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きみだけはぜったいに孤独じゃない  作者: しじま うるめ
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煩悶/ファイトオアフライト

 今日、友達が死にました。

 顔の中心に大穴を開けて。

 まっ逆さまに倒れ込んで。

 赤黒い物を撒き散らして。

 私が撃った一発の銃弾で。


 私たちには負けることが許されない。

 たとえそれが訓練のための模擬戦であったとしても。


 私たちは勝たなければならない。

 たとえ友達を殺さなければならないとしても。


 なぜならば。

 私たちはそのために生きているのだから。

 私たちはそのために生まれたのだから。

 私たちはそのために生かされているのだから。

 私たちはそのために死ぬのだから。

 銃弾を撃つ。

 顔が弾ける。


 銃弾を撃つ。

 足から崩れ落ちる。


 銃弾を撃つ。

 脇腹が抉れる。


 銃弾を撃つ。

 血が流れる。


 銃弾を撃つ。

 友達が死ぬ。

 友達が死ぬ。

 友達が死ぬ。

 友達が死ぬ。

 友達が死ぬ。


 次の朝には。

 同じ顔の、同じ名の、同じ声の。

 新しい友達がやってくる。


 だって私たちはそのために生まれるのだから。


 生まれたての友達は私を知らない。

 私のことを覚えているわけがない。

 私のことを恨んでいるわけがない。


 だって私たちはそうやって生きていくしかないのだから。


 私はいつか、この子のことも殺すのだろう。

 私の撃った銃弾が、この子の身体を壊すのだろう。

 私を見るこの瞳が、同じ恐怖で染まるのだろう。


 だって私たちはそうするようにとしか教えられていないのだから。

 でも、

 だけど、

 ほんとうは。


 覚えていてほしかった。

 恨んでいてほしかった。

 たとえ友達じゃあなくなるとしたって。



 だって私たちは、生きているのだから。

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