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宵月がちょろちょろと歩き回るので、踏まないように気をつけねばならない。本のせいで若干ふらついているから余計に大変である。
「宵月、頼むから大人しくしておくれ。」
聞こえていないのか聞く気がないのか、宵月は変わらず我が物顔で夜街をさっさと歩いて行ってしまう。小道へは入らず、真っ直ぐに帰路を行ってくれているのが唯一の良いところ……だろうか。
「待っておくれなぁ…。」
これもまた聞かず、宵月は速さそのままに行ってしまう。
「酷いやつじゃ。」
ぼそりと呟くと、それははっきりと聞こえたようで、いつもより低い声でにゃあと鳴いた。
「にゃあ。」
こちらも同じように返しておいた。
それから何度か同じやりとりをしていたが、機嫌を損ねた宵月が道を外れることもなく家へと戻ってきた。客引きの数はもう減っていた。もうそこそこの人数を引き入れて、接待に忙しくなっているのだろう。
言葉の通り両手が塞がっている。
「宵月や、開けてはくれぬか?」
……駄目みたいだ。
仕方なく、足でがさつに扉を開ける。
「ただいま戻りました。」
返事がない。そういえば、明後日の花魁会議に向けて支度しているんだったかな?
私も準備をしなければ。宵月を先に中へ上げ、後ろ足でまた乱雑に扉を閉める。
さて、私も仕事をせねば…。