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きみだけはぜったいに孤独じゃない  作者: しじま うるめ
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恍惚/ひかり

 薄い薄い風が、衛星軌道上を巡っている。

 海抜二千キロメートルの宇宙にも、大気と呼べるものは存在している。もちろん、地上のそれと比べるべくもないほんの僅かなものだ。生命が酸素呼吸をするにはまるで足りず、人間が船外活動をするためには宇宙服が必要な領域である。

 けれど綿月依姫にとっては、風を十分に感じられる領域だった。秒間数百個もの気体分子が彼女に衝突する。それだけでも十分に騒々しく、熱気に満ちた世界だと言える。

 頭の上には、球形の青空が渦を巻いていた。耳を澄ませば聞こえる。風が雲をかき回す音が。海と陸が擦れる音が。惑星外核と惑星内核がひび割れながら流動し、数万年周期の対流を続けている。その悲鳴が割れんばかりの交響曲となって響きわたっていた。光と熱の時代において、宇宙ではありふれた音景だ。

 地表から観察すれば、逆立ちした依姫の頭頂部が見えるだろう。地球近傍にそんな物体が出現すれば、普段ならすぐさま大ニュースだ。

 けれどもう、そんな些細なことを気にかける余力は人類に残っていない。衛星軌道上から降り注いだSM-Xミサイルはすでに三百万発を超えていた。都市や集落といった構造はほとんど崩壊しており、森林火災は広域に渡っている。場所によっては海岸線や山体すらも形を変えているのが見える。

――攻撃の第一波としては上々、と向こうは考えていることでしょう。やはり、叩くなら今をおいて他にないわ。

――万事整っております、姉上。舟が地球影から現れるまで、あと二十二秒。

――浄対穢結界、時間どおりに展開予定。こちらもいつでも。

――貴方たちの仕事については心配していないわ。不確定要素はただあの子の、朧帆の現状だけだもの。

 佩いた刀の柄を、依姫はゆっくりと撫でた。

 元を辿れば、アポロ事件の際に朧帆以下三名を冷凍睡眠させたまま放置したことがこの事態の遠因である。あのときしっかりと処理しておけば、ツクヨミに付け入る隙を与えずに済んだ。生命に対する感傷など百害あって一利なしだと分かっているはずなのに、こうも甘くなってしまうのは、やはり穢れの影響を受けすぎたせいだろうか。

 いや、さらに辿るなら、輝夜が地上に降りたことがそもそもの原因であるのだけれど。

 刀を握る手に力が籠もりかけて、依姫は我に返った。いまはあの旧き姫君のことは関係無いのだ。彼女が何をしていようと、きっと遅かれ早かれこうなっていた。ツクヨミの意志は図りきれずとも、それがトコツネを疎んでいることは確かなのだから。雑念を払い、目の前の事象に集中しなければならない。

 いまここが、生命循環を守ることができるかどうかの瀬戸際なのだ。

 弓なりの地平線に、断続的な閃光が点る。続けて地表へと無数の航跡が白く薄い糸を引く。引き裂かれるような震動が真空になりきれない空間を伝って、依姫の感覚を歪めた。見上げるその瞳には、宇宙の黒が、後悔の黒が、決意の黒が満ち満ちていた。

 静止軌道上の自分の身体へ、あのロケットに平行となる加速度を与えながら、地球の重力を捕まえて高度を下げていく。青い天球が相対的な回転を始める。質量を持つ身体を操作するためには実に煩雑な手順が必要となるが、今回は相手が月兎の成れの果てなのだから致し方ない。幾つかのデブリが依姫へ衝突し、砕けて消えた。鋼鉄を穿つエネルギーも、しかし月人の身体にとってはいささかの障害にもならない。目標の接近速度がどんどん遅くなる。手に取れるほどに、パシウスロケットの機影がはっきりと見える。

 パシウス、とは地上の神話に連なる名の一端だったはずだ。地上の民は宇宙船にそういった名を付けることを好む。地球に神がいないと科学世紀は結論づけてしまったけれど、ひょっとすると宇宙にならいるのかもしれない。そうどこかで考えたいのだろう。なんとも愛らしく、いじらしい思考だった。宇宙を最果てまで探しても、そんなものは見つかるはずはない。彼らに認知できる神とは常に彼ら自身の内にあり、そしてそうでない神はと言えば、四次元空間はおろか十一次元まで探してもその一端を掴むのがやっとなのだから。

 依姫と舟の速度差はどんどん縮まっていく。腰を深く曲げ、抜刀の姿勢に入る。無重力空間であっても、彼女は重力と同等あるいはそれ以上の加速度を全身にかけ、地に足が着いているときと変わらずに居合いを抜くことが可能であった。帯びる刀も神霊を宿す由緒ある一本であるが、依姫ほどの使い手ともなれば剣の質はそれほど大した問題ではない。

 ひとつ、またひとつ。瞬きの間に、巨大なミサイルが虚空から出現しては放たれていく。地表面と水平に百足の足のように生え揃ったそれは、さしたる目標も無く大気中を落下し、どこかの陸地で炸裂する。おそらくは人口密集地帯すら狙っていない。至極大雑把なシステムだけれど、これならば朧帆は眠っていたって攻撃を継続できる。

――厄介な。

 依姫は舌を巻く。この荒技を可能にするだけの権能がいかほどの情報量になるか、考えるだけでおぞましい。彼女はいち月兎に過ぎぬ身でありながら、それを注ぎ込まれて正気を保っているのだ。いや、ともすれば最初から狂っていたのかもしれないが。

 百足の背から接近する形で、依姫とパシウスロケットのランデヴー飛行は続く。

 彼此の距離、およそ百メートルまで接近したところで。

 動きがあった。突如、背側に数発のミサイルが生えた。

 明確にこちらを狙う挙動。依姫がもちろんこれを想定していないはずもなく、精密な挙動で躱していく。まだ刀は抜かない。意思を持つかのように複雑な挙動をする鋼鉄の塊は、しかし人間大の目標を捉えるには大きすぎる。あくまでこれは陽動である。

 本当の狙いは。

 パシウスが急激に加速する。乗員に五十Gを超える衝撃がかかりそうな、フィクションのような挙動。ただの宇宙飛行士ならば即死するだろう。だが、いまの朧帆にとってはなんでもない技法だ。

 本命は、地球上の一点へ確保誘導する、というこちらの策の回避。当然、これを許してはならない。追い縋るミサイルの弾頭を蹴り、依姫はさらなる加速度を得る。

 正面からも無数の弾頭が迫るが、月の姫君は踊るように躱し続ける。高速で巨大な無限の弾幕であろうと、物理法則に則った挙動である以上、依姫の演算能力で処理が可能だ。圧し潰さんと面を構成したミサイルの、五十センチメートルほどの隙間へと頭から飛び込んで、すり抜ける。刀はまだ、抜かない。

 互いの加速は凄まじく、このままでは目標地点上空を通過するまでに舟を確保できなくなってしまう。残された時間は少なかった。やむなく、依姫は隠していたカードを切る。

――速秋津比売よ! 宙飛ぶ舟を停めよ!

 彼女の命に、港と航海の神が応える。パシウスの船首に錨のビジョンが取り付くと、ほんの僅かばかり速度が緩んだ。加速を命じる乗り手の意志と、減速をかける女神の権能がぶつかり合い、機体を派手に軋ませる。

 もちろん引き留めるには至らない。速秋津比売の力が通用するのも保って十秒だろう。けれど依姫にとっては十分だ。加速と減速、機体に加わる相反する力はどちらも、設計段階では想定されているはずもない神威である。ロケットはすでに波打ち際の魚のごとく震えのたうっている。十秒もあれば、この鉄塊はハイジャック犯ごとひしゃげてしまうだろう。

 雨霰と吹き付けてくるミサイルが、唐突に―晴れた。

 その先には、抵抗を諦めたパシウスⅢが、乱れた姿勢で浮遊している。接合部位のことごとくが緩んで、へこみが無数に生じているのが見て取れる。なるほど、無駄な抵抗はしない。歴戦の強者である朧帆に相応しい判断であった。

 しかし、それは、裏を返せば。

――この状況でもまだ、指令遂行に支障は無い、と?

 朧帆は兵士である。任務を果たすことこそがその至上命題であり、それはツクヨミの陶酔を受けたいまであっても変わらないはずだ。彼女は指令のためなら命をも差し出すだろう。逆に言えば、任務を遂げる可能性を信じている限り、彼女に諦めるという選択肢は無い。

 不気味な、沈黙が、数瞬。

 剣の柄を、依姫が強く握る。と、その瞬間にはもう振り抜かれていた。

 直径七メートルほど、刃渡りを軽く越える幅の胴が両断される。切断の刹那に僅かばかり捻られた刃の作用を受けて、ふたつの筒はだんだんとずれていく。露わになった居住区、空気圧を喪失し宇宙空間とほとんど変わらないはずのその環境に、その命は立っていた。まだかろうじて生命の範疇にあるそれは、依姫のよく知る薄い笑みを浮かべていた。

――朧帆。

「お久しぶりです、依姫様。ご機嫌潤わしゅう」

 まるで綿月邸に今しがたやってきたかのような口振りで、一分の隙も無い立ち居振る舞いで、朧帆は最敬礼を返す。同じ顔をしていた。かつての彼女とまったく同じだ。依姫の腹心、守護役の右腕として傍に控えていたあの頃と。

 胸のどこかがまだちくりと痛むことが、無性に腹立たしかった。

 しかしもはや与える慈悲など無い。噯にもそれを出しはしない。

 瞬きほどの間すらも与えることなく、依姫はその懐へ飛び込んでいた。標的への間合いに入った、とそれを覚られる前に首を薙ぐひと太刀を振るう。優秀な月兎として朧帆がいくら鍛えていたとしても、月人との間には越えられない決定的な壁がある。それを思い知らせる、神速の一撃。生物である限り、反応速度を要する以上は躱せないはずのそれを。

 朧帆は指で摘み、ぴたりと止めてみせた。

――やはり。

 依姫の思考が弾け、仮定のいくつかが消去される。それが豊姫とサグメに共有されると、重苦しい念が返ってきた。

――確率事象の操作による結論選択まで使われるとなれば、戦闘行為を通して討ち取ることはほぼ不可能と考えて良いわ。

――サグメに同意よ。依姫、無理はしないように。

――心得ています。

 三、四、五と。

 太刀を超音速で振り続けながら、居住区の奥へ奥へと踏み入っていく。

 その斬撃の悉くを、朧帆はギリギリで回避し続けていた。不可能なはずの体捌きに、依姫は舌を巻く。

 依姫の神速を受け止めることは、絶対に不可能というわけではない。たとえば、あらかじめそこに腕があり、たまたま刃を受け止めることができるのならば、先ほどのように防御が可能だ。もちろんこれは、相手の動きを視認してからの反応とは違う。「あらかじめこのように身体を動かしておけば防御できる」という未来予知に近い挙動だ。しかし通常の時空にいる限り、未来そのものを直接観察することはできない。

 ゆえに導かれる結論は、宇宙外に存在があると考えられるツクヨミによる干渉となる。その方法として想定されるものは時間反復と確率操作のふたつだ。前者はかつて永琳が紺珠の薬で疑似的に再現を可能にした。ミスをしたら戻ってやり直せばよい、という単純なものだ。そしてサグメはそれを直に観察しており、時空間へ与える乱数的影響についても把握している。もし同様の手法をツクヨミが取っているならば彼女によって感知できることになるが、その可能性は限りなく低いとサグメは判断したわけだ。

 後者の確率操作については、月都にも観測事例は存在しない。想像実験により理論は構築されているが、彼女たちの超高度科学を用いてもそこ止まりだ。つまりもし眼前の月兎がそれを用いているのならば、初の観測ケースということになる。

 これは基底世界タイムラインのイベントに対して、ありとあらゆる可能性を複数の仮想タイムライン上で並行予測し、望ましい結果に到達したものを実存タイムラインへ転写、上書きするというものだ。複数といっても、イベントに関与し得るあらゆる素粒子に対して異なった可能性を想定しなければならないため、仮想タイムラインの数は億や兆では桁が百個ほど足りない。

 当然、現実的ではなく、月の民であっても実現不可能と断言できる技術である。しかし、おそらく、ツクヨミにとってはそうではないのだ、恐ろしいことに。

「――っ!」

 横薙ぎに払った一閃、それを朧帆が後方宙返りで交わし、ふたりの間合いが開く。

 ほんの三秒間の斬り結びで、浴びせた太刀筋の数は五十に迫ったが、朧帆にはかすり傷ひとつ無い。

「依姫様、私は手に入れました、やっと」

 その声色に僅かな高揚は聞いて取れたけれど、それでもかつてと同じものに聞こえるのだった。彼女が狂ってしまっただなんて、聞いただけでは判別が付かないほどに。

「貴方と言えど、これはお渡しできません。私の身体と心のすべてが月都のものだとしても、これだけは違います。私のものです。私に与えられた、私の意味なのですから」

「そんなものは」

 努めて抑えた声で、依姫は言った。

「元より無いのです。そして、これからもずっと存在しない」

「ここにあります。何よりも確かに。あぁ、胸を割って取り出せるものなら、いますぐにでもお見せしたいのに」

「貴方はすでに惑星級災害に認定されています。この意味が分かりますね?」

「惑星級災害」

 朧帆は僅かに首を傾げる。彼女がその定義を知らぬはずがない。単独で有生命の惑星に修復不可能な損害を負わせることができる事象。地球における数億年に一度程度のありふれた例を出すなら、およそ直径五百キロメートルの隕石衝突が挙げられる。

 地上への不干渉を謳う月都は、本来ならば惑星級災害だろうと何だろうと、それに対処するなどということはしない。ひとつの星から生命が潰えるのなら、ただそれまでの生命圏だったという事実を受け入れるだけだ。

 だが、この地球においてだけは話が変わる。蓬莱山輝夜が狂わせ八意永琳が墜ちた、この少女の惑星は月都にとって特別な意味を持つ。

「私に分かるのは」

 かつてよりも幾分か芝居がかった大仰な手振りで、朧帆は答える。

「八意様が貴方がたにとってよほど大事なのだということのみです」

「貴方を止めるために、月都はいま膨大な資源を私たちに注ぎ込んでいます。全球浄化は阻止しなければならない。どんな手を使ってでも」

 断ち切られたパシウスが、その頭を地球方向へ回していく。断面が上を向くに従って、天頂付近に位置する太陽から光が射し込む。影がゆっくりと祓われていくのを、朧帆はその視線だけで追っている。

 それは自然の重力加速度よりも、僅かに速い動きで。

「……これは」

「貴方が白兵戦において私を凌駕しているのだとしても関係ない」

 唐突に、何か千切れる音がした。

 いや、音ではない。けれど確かに、彼女は断絶を感覚した。空間がずれて、切り取られる、その瞬間。

 それが断続的に、五回、七回、十一回。

 ばつん、ばつんと、何度も何度も。

 窓の外を見る。そこにあるはずの地球が見えない。壁には墨で塗り潰したような真円がただ並んでいるだけだ。その中をパシウスの機体片が、太陽光を反射してぎらぎらと瞬いている。

「多重完全空間断絶……まさか、浄対穢結界を、この高度まで?」

「言ったでしょう。月都の総力を以て、貴方の計画を止めると」

 機体の回頭は停止し、太陽は依姫の背に完全に隠れる形になった。もはや姿勢制御の力が外部から加えられていることは明白だ。パシウスは誘導されている。策を決行する地へ。

 いつの間にか始まっていた振動が、唐突に強くなった。断熱圧縮による赤光が機体を覆う。大気圏へ突入したのだ。シートベルトが無ければ数秒でミンチになりそうなシェイカーの中で、しかしふたりは直立不動で向かい合ったままである。

 ぶつかるその視線すら、いささかもずれることは無い。

「何をなさるおつもりか、ようやく見えてきました。いやはや、なんとも惨い真似を」

「貴方に言われたくはありませんよ」

「同じ言葉をそっくりそのままお返ししましょう。私は地上にいっさいの希望も絶望も残すつもりはありませんが、月人様はそれを守ろうとしていらっしゃる。この所業を惨いと言わずして何と言いましょう」

 空間そのものに無数の楔が打ち込まれていく。成層圏までの数十キロメートル、地殻から大気まで、間にあるすべての情報を断絶する結界膜だ。遠く離れた別の人工衛星から見れば、漆黒の巨大な筒が地球に生えたように見えるだろう。

――時間よ。到達予定地点との誤差は七千メートル。よくやったわ、依姫。

――姉上、あとはお任せします。

 刀を納める。事ここに至ったのなら、もはや朧帆に逃げ場はない。依姫ともども、彼女は完全に囚われの身となった。

 あとは、豊姫の執行の時を待つだけだ。

――粒子転送孔、光球面第一層および第二層の配置完了。第三層の配置は七十三パーセント。有効配置率はすでに到達しているわ。浄対穢結界の展開数は九百九十。コロナプラズマ放出開始まであと十七秒、残り三十四の展開は機体の大気圏入射角からみて十分に可能と判断。順延は行わない。

「まぁ、試してみても良いでしょう」

 何が起こるのかを察したのだろう朧帆は、それでも顔色ひとつ変えることはない。

 月都の総力を挙げて討ち取る、という宣言が何を意味しているのか。それを誰よりも良く知る、彼女が。

「私の賜わった意味は、身体も生命も超越し得るのか? ツクヨミはどこまでのものを私に与えたのか? 私自身、興味があります。少しね」

――中止不能点を通過。放出側ワームホール制御術式を起動。龍脈連動による照準調整機能、異常なし。太陽対流層に電磁パルスアーケードの励起を確認。コロナ質量放出およびフレアの挙動は予測乖離率0.2パーセント。北半球に二カ所のコロナ質量放出と四カ所のフレア、南半球に一カ所のコロナ質量放出と三カ所のフレアが発生見込み。放出エネルギーの総予測量は8.9×10^28J。放出五秒前、四、三、全転送孔、開口。

「朧帆」

 言葉が音になったかどうか、依姫には定かではなかった。

「朧帆、私は――」

 月兎の笑顔が、

 砕けた機体が、

 漆黒の円筒が、

 視界の全てが、


 天頂から降り注ぐ異常輝度の光に、圧し潰されていく。


 そして、

 一瞬で、

 陽光が、

 全部を、

 呑んだ。


 粒子転送孔が抽出した、太陽の放出する熱と光のすべてが、地球近傍の一点から放たれた。恒星の放つ膨大なエネルギーを一極集中し、撃ち込んだのだ。もはやそれは太陽炉などという生易しい代物ではない。太陽系で最も高い熱を生成する強大な兵器だ。照射地点の中心部では、形あるものは蒸発すらすることなく、瞬時になにもかもがプラズマと化し消散する。意味も意思も意義も意図も、分け隔てなく光となる。


 光が、


 熱が、


 白が、


 無に、


 白、


 光、


 無、


 熱、


 光、


 熱、


 無、


 白、


 白、


 白、


 、


 、


 、


 、








 

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