大便
※ジャンル ・汚い ・トイレ内 ・匿名掲示板 ・汚い
便座に座りながらスマートホンを弄る。
大便を排出しながら開くのはもちろん匿名掲示板だ。どうも最近は手が空いたら開く癖がついてしまっている。
盤上に羅列されている文字を眺めていると、声を上げながら盛大に脱糞しているスレッドが立てられていた。
最近、この手の掲示板では脱糞ネタが流行っているらしく、いつどこで盛大に撒き散らかしたかで競い合っているのを見るのも少なくない。
しかし実際のところ私のような社会人が糞尿を漏らすことなどありうるのだろうか。
……などと、今朝まではそう思っていた。
大変恥ずかしい話ではあるが、私は今日会社へ向かう電車内において、盛大にかましてしまった。
私は元来下痢をしやすい体質であり、鍋を食べたその日ないし次の日は確実に下痢をするのだ。
そして御察しの通り私の昨日の夕餉は鍋である。詳細に語るなら水炊きーー味付けは特にせず昆布出汁のみで具材を煮、手元の器に注いだポン酢につけて食べるーーであった。
昨夜はどうにも冷え込んでおり、下痢をするとわかっていても鍋を食べたくなってしまったのだ。
ちなみに私の名誉のために言っておくが、鍋を食べると下痢をするものの、物心ついてから漏らしたことは数えるほどしかない。最後はおそらく小学校低学年の時分であろう。
元々鍋、それも水炊きは私の好物であり、食せば下痢にはなるものの「今まで漏らしたことはないし」と、よせばいいのに喜んで貪ったのだった。
さて、話は今朝に戻るが今日はあいにくの空模様であり昨夜よりもなお冷え込んでいた。
それゆえに私は布団から出ることを躊躇い気付いた時には家を出る時刻が迫っていたのである。
起きてすぐにトイレに行っておけば勝機はあったのだろうが、私の腸はどうにもスロースターターらしくトイレに行く必要性を訴えかけてこなかったのだ。
そしてそれはどうやら私の脳も同様で、昨夜食べた鍋のことはぽっかり忘れて心ゆくまで布団の温もりを味わうことを推奨してきた始末である。
その結果急ぎ足で最寄駅についたところで便意に支配されるのだからしようもない。
いつもであれば乗り込む前に一度トイレを挟む余裕もあるのだが、そのような時間もなかった。
かくして、今思えばあまりにも脆いこの20余年の実績を盾に私は電車へと乗り込んだのであった。
そこからのことは思い出したくもない。
私は、一張羅であるAOYAMAのスーツを、どす黒い臭気を放つ、糞便で、汚した。
照明を落とした薄暗いトイレ内で一人、スマートホンを弄る。
大便を排出しながら開くのはもちろん匿名掲示板だ。
盤上に表示されているスレッドの一つを開く。
通勤電車で盛大に撒き散らしたという誇らしげなコメントにアンカーを付け、わかる、とだけ打ち込み送信した。
便意はいつくるかわからない。なればこそ誰にでも漏らす可能性はあるということだ。
ゆめゆめ忘れるなかれ。先輩からのアドバイスだ。