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ヴォルグとコシカ③

 ラーニャの足元には俺たちを追いかけて来ていた男の人が転がっている。


「あなたたちはなにをやっているのかしら?」


 ラーニャはそう言って、コシカが「うん?」と首をかしげた。


「私は言っておいたわよね? コシカがポーションを作っていることがわかれば囲い込みなどをしてくる商会も現れるって」


「うん」


「私もこんな乱暴な手段を取ってくるなんて思わなかったけど、こいつらみたいのが出るかもしれないから、あんな話をしたのよ」


 ラーニャがガスッと蹴ると猿ぐつわをされている男の人が「うぅうぅ」言いながらラーニャをにらむのでラーニャは「ゲスが睨んだんじゃないわよ。あんた、立場わかってんの?」と言いながらさらにガスガスと蹴る。


 周りではそれをまったく気にしないで商業ギルドの職員たちがテキパキと俺たちを追ってきた人たちを全員縛り上げていた。


「ポーションを買い占めたり、錬金術師に圧力をかけている商会のことは見当がついていたんだけどね」


 ラーニャがほほえむので、コシカが「結果として私が囮になったってこと?」と聞いた。


「そうね。だけど内偵を進めていたのに、今回の件でそれもパァだわ」


 俺が「すみません」と頭を下げると、コシカは「どういうこと?」と聞いた。


「ポーションの買い占めの目的も、錬金術師に圧力をかけている目的も、裏にいる奴のことも、これでわからなくなってことよ」


 コシカが「えっ?」と驚くとラーニャは「はぁ」とため息を吐いた。


「悪いことをしている奴がいたとして、そいつを捕まえれば終わりってわけにもいかないのよ。私たちのような組織の場合は『なぜそんなことをしたのか?』『ほかにも関与している者がいないのか?』きちんと調べてから動くの」


「なるほど、ごめんなさい」


 コシカが頭を下げるとラーニャは「仕方ないわね」とうなずいて「あなたたち2人が無事ならいいわ」と笑う。


「それにしてもそこの保険が役に立つとは思わなかったわ。まぁ、ヴォルグがいたから問題はなかっただろうけど」


「保険?」


 コシカが首をかしげたので、俺はクルテルを見た。


「クルテルさんはこっちの味方だったんだね?」


「そうよ」


「だから結界でコシカを守りながらラーニャさんたちが来るまでの時間を稼いでいた?」


 俺が聞くとラーニャはもう一度「そうよ」と答えて俺の傷を見ながら「フフッ」と笑った。


「だけどクルテルは欲を出して、返り討ちにあったみたいだけどね」


「欲?」


「クルテルはコシカを気に入ったのよ」


 ラーニャがそう言うと、コシカが眉間にシワを寄せた。


「クルテルさんの場合は私を気に入ったというより、女の子なら誰でもいいんじゃないの?」


 コシカがそう聞くとラーニャは「フフッ」と笑って「まぁ、普段からアレだからそう思われても仕方ないわね」と言った。それから俺にポーションを投げ渡して、クルテルを見た。


「だけど、そんなのでも一応商業ギルドの密偵だから、変な奴らに声をかけられたら話に乗って情報を回してくれたり、いざと言うときは商業ギルド関係者を守ってくれたりしているの」


「えっ?」


 コシカが驚くと「軽薄で女の子にいいかげんそうな振る舞いは世を忍ぶ仮の姿だったの?」と聞く。


「いや、それは本人が持って生まれた資質よ」


「そう、じゃあ、密偵とか関係なしにノーサンキューで」


 コシカがクルテルを見下ろすと、ラーニャはニヤニヤと笑う。もちろんクルテルはなにかを訴えるような目で見ているが舌がまだ痺れていて話せない。


 俺はラーニャからもらったポーションをグイッと飲んで、クルテルのそばに落ちていた電撃の魔法道具を拾った。


 中はまだ熱を持っていて、ほんわかと温かい。


「それも『アナテマ』なの?」


「うん、だからラーニャさんたちは触らない方がいいよ」


「そう……触るとどうなるの?」


 ラーニャがそう言ってからゴクリと唾を飲み込んだ。


「魔力が暴走すると思う。すぐに手を離せば大丈夫だけど……」


「長く触れていれば死ぬのね」


 俺が「まあね」とうなずくとコシカもゴクリと唾を飲み込んだ。


 俺がそれをカバンにしまうと、ラーニャが「コシカはそろそろ帰らないとアルカさんが心配しているんじゃない?」と言った。


「そうね。母さんが心配していると思う」


「そっか、じゃあ。帰ろう」


 俺がそう言うと、コシカは「うん」とうなずいて俺と手をつなぐ。それがうれしくて思わず笑うと、コシカも笑ってくれた。


「まったく馬鹿なことをしたものね」


 ラーニャはそう言うと、クルテルの足をカツンと蹴った。


「この馬鹿も一緒に運んでくれる? だけど、間違えて兵士に引き渡さないでね」


 ラーニャが職員にそう指示をだすと、コシカが「なんか」と苦笑いをする。


「『間違えろ』って言ってるように聞こえるんだけど」


「そんなことないでしょ? クルテルさんは味方なんだし」


「そうよね」


 俺とコシカがラーニャを見ると、ラーニャはニヤリとした。


 大丈夫だよね?


「あんたたちはいつまでいるの? 早く帰りなさい」


「「うん」」


 うなずいた俺とコシカはコシカの家に向かって歩き出した。2人並んで帰る。すっかりと日が落ちた空には綺麗な月が浮かんでいた。

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