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きみだけはぜったいに孤独じゃない  作者: しじま うるめ
30/68

情報/インタールード#1

是非曲直庁インタビューログアーカイブ

ち‐〇三三三‐二

インタビュー対象:雲居一輪

インタビュアー:四季映姫ヤマザナドゥ


「お時間を頂き、感謝します」

「えぇと……お説教でしょうか。私、これでも割と真面目に仏門修行に励んでおりまして、別段叱られるようなことは」

「貴方が仏教徒として真面目に生きているかどうかは、今日は関係ありません。面霊気の話です。貴方はあの子と交流があるようだから、お話を伺えればと」

「なぁんだ、緊張して損しちゃった! それならそうと、勿体つけないで早く言ってくださいよー。閻魔様もお人が悪いんだから。いやぁ、しっかり徳を積んできて良かったなぁ」

「貴方の人生観については、またおいおい。説諭する種はどっさりとありますので」

「えっ」

「では、貴方から見た秦こころについて、どんなことでも構いません。お話を聞かせてください」

「そう言われてもなぁ。こころさんは真っ直ぐな良い子ですよ。あんなに素直で、幻想郷で妖怪やっていけるのか心配になるくらいです。そういえば、言葉の裏を捉えるのが苦手かなぁ。なんでも字面どおりに受け取っちゃうものだから、お世辞とか皮肉とか、通じないんですよね。あ、それと、そもそも疑うことを知らないからなんでも信じちゃう。だからこう、言われたら言われたとおりに一直線に進んじゃうんです。えーとあれは、こころさんが暴走してたすぐ後くらいだったかなぁ。『表情の勉強をする』って言いながら弾幕決闘を仕掛けてきたんですけど、そのときにね、『やぁやぁ我こそは』って大時代な名乗りを挙げだしたもんだから。私、おかしくって。で、それで言ってあげたんですよ。『決闘するのにそんな口上要らないわよ。私と最強の称号を賭けて戦え!

って、こんな感じでいいわ』ってね。そしたらあの子、その後幻想郷中で『私と最強の称号を賭けて戦え!』ってやったらしくて。もうおかしくておかしくて。その話を聞いて笑ってたら、あの子拗ねちゃいましたけど」

「貴方は、ずいぶんと彼女のことを可愛がっているようですね」

「まぁ、妹分というか、ああいう素直な子には手を貸してあげたくなっちゃいますよね。人里で暴走してたときは、いったいどんな凶悪な妖怪なのかと思ったけど。蓋を開けてみたら、とっても良い子でしたからね。自分が原因の騒動を自分で収めようとするなんて、そんな責任感の強いひと、いまどきの幻想郷じゃあ、妖怪にも人間にも滅多にいませんよ。感情を制御するための修行、いまもちょくちょくお寺にやってきてはいろいろやってますけど」

「秦こころは、いったい何の妖怪だと考えていますか?」

「何って……面霊気、お面の付喪神でしょ? 自分でもそう言ってるわ。あの豊聡耳さんが作ったっていう能面の。いや、本当かどうかは知らないですけど。あのひとの言うことは話半分に聞くに限るし。でも確かに古い能面をずっと引き連れてるし、戦うときも使ってるし。あれだけ自在に振り回せるのは、身体の一部だからだとしか考えられないけどなぁ」

「しかし、他の付喪神たちと彼女では、力の規模も性質も大きく異なります」

「そりゃあ、妖怪に決まった形なんて無いもの。人間だってそうでしょう? いろんなひとがいるわ。それを傍目から見た一側面だけで、種族がどうこう言っても意味なんて無い。大事なのは、自分が自分でどうありたいかを決めることよ。こころさんは自分で能面の付喪神だと言っている。それだけで十分」

「なるほど。付喪神だという話に、不審は無いと」

「あれ、是非曲直庁、そこを疑ってるんですか?」

「こほん。話が逸れました。彼女は今も暴走することがあるようですが、貴方はそれをどう思いますか?」

「どう思う、もなにも、それがあの子なんだから仕方がないわ。そりゃあ迷惑にならないとは言えない。こころさんが作り出す力場は強力で、有無を言わさないからね。分かっていても巻き込まれる。こっちも気を強く持っていないとすぐに影響を受けてしまうの。まぁ、修行の一環だと思えばどうってことはない。こころさんだってやりたくてやっているわけでもないみたいだし。それに迷惑なんて、私だって誰だって、周囲にはかけてしまうものだもの。それで除け者にするだなんてこと、私には許せないわ」

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