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疾走少女  作者: ひふみ
3/3

紳士のスポーツに淑女の入る余地はあるか?

教師、笹野治郎は悩んでいた。


彼の監督するラグビー部の成績が思わしくないのだ。

選手が悪い訳ではない。

彼らは皆熱心に練習に打ち込んでいるし、どの生徒も自身が足を棒にして全国からかき集めた精鋭だ。


ということは自身の采配に問題があるのかといえば、笹野は前に赴任した学校で当時の弱小ラグビー部を全国に導いており、自他ともに認める名伯楽である。


今日新入生を任されるため、様々な雑務に追われながら、職員室でチームに足りない要素の正体について悩んでいた。


「笹野先生、急いで山根病院にいってください」

教頭が血相を変えて走ってきた。

「何です?僕ぁ別に悪いとこなんかありませんよ?」


「すっとぼけたこと言ってないでとっとと準備してください!先生が今日担任する生徒が二人傷害事件を起こしたんですよっ」


なんてこった、新年度早々トンだスタートである。

倍増した頭痛の種に悩まされながら笹野は改めて教頭に事のあらましを聞くことにしたのだった。




私が意識を取り戻したのは、病院のベッドの上でした。

医者が言うには軽い脳震盪と肋骨骨折だそうで、命に別状はないとのことでした。

そして、私の肋骨をヘシ折った彼女はというと、


「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイこの償いは何としてでもしますぅ〜」

全くの無傷で先刻からずっと平謝りを続けている。

ここまて謝られてしまうと最早怒る気も起こらない訳で、とりあえず何故あんな特攻をしてきたのか聞くことにしたのです。

「それが・・・私、好きな人がいてっ、仲良くなりたいんですけど話しかけられなくて・・・私、走ることしかできないから。あんなベタな手をやっちゃったんです」


もし彼女の作戦が成功したとしても、ベッドに寝ている人が違うだけの話だったことは容易に想像できました。

「とりあえず話は分かったけど、このやり方じゃちょっとマズいよねぇ」

「すいません」

萎縮してもともと小さな彼女がもっと小さくなってしまいました。

「そ、そういえば自己紹介まだだったね、私葛久美」

「橘雪絵ですすいません」

萎縮したまま彼女は名乗った。


それきり小さくなってしまったまま彼女は黙ってしまったので私は話題を探すべく虚しい努力を続けていたのですが、気まずい空気を

「とりあえず話は分かったけど、このやり方じゃちょっとマズいよねぇ」

「すいません」

萎縮してもともと小さな彼女がもっと小さくなってしまいました。

「そ、そういえば自己紹介まだだったね、私葛久美」

「橘雪絵ですすいません」

萎縮したまま彼女は名乗った。


それきり小さくなってしまったまま彼女は黙ってしまったので私は話題を探すべく虚しい努力を続けていたのですが、気まずい空気が病室をつつんでしまっていました。


「橘さん、私ね」

「橘!!!」

またもや私の言葉は遮られてしまいました。

突如入ってきた中年の男性によって。


「橘雪絵!君を我がラグビー部に入部させたい!」


意味がわかりません。

私は思考の隅で、そろそろ入学式が終わる頃だろうと思ったのでした。

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