じゃあさ、素材を売ってくれない?」


「うん? それは直接買い取りたいってこと?」


 俺が聞くと女の子は「そうよ」とうなずく。


「でもさ、直接の買い取りはトラブルになりやすいだろ? なんでそんな危ない橋を渡るんだ?」


 俺が聞くと「そうだけど……」と言いながら女の子はうつむく。


「あのさ、事情を話してくれないと協力もできないと思いけど?」


 俺が首をかしげると女の子はハッとして、それから「話せば協力してくれるってこと?」と聞いた。


「まぁ、さっきかばってくれただろ? お返しだよ」


 俺がそう言うと女の子がニヤリと笑うので「あくまでも俺が協力できることだったらだけどな」と言っておく。


 危ない話は嫌だからね。


「怖がらなくても大丈夫よ。欲しい素材は珍しいものじゃないから」


 女の子はそう言って、頭をポリポリとかいた。


「私がまだ子供だからって商業ギルドが素材を回してくれないのよ。なんでも今は素材がどれも品薄なんだって、だから欲しかったら直接冒険者から買うしかないじゃない」


「商業ギルド所属の傭兵は?」


「ダメダメ、あの人たちは商業ギルドの言いなりだから、頼んでも無駄。話にもならなかったわ」


 すでに断られたってことだね。まったく。


「そうか、なるほどね。それで? どんな素材がほしいの?」


 俺が聞くと女の子は「うーん」とうなって、それから俺の顔を見た。


「ブラックリザードの骨、パラライズトードの舌、ポイズンラットの肝、シャドービーの針、ファングバットの牙、どれでもいいから売ってもらえない?」


「それって、たしか錬金術の素材だね。錬金術が使えるの?」


 女の子は「うん」とうなずいて少しうつむく。


「そっか、ちょっと待ってて」


「えっ? いやいや、ちょっとどこ行くのよ」


 女の子が慌てて止めたけど、俺はそのまま冒険者ギルド入った。

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